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側室達の末路  作者: 綾瀬紗葵
12/25

セラフィマ・ゲネラロフ 11

割り込み投稿しました。

本当はセラフィマ編が完結したら、ヴァルヴァラ編にかかるはずだったのです。

残酷に人が死んでいる描写があります。

ご注意下さい。




 食事の間へ戻って中へ入ろうとすると、足首を何かに掴まれてつんのめった。

 足下を見下ろせばそこには、黒い髪をした人形が座り込んでいる。

 足首には人形から伸びた髪の毛が絡んでいた。


『……妾に何か用があるのかのぅ?』


 セラフィマは足下から湧き上がってくる恐怖を今持ちうる全ての気力を動員して押さえ込み、腰を落とすと人形に尋ねた。

 人形は俯いたまま容器を指差す。


『これが欲しいのじゃな?』


 小さな手で持てるのかと思えば、人形は容器を軽々と持ち上げた。


『中身は入っていないが良いのかのぅ?』


 こっくりと頷かれる。

 足首に絡んでいた髪の毛がしゅるりと解かれた。

 人形は俯いたまま、走り去ってしまう。


『どういう、意味なのじゃ?』


 ヴァルヴァラの態度に腹を立て、容器を自分の所有物にしようとした事への牽制だろうか。

 だとするならば人形には感謝せねばなるまい。

 今回のように警告があるなら、毎回お願いしたいところだ。

 何しろ地雷を踏まぬよう慎重に行動しているのにもかかわらず、不意に湧き上がってくる抗えない欲望によって、いとも簡単に死の淵へ立たされるかもしれないのだから。


 がくがくと震える身体を、よく我慢できたものだと優しく摩りながら、今度こそ食事の間に足を踏み入れる。


 部屋の中は居心地の良い温度で保たれており、テーブルの上には開いたままの手記と湯気の立つ新しい飲み物が置かれている。


『むぅ? 凄い酸味じゃが……美味じゃのぅ……』

 

 僅かな磯臭さとそれを上回る酸味。

 色は僅かに緑がかっており、飲み心地はとろりとしている。

 初めて飲む薬茶だ。

 そういえば、飲み物は水以外薬茶しかないようだが、普通の茶はないのだろうか?

 それともセラフィマが薬茶と思い込んでいる茶が、この村で日常的に飲まれている茶なのだろうか?

 緊張を強いられる現状で、薬茶が提供され続けていると言われた方が素直に頷けそうだ。


 薬茶を啜りながらセラフィマは新しいページを読み進めていく。



 土 4の月


 屋敷へ行き、水屋で手と顔を洗って口を漱いでから朝食の準備にかかる。

 どうせ高貴な方々は寝ているから、食事ができてから呼びに行けばいいと、手早く朝食を仕上げた。

 難癖つけられても抵抗できるように、男が行ってくれた。

 女と2人茶を飲みながら待っていると、青い顔をした男が戻っていた。

 3人とも死んでいたそうだ。

 広い部屋は血が余すところなく飛び散っている状態で、寝具は二度と使えないようだ。

 また、その部屋には恐らく1人分の惨殺された肉片がばらばらに捨て置かれて凄まじい形相の生首が転がっており、もう1人は池の中に顔を突っ込んだ状態で溺死しており、もう1人は我を忘れる勢いで何かから逃げようとしたのだろうか、近くの境界線で下半身だけが見つかったそうだ。


 食事をしながら、3人が何故死んだのかを考察する。

 昨日の4人のうち2人は、村から逃亡を図るという違反行為が原因。

 2人は心中。

 しかし今日の3人は自ら命を絶つような弱い性質の者ではない。

 更には違反行為を望んでする類いの愚かさは持っていなかったように思う。


 協議の結果、逃亡を図る以外の違反行為をして、罰されたのではないかという結論に達した。

 

 最初の1人が惨殺されているうちに逃亡を図ったが、1人は溺死して、1人は誤って

もしくは無意識に境界線を越えようとして死んだのだと。


 女の、死んだ理由を書き残してくれたら良かったのに、と言う冷静な言葉には、怖気が

たった。


 食事を食べ終えて、後片付けをしながら、今後の生活についても語り合う。

 安易に村から出るのは諦めたが、手順を踏めば外へ出られるような方法があるかもしれないので、それは常に模索し続けるのを長期目的とし。

 村で快適な生活が送れるように努めるのを短期目的とした。


 3人一緒に行動するのが安全だと解っていたが、やりたいこと、やらねばならないことが沢山あったので、判断に迷った時は面倒でも相談しあおうと誓って、それぞれ今日決めたやるべき事に取りかかった。


