第四話
次の日の昼休み
「ねえ、今日あいつ来てるらしいよ。」
私はその話を聞いていい気分ではなかった。
「え〜、なんだ不登校になったわけじゃないのね。」
「そうだって、ただ体調が悪くて休んだだけらしいよ。」
「つまんないの。
あいつがいるとクラスの空気悪くなるのよね。」
そういって私は席を立った。
その瞬間、話は止まった。
周りに軽く会釈をして
そして私は教室から立ち去った。
私は昨日のことを
あいつに糾弾するために
なぜ、昨日学校に来なかったのかを・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
・
そこで岩城君が私がここ数年の疑問をぶつけていた。
彼はこれだけひどい噂を流されていても
どんなにクラスから虐めにあっても
どんなに私に冷たく罵られようとも
彼は決して私を責めることはなかった。
彼はただ黙って『すべては自分が悪いんだ』
といった空気を醸し出していた。
それを誰も確かめようとしなかった。
いや、すべての真実は噂の中にあると
私のいったことが真実だと
私が嘘を言うはずがないといった感情があるから
みんな私の言葉を信じているから
だからみんなも彼を責めた。
彼は肯定も否定もしないから・・・・
無言でいるということは
大抵、肯定として取られる。
彼はそれを知っていたからそんな態度をとったのだろうか・・・
私はいてもたってもいられなくて
屋上の扉を勢いよくあけた。
「ねえ、昨日はどこに行っていたのよ。」
いきなり開けられた扉にあいつは驚いていたが
私はそんなこと知らない。
私は真実が知りたいのだ。
「檜原さん、いきなりどうしたのですか。
あなたが、私のところに来るなんて、
これは明日は雪でも降りますかね。」
「誤魔化さないで。
どうして昨日休んだのよ。
朝一番で墓参りに行っていたのはわかっていたのよ。
それから学校に来ることだってできたじゃないのよ。」
「おや、私が学校に来たって来なくたって
たいして変わらないじゃないですか。」
「・・・そうよね。
あなたはいつも真実を話さない
隠し事をするときは煙に巻く。
決して喋らない。」
「そうですね。
否定はしませんよ。
それがどうしたのですか。
それであなたは何が聞きたいのですか。
本当に私が休んでいた理由ですか。
私は元から昨日は休む気でしたよ。
だから小母さんに学校を欠席することを伝えてましたしね。
これでいいですか。」
「いいわ。
もうあなたには何も聞かない。」
「そうですね。
それをお勧めしますよ。」
私ははぐらかされたまま私は屋上から離れていった。
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
・
「あ〜あ、あんな言い方しなくても良かったんじゃねえの。
ってなに笑っているんだよ。」
「え・・・
私は笑っていますか。」
そう、彼女からこうやって話しかけられたのは
何年振りでしょうかね。
かれこれ2年いや3年ぶりでしょうかね。
ずっと無視されていましたし、
恨まれているにしても
話しかけてもらえたのは嬉しかったですね。
「まあ、なんで笑っているのかは聞かないことにしても
あれは更に怒らせる元になるんじゃねえの。」
「いいんですよ。
あれで、また生きる気持ちが続くのなら・・・」
「あの例の事件の後の出来事か・・・
けど、あのあと彼女は意識を取り戻したと調べてけど・・・
もしかして、そこに何か真相が隠されているのか。」
「違いますよ。
彼女は自ら私に復讐するために
大切な人が死んだことを受け入れ
意識を取り戻したのです。
それだけは間違いありませんよ。」
そう、彼女は私に復讐するために
戻ってきたのです。
これだけは真実なのだから・・・
「そうそう、
もし仮に他に真実があって
その真実が分かったとき
あなたはどうしますか。」
「どうするかって
どういう意味でだ。
隠す気はない。
もしそれでお前を助けることができるなら
それを公表させてもらう。
俺とおまえはもう友達だ。
俺から言えるのはそれだけだ。
そして今の発言で俺は確信した。
まだ、他に真実がある。
俺はその真実に辿りついてみせる。」
「それが、人を傷つけることになってもですか。」
「知らないことによって苦しんでいる人がいるかもしれない。
言えないことによって苦しんでいる人がいるかもしれない。
そんな、苦しい嘘は断ち切ってみせる。」
優しいですね。
けど、真実を知っているのは彼女のほかに
私と彼女と彼女の両親しかいません。
ということはどこに行くのかもうわかりきっていますね。
先に手を打たせてもらいましょうか。
「わかりました。
そこまで言うのなら私はあなたが真実を知ろうとすること止めません。
では、私は用事があるから先に帰らせてもらいます。」
「あれ、鞄は取りに・・・
って教室にあったらボロボロになってるか。
持っているんだな。
分かった用事なら仕方ないな。
それじゃあまた。」
さて、私はいろいろ行動を起こさないといけませんね。
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
・
放課後、私は一人の人間を待ちながら一人
昼休みにあったことを悔しがっていた。
あの人は6年前のことで何かを隠している。
それだけは間違いないのに決して話すことはない。
私は知りたいのよ。
6年前の真実を
どうしてお姉ちゃんは悲しい顔をしていたのか。
その理由を・・・
私はどうすればいいのか。
私一人では両親は口を開いてくれない。
私一人では病院がどこにあるのか分からないし
第三者からの視点も必要だ。
そして同じ疑問を持った人間
それは今までいなかった。
しかし、その人間が今日、初めていること知った。
私はそのために一人の人間を待っていた。
教室の扉が開いた。
「待っていました、岩城君。」
それが、私にとってつらい真実だとしても。
私は知りたいのです・・・