プロローグ
「救急車だ。救急車を呼べ」
何度も見たこの悪夢
私と母の最後の記憶
「おかあさん、かすみちゃん、しっかりして死なないで」
私は真っ赤な血に染まった
母と霞にすがりついて叫んだ。
「ぼくのせいだ、そとにあそびに行きたいってわがままを言ったぼくのせいだ。」
私は幼いながらも
外に遊びに行きたいと我が儘を言った自分を呪った。
「ぼく、もうわがままをいわない。だから死なないで。ぼくを一人にしないで。」
父が死んでから女手一つで私を育ててくれた母をなくしたら
私は生きていけないことを幼いながらも私は悟っていた。
「ぼく、ふたりともがしんだら、ぼく、ぼく、生きていけないよ。」
幼馴染の霞はすでに息が無く、私は喘ぎながらも呼吸をする母に縋りついた。
そんな私を見て母は
「・・・誰も・・・悪くない・・・わよ。」
とこう告げた。
さらに私に向って。
「・・・あなたは・・・あなたの・・・最後の日まで・・・生き・・・続けて・・・私の・・・愛しい・・・はるや・・・」
そして最後にやさしい微笑みを浮かべて
ゆっくりとこう告げた。
「だから・・・最後に・・・お母さんと・・・約束して・・・
誰も・・・悪くない・・・から・・・お願い・・・だから・・・誰も・・・憎まないで。」
そういって母はこと切れた。
これが最後の母との会話だ。
「おかあさん、おかあさん・・・
うわーーーーーーん。」
背後ではその姿を見て放心状態であったもう一人の幼馴染の鈴蘭が涙を流していた。
虚空を見つめながらまるで壊れた人形のように姉の名前を呟きながら・・・・・・
手からはグローブが滑り落ちていた。
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
・
このあと私は3日間ほど寝ていたそうだ。
そして夢はここで終わらない、このあと私の見るのはきっと
「お姉ちゃんはどこ・・・」
ああ・・・
やっぱり私はこの夢をまた見るのか
「ねえ、なんでお姉ちゃんは死んだの」
そう私が殺した二人の事で私を責める幼い鈴蘭の姿・・・
どうして私はこんな夢を見るのだろうか・・・
「お姉ちゃんが死んだのはあなたのせいよ」
それは決まり切ったこと私は罪人だから
私は許されることはないから
「あなたのせいよ、あなたが失敗しなければ」
だから私が罪人である証を
何度でも見てしまうのだなろう
「お姉ちゃんを帰して」
当然だろうな
私の罪は消えない
「あなたが換わりに死ねばよかったのに」
私の人生の最後の日まで消えることはないだろう
誰かに許してもらいたいとは思わない
「わたしはあなたが心の奥底から憎み続ける」
しかし、もしも許されるなら・・・
彼女だけは許してほしい
「なんでこんな奴を引き取るの」
巻き込まれただけの悲しき人を
今も消えることのない憎しみを抱えていて
「わたしの目の前から消えてよ」
私のつたない嘘に気が付いていて
どこかで真実に気が付いていて
「わたしはあなたを永遠に許さない」
私を憎むことは罪ではないのに
罪の意識に苛まれている彼女を・・・
「絶対に許さない・・・」
どうか許してほしい・・・・・・
作者の雨野知晴です。
初めての連載ですね。
更新は亀の歩みのように
遅いかもしれませんがご了承ください。