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ハレルヤ  作者: 雨野知晴
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第三話

「晴也、昼だぞ。起きろ。」


・・・ああ


今は学校か


そして、ここは屋上だ。


私が教室にいるとクラスが重苦しい空気に包まれるから


学校にはいるが教室にはいない。


これは教師内でも暗黙の了解になっていて


授業を平穏に済ませたいという教師しかいないので


私が授業を受けてなくても別に咎める教師はいない。


その対価としてある程度の成績は必要だが。


「なんだ、また岩城さんですか。


君も物好きですね、こんな殺人鬼のところに足を運ぶなんて。」


そう私は二人を殺した。


だから彼女の噂も否定しないし


噂が誇張されるのも予想の範囲内だ。


この前私が耳にした噂だと。


小学生の時に自分の家族を殺して


その後に小学校に出刃包丁を持って行って


さらに人を切りつけて殺した。


その時に亡くなったのが彼女の姉だった。


今は少年院から出てきて保護観察期間で出てきている。だったかな


まあ普通に考えるとかなり際どい話ではあるが


真実はここまで滅茶苦茶に伝わっているのだ。


それを私は否定する気もないし肯定する気もないから


彼女が私の噂を流すためびに周りは離れていくのに


岩城さんはその噂を聞いても離れていかない珍しい人だ。


「おいおい、俺のことは和寿と呼べって言っただろ。


俺たち友達なんだから。」


「いや、こんな殺人鬼だと噂が流れている流れている私に


下の名前でなれなれしく呼ばれるのは嫌でしょう。」


「俺は噂は基本的には信じない人間なんだ。


他人の評価に関しては絶対に信じない。


それは色々な人間の思惑があったりするからな。


俺が自分の目で見て、接して話した結果


お前はそこまで悪い人間ではないと思えたからな。」


「そうですか。なら勝手にして下さい。」


「ああ、そうさせてもらうよ。


・・・なあ晴也いったい何があったんだ。


檜原のお前に対しての扱いは普通じゃないぞ。


普段とても公正で活発な


学園で有名な檜原鈴蘭ひのはらすずらん


彼女がお前の話になると


態度が全部変わるからな。」


「それに関しては噂の中にも真実は含まれていますからね。」


「う〜ん。


それは『姉を殺された。』あたりのことかな


でないと彼女が晴也を恨む理由にはならないからな。


それに『家族を殺した。』と『姉を殺された。』の件はどの噂にでも絶対出るからな。」


「ええ、そうですよ。


実際に私は殺人鬼ですからね。


クラスの人間から悪い噂を流されたくなかったら


近づかないことをお勧めしますよ。」


「いや、俺を強請ろうとする人間は


この学校内ではいないと思うぞ。」


「そうでしたね。


情報屋の岩城和寿いわきかずひさ


校内での噂はすべて把握していて


かなりの情報を持っている。


教師でさえも手が出せませんからね。


そんなあなたのことです。


ある程度のことは知っているのでしょう。」


「だから言ってるだろ。


俺は噂は信じないし自分である程度の


確信を得ない限り信じれないんだ。


ましてやこの噂に関しては


要らない噂が流れすぎていて


特定しきれていないんだ。」


「そうですか。


それなら、檜原さんには感謝しないといけませんね。」


「お前の悪い噂しか流していない人間に


感謝するのはどうかと思うが・・・」


「いいんですよ。


真実もある程度混ざっていますからね。


私が殺人鬼という真実さえ


私自身が忘れることができないのなら。」


「・・・なあ、


ここからは俺の独り言だ。


嫌なら聞き流してもらってもかまわないけど聞いてみるか。」


あまりの真剣な顔に私は頷くしかなかった。


「決まりだな。


まず、これはあくまでもおれの主観だ。


おかしいと思っても聞き流してくれ


俺は情報を集めている。


これはさっきもいったが


その中で困ることがあるんだ。


それは、その情報に対して否定的な意見が全くないこと。


そんな噂が流れたときにそれをみんな信じてしまう。


その噂が間違っていとしてもな。


しかし、もしその噂が真実ではなかったとしたら。


そしてその噂の発信源が嘘だったり騙されていて


その噂が嘘であったとしたら。


しかし、その噂を調べようにも


否定的な噂が全くないから


どのように調べればいいのか分からない。


どんな歴史にも必ず否定的な意見はある。


『上杉謙信が実は女だ』とか。


そういった感じで


しかし、それによって実は否定的な噂のほうが真実であった場合


歴史は後から本なんかで調べたものだから


曲げられていても調べにくいんだ。


それはそうだ。


その現場にいた人間でしかその真実は分からないんだから。」


「それなら、私の噂は確定しているじゃないですか。


その現場を見た人間が『私が殺した。』と言っているのだから。」


「そうだ、だから俺なりにあの噂のことを調べてみたんだ。


どんな事件があってそのどのようにして起きたのかも。」


「なら、なおさら確定じゃないですか。


『それが真実だ。』それでいいじゃないですか。」


「ああ、調べてみて俺もこれでいいと思ったよ。


けどな、お前と話をしているとおかしいと思えてしまうんだよ。


俺が調べた情報で正しいはずなのに


俺の勘が違うといってるんだよ。」


「気のせいですよ。


にしても凄いですね。


みんな、噂がいろいろ流れているから真実にたどりつけないのに。


というかだれも真実を調べようと思わないのに


そこまで調べてしまうなんて。」


「まだ真実とは思わない。


絶対にこの出来事には裏がある。


俺はこの真実を見つけるまであきらめない。」


「そうですか。


まあ、違う噂が出てくること楽しみにしていますよ。


それはそうと授業はいいのですか。


私はいいとしてあなたは・・・


そうでしたね。


情報屋の和寿


教師も手が出せませんでしたね。」


「そういうこと。


俺もここでサボり。


だってこんな秋の入ったばかりで外で寝れたら


どれだけ気持ちいだろうかなんて日に


教室に籠って授業なんて受けていられるか。」


そうして私の学園生活は進んでいく


これから何が起こるかはわからない。


だが信じてくれる人がいるのだと


私の押しつぶされそうな気持ちが少し軽くなった。


そんな、新しい出会いと友情が生まれた春風そよぐ空の下


運命の歯車は少しずつ回り始める。


それは誰にも止められなくて


ただ動いているだけで


止めることはできない


止めたのならば


その歯車は壊れてしまうから


誰もが歯車の一部なのだ


見えないところで歯車は動き続ける。


それが自分の意思でないとしても・・・




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