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このあたりは天然ソーダもあるし石鹸を作るとしよう

 さて、アイシャだけではなく、一緒に遊んでいる子どもたちをなるべく病気などから守るために、俺に出来ることはなにかと考えたが、この時代はパンなど手づかみで食べるものがほとんどなので、食べる前に手を消毒するための石鹸を作ろうと思う。


 久しぶりにスマホの出番でもあるな。


 そしてこの時代にはまだ石鹸はない。


 しかし石鹸の歴史は意外と古く紀元前3000年代、つまり5000年ほど前に始まるといわれている。


 古代ローマ時代の初めごろ、サポーという丘の神殿で羊を焼いて神に供える風習があったが、この羊を火であぶっているとき、したたり落ちた脂肪が炙ってる木の灰に混ざって石鹸のようなものができ、それがしみ込んだ土は汚れを落とす不思議な土として珍重されたらしい。


 このサポーという名前がソープの語源だな。


 まあ界面活性剤として洗濯や手洗いに使える石鹸の代わりとなるものはシャボン草があるし、実際に今までも使っていたけどな。


 とは言え子どもたち全員に可能な限り一年中使える石鹸もほしいから作るとしよう。


 石鹸は動物もしくは植物の油とアルカリを混ぜて作る。


 鉱物油ではできないがまあこの時代のエリコでは鉱物油は手に入らないからこの際は関係ない。


 そして石鹸を作るのに必要なアルカリはエジプトや中近東、さらにはモンゴルぐらいまではトロナ鉱石の鉱床があり、そういった場所では天然ソーダを使って石鹸にできる。


 天然に産出するソーダ化合物である天然ソーダは、トロナ鉱石と呼ばれるセスキ炭酸ソーダという形でこのあたりでは普通に存在していたりする。


 セスキ炭酸ソーダは炭酸ナトリウムを主成分としているので固形石鹸が割と簡単に作れるのだな。


 石鹸を固めるときに使う小型の壺をパンを焼くついでに焼いて作り、油はナツメヤシを乾燥させるときに取り除いていた種を潰して絞り、トロナ鉱石をとってきて土器に入れて水を加え、それを布でこして上澄みにしてアルカリ性の溶液を作る。


「天然ナトリウムが簡単に取れるとこういう時助かるぜ。

 よしよし、こんなもんかな」


 セスキ炭酸ソーダの水溶液自体が、血液や皮脂汚れなどのたんぱく質汚れを落とすのに効果があるので洗濯にも使えるんだけどな。


 それとガゼルの肉の脂肪をナイフで適当な大きさにカットし、壺に少々水を加えて、火にかけ溶かしていく。


 ガゼルはウシ科なので実はそれなりに脂身も持っている。


「うーむ、まあやっぱりそれなりに臭うな」


 ガゼルの脂肪を溶かしたら壺を火からおろし、亜麻布で濾して融けた脂を別の壺に入れる。


 あとはそれを埋めて冷やし、十分に冷えた所で壺を割って下の方にできている、茶褐色のコラーゲンや血液で出来た煮こごり要するにタンパク質を捨てる。


 ニオイのもとになるものはこれでおよそなくなって居るはずだ。


「ふむ、こんなものかね?」


 固まった脂をふたたび土器にいれて融かし、セスキ炭酸ソーダの水溶液をゆっくり溶かした脂に流し込み、均一になるように全体が白濁するまでかき混ぜる。


 そして塩水を入れて液体のグリセリンを分離させ、個体の石鹸の部分を固化しやすいようにする。


  壺に入れたまま1週間ほど放置し乾燥させれば固形石鹸の完成だ。


「まあ、こんなものかな」


 できた石鹸をつかって食事前に手を洗うことを子供に教えれば多少なりとも病気は減らせると思う。


  オアシスの水は北の方から流れてきている地下水で自然に湧き出しているものだから汚くはないが、本当はこれも浄化できるといいんだがな。


 まあ、人間や様々な動物の糞尿などが混じりやすい川の水を直接飲むよりはずっと安全ではあるはずだが。

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