 私は洗濯を任されたので、井戸から水を汲み出し、汚れ物を纏めておいた場所に向かったが、汚れ物がない。

 誰かが移動させたのかと首を傾げながら、2人を捜している途中で、衣装部屋と名付けた部屋に、とても綺麗に洗濯された汚れ物が丁寧に畳まれた状態で部屋の中央に置かれた箱の中に収まっているのを見つけたのだ。

 嬉しい反面不思議で仕方ないと首を傾げていると、女が衣装部屋に飛び込んできた、血に塗れているはずの寝室が綺麗になっているというのだ。

 肉片はご丁寧にも池の側、まだ池に顔を突っ込んだまま放置していた遺体の側、桶に入って置かれていたらしい。


 洗濯と掃除から解放された女2人で、遺体を墓に埋めた。

 10人もいたのに、2日で3人にまで減ってしまった現実が、どこか遠い。

 女が、私達死体ばっかり処理してるわね? と言って、どこか楽しげに笑う。

 女の言葉が時々怖かったが、私は苦笑だけ返しておいた。


 男は書庫に入り浸って調べ物をしていた。

 昼食時には興味深い書物を持って戻ってきたので、昼食を食べながら書物を検証すると大変興味深い書物が出てきた。


 その書物には、この村で過ごすのに気をつけねばならない注意点が明記されていたのだ。



『おお!』


 セラフィマは手記を持ったまま思わず椅子が背後に倒れる勢いで立ち上がってしまった。

 一番知りたかった事がここにきて解明されそうなのだ。



呪われし村で生活する上での注意点


*村の境界線を出てはならない。

*宝物を部屋から出してはならない。

*祭壇に供えられている物には、手を触れてはならない。

*薬は指定された使い方しかしてはならない。

*井戸を枯らしてはならない。

*畑の作物は収穫したら、きちんと食べなくてはならない。

*墓を荒らしてはならない。

*故意に物を壊してはならない。

*封印の間に足を踏み入れてはならない。

*○○○○から出るには、手順を踏まねばならない。

*○○○○を解放してはならない。

*警告を無視してはならない。

*許された物以外を使用してはならない。



 既に何点も破ってしまった自分の行動に頭を抱える。

 注意点=破ったら即死、でなかったのがせめてもの救いだ。


*村の境界線を出てはならない。

 ……試していないが意識しないで出てしまっても即死らしいので、村の探索時には注意しよう。

 

*宝物を部屋から出してはならない。

 ……即死でなくて良かったが、セラフィマの場合は制裁? が封印の間へ引きずり込まれる事だったのだろうか?

 宝物を未だ自分の所有物にしてしまいたい欲求は大きいが、次は即死だと推測できるので我慢するしかない。


*祭壇に供えられている物には、手を触れてはならない。

 ……これは勘が働いて良かった。

 今後も気をつけよう。


*薬は指定された使い方しかしてはならない。

 ……これはセラフィマ自身に直接的な害はなかったが、代わりにヴァルヴァラが酷い目にあった。

 自分でない、例えば大切な者や必要としている者に制裁がなされるのかもしれない。


*井戸を枯らしてはならない。

 ……既に枯れている場合はどうしたらいいというのか。

 ヴァルヴァラが生きて中にいれば怪異は起きないのか。

 制裁発動済で何ら問題がないかもしれない。

 念の為、今後も定期的に監視しておく必要があるだろう。


*畑の作物は収穫したら、きちんと食べなくてはならない。

 ……今の所、料理は準備されているので考えなくても良いが、今後料理が提供されなくなった時には、くれぐれも注意したい。


*墓を荒らしてはならない。

 ……まだ墓を見ていないが、ネクロマンサーでもなければ必要ないだろう。

 ヴァルヴァラが死んでも、井戸の中では墓に埋めようもないので、関係なさそうだ。


*故意に物を壊してはならない。

 ……やけになって破壊活動を行った者がいたのだろうか?

 使える物は使い倒すセラフィマには、これもまた関係なさそうだ。


*定められた物以外を使用してはならない。

 ……判断に迷う項目だ。

 用意された寝具や衣装以外を使ってはいけないという意味合いでいいのだろうか?

 衣装部屋で綺麗な衣装を羽織った時に起こった気持ちの悪い現象がもしかすると制裁だったのかもしれない。



完全に風邪引きました。

喉が痛いのが困ります。

夜には胃まで痛くなってきました。

早く治るといいなぁ。

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