久しぶりにアナトリアから交易商人がきたぞ
さて、今日は久しぶりに北のアナトリアから商人がやってきた。
そしていつものようにマリアのところに泊まっているらしい商人のもとへ俺はリーリス、アイシャと一緒に向かうことにした。
「そろそろナイフとかの切れ味も悪くなってきたし新しい石がほしいよな」
黒曜石のナイフの刃の部分はほぼ単分子なので切れ味はすごいが、ガラス質なので、骨などに強く当ててしまうと割と簡単に欠けるのだ。
俺の言葉に頷くリーリス。
「そうね、できれば渡す木の実が少なめで、手に入るといいのだけど」
リーリスの言葉に俺は苦笑する。
「まあ、それは難しいだろうな」
なにせこのあたりでは打製石器の材料になる黒曜石は算出しないのだ。
一方交易商人が初めてのアイシャはワクワクしている。
「なにがあるのー?」
アイシャの疑問に答えになってない答えを俺は返す。
「んー、言葉で説明するのは難しいかな。
もう少しでつくから見ればわかるぞ」
アイシャはニパッと笑っていう。
「わかったー」
そしてマリアの家の前で商人は様々な黒曜石の原石や石器を並べてニコニコしている。
「さあ、みなさんどうぞ見ていってください」
そしてアイシャは目を輝かせている。
「いしがいっぱー」
「ああ、たくさん石があるな、でも危ないから触るなよ」
「あぶなー?」
「ああ、危ないからな」
「わあったー」
ちなみに商人は今回石器用の黒曜石だけでなく紅玉髄や瑪瑙、瑠璃、翡翠やオパールなどの装飾用の宝石なども持ってきたようで、それらもちょっとある。
俺は早速商人に聞いてみた。
「このナイフはいくらするんだい?」
「そうだな革袋1つでどうだ?」
ちなみに革袋の大きさは親指と人差指を広げた長さとか大きさはある程度決まってる。
「ふむ、加工済みならそんなもんか。
革袋1つだな。
これをひとつくれ」
俺はどんぐりの入った革袋一つを手渡して代わりにナイフを受け取った。
「あいよ、ありがとうな」
にこにこ顔の商人に俺も笑い返す。
「こっちこそ」
宝石をじっと見てたアイシャが声を上げた。
「とーしゃ、これきれー」
アイシャが指差したのは青い宝石である瑠璃だな。
そしてアイシャも目をキラキラさせている。
「おお、ラピスラズリか」
ニコニコしながら交易商人が言う。
「ヘヘ、娘さんは目が高いですよ。
なかなか希少ですからね」
そしてリーリスも乗っかってきた。
「あら、これは私も欲しいわね」
ますますニコニコする交易商人。
「奥さんもですか。
なら2つで革袋10個でどうです」
それはちょっと悩む。
革袋10個は高いように思うが、このあたりでは手に入らない貴重な宝石であるのも間違いない。
身につければ魔除けとしても珍重するかもしれないしな。
「うむむ、高いのか安いのか判断に困るな」
とは言えラピスラズリは西アジアではなく中央アジアのアフガニスタン付近で取れるもののはずだからとても貴重ではあるのだ。
「ねえ、この機会を逃したらもう手に
入らないかもしれないし買いましょうよ」
リーリスがそう言うとアイシャも言う。
「あちしもほしー」
リーリスとアイシャは買いたいみたいだな。
「まあ二人がそういうなら買っておこうか。
それを2つくれ」
俺がどんぐりのたっぷり詰まった革袋10個を商人に手渡した。
ちなみに息子は宝石に興味はないようで、俺達のやっているトトを眺め、不思議そうに首をかしげるだけだな。
「ありがとうございます。
きっと気に入っていただけますぜ」
俺はラピスラズリを受け取ったあとリーリスとアイシャに一つずつ手渡した。
「じゃあ、これはリーリスとアイシャに一つずつな」
「わー、とーしゃあいあとー」
手の中の青い石を掲げて喜びを全身でアイシャは表してる。
「本当嬉しいわ」
リーリスもとてもニコニコ顔だな。
二人も喜んでるし食べ物に困ってるわけでもないからいい買い物だったのかな?
そして家に帰ったらそれぞれのラピスラズリに石錐で穴を開けて糸を通せるようにして糸を通す。
「これでずっと首に下げていられるぞ」
俺はアイシャの首に糸で吊るしたラピスラズリを掛けてやった。
「あいあと、とーしゃ」
バンザイして喜ぶアイシャ。
そしてリーリスにも首に糸で吊るしたラピスラズリを掛けてやった。
「うん、ありがとうね。
ずっと大事にするわ」
にっこり微笑むリーリス。
ずっと昔にリーリスに骨のビーズを送ったあとはこういうのはつくってなかったから二人共だいぶ喜んでくれたようだ。
どんぐりのたっぷり詰まった革袋を10個は結構な出費だったようにも思うけど二人共喜んでくれてるし問題はなかったかもな。




