第八話
「さあ、どこから話そうかな。」
そう言ってお父さんは悩み始めた。
「すべてを話してくれ、檜原の小父さん。」
「わかった。
少し長くなるが大丈夫かね。
私も晴也君に聞いたことも入っている。
おかしいと思ったら言ってくれ。」
そう言ってお母さんが
皆にお茶を持ってきてお父さんの横に座った。
「さあ、私の知っている中であの日あったことを話そうか。」
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
・
「あの日は晴也君のお父さんの命日でな。
ちょうど一周忌だったんだよ。
晴也君のお母さんはとても晴也君のお父さんを愛していたからね。
晴也君のお父さんが亡くなった時はほとんど生きる気力もないくらい憔悴していたんだ。
そこから晴也君のために何とか立ち直ったんだ。
しかし、命日の日はやっぱり辛そうでな、
晴也君のお母さんはとても落ち込んでいたんだ。
それが晴也君からしたら見ていられなかったんだろうな。
晴也君は昔から周りの人の気持ちにとても敏感だった。
それで、晴也君はお母さんを外に出すことにしたんだ。
晴也君は昔から体が弱かった。
最初はみんなで買い物にでも行こうと言おうと思ったんだろう。
そこで霞がキャッチボールをしようと言い出したんだ。」
「え・・・」
「そう、キャッチボールをしようと言い出したのは霞だ・・・」
「そして、晴也君は
『キャッチボールをしていてぼくがしっぱいしたせいでかすみちゃんがしんでしまった。』
と自分が目が覚めて鈴蘭の様子を見ているときに私たちに告げたんだ。
私たちは許せなかったんだ。
霞が死んだこと、
鈴蘭、お前が意識を取り戻さない状態になったこと。
その少ししてお前は意識を取り戻した。
お前は晴也君に憎しみを抱きながら。
晴也君が何かしたのだろう。
誰も口には出さなかったが私には確信があった。
彼がどうやってお前の意識を取り戻したのかは知らない。
しかし、私たちは半年もしないうちに次第に申し訳なくなってきたんだ。
晴也君だってわざとではないし彼だってお母さんを失って辛かった。
霞とだって物凄く仲も良かった。
彼だってショックを受けていないはずがなかった。
私たちは彼を責めたことを恥じた・・・
葬式の一週間後、彼はここからそこまで遠くない親戚の家に預けられた。
いや正確には違うな。
正確には半年間、虐待を受け続けた。
彼は引き取られてから一週間後あの二人の亡くなった公園の片隅で
ろくに食事もとっていない状態で保護されたんだ。
その時、彼は『ごめんなさい。ごめんなさい』と呟いていたそうだ。
そこで私たちはあまりにも彼がかわいそうに思えて引き取ったんだ。
これが私たちの知っている真実だ。
しかし、私たちも彼がまだ何かを隠しているそんな気がしてならないのだよ。
私たちは何か取り返しのつかないことをしたのではないかと思っているんだよ。
水谷さん、岩城君、鈴蘭、
何か知っていること間違っていることがあったら言ってほしい。」
そこで由季が
「私の知っていることと少しだけ違うことがある。」
彼女の声も震えていた。
「確かに晴也は外に出るのに誘った。
けど違うのはそれは本来一人で決めたことではなかった。
相談されて『外に遊びに出たら』と勧めたのは私・・・」
もうひとつ驚愕の事実が由季の一言から出てきた。
その一言にみんな驚いていた。
そして、岩城君と私はあまりのことにさらに驚いていた。
すべての真実を知ってしまった私たちは皆にどのように話せばいいのか言葉が出なかった。
彼は全く悪くなかったのだ。
悪いのは岩城君を除くここにいるすべての人間であるということ。
彼はお母さんに元気を出してもらうために外に出ようと誘っただけ・・・
しかもそれは周りからの助言を受けた故であった。
私の記憶は全く違うのではないかと思ってしまった。
私の記憶の中では由季は出てこなかった。
「ねえ由季。
あなたは事故の直前に何があったのか知っている。」
そういって由季は首を振りながら
「知らない。
私は事故の前に家に帰ったから・・・
事故の真相は晴也から聞いていたから。
晴也が霞を殺したからって私は晴也を憎みきれなかった。
晴也は私に『すずらんちゃんのそばにいてあげて』と言って去っていった。
それから彼は引き取られて檜原家に保護されてから私とは滅多に話すことはなくなった。
そして、私はキャッチボールをしようと言い出したのは彼だと聞いていた。
霞と晴也だけで晴也の小母さんを誘いに行ったから・・・」
彼は皆に嘘をついていたのだ。
誰も傷がつかないようにすべての憎しみを一人で受けていたのだ・・・
「・・・彼が何をしたの。」
そう私は呟いていた。
岩城君は信じられない顔をしていた。
「こんな残酷なことがあっていいのか・・・」
それは私も思っていた。
彼は何もしていないのに・・・
そして、あまり真実を知りすぎた私はショックのあまり意識を失った。
その中でみんなが私のことを呼んでいたのが私の意識は闇に呑まれていった。
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
・
「これが真実だ。」
俺たちが調べてきた言った真実にみんな言葉が出なかった。
「たぶん、俺たちの知った真実は晴也にとって想定外だったと思う。
『鈴蘭は悪くない』と言って一部の真実を話して
俺たちを納得させるつもりだったのだと思う。
それだけ知っていたら俺たちが納得すると思ったのだろう。
そのために水谷を呼んだ。
それだけでは晴也が霞さんを殺した真実は変わらない。
けど、予想外のところに真実を知っている人間がいた。
それだけは彼にも予想できなかった。
そのまま鈴蘭に晴也を怨ませるつもりでいた。」
全員の顔が真っ青だった。
それもそうだ。
晴也をみんな心の中で少なからず憎んでいた。
そうして晴也はその憎しみをすべて引き受けたのだ。
だれも悩まないように誰も傷つかないようにように、
そこで檜原が目を覚ました。
「檜原大丈夫か。」
どう見ても大丈夫ではない顔で
「大丈夫よ。」といった。
「お父さん、お母さん、あいつ・・・いいえ
晴也君がどこに行ったのか知りませんか。」
「残念ながら知らない。
だが、明日の朝10時に鈴蘭に霞の墓に一人だけで来てほしいと言ってた。」
「・・・わかったわ。」
「檜原・・・」
「大丈夫よ。岩城君これ以上の嘘はないと思います。
私は彼に恨まれても仕方がない。
だから私は彼と向き合う。
それよりもあなたにはお願い事があるのです。」
と俺に向かって言った
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いつも読んでくださる皆様
本当にありがとうございます。
一応、あとニ三話で完結するように考えてますが、
色々、番外編やifの世界などの企画も考えていたりします。
そして最後に
この物語の結末までお付き合い願いたいと思います。