山羊乳は人間の子供も飲めるので安心だ
さて、今日は家族で家畜小屋の家畜たちを町の外へ連れて行って、牧草となるクローバーなどを食わせている。
ちなみに乾季になってから今までの家を家畜小屋にして家は別に作ったよ。
案外早く作れるもんだとびっくりしたな。
”んべー”
山羊は適当に離れてのんびり牧草を食べてるし、毛を刈ってさっぱりした羊は皆くっついて移動しながらのんびり草を食べている。
羊たちは暑くないのかねとも思うがそう言う性質なんだからしょうがないか。
イノシシの子供のウリンボも俺達の後をちょこちょこついてきては適当に若い葉っぱを食べている。
小川で泳いでる餌付けされた真鴨や雁たちものんびりくつろいでいるな。
時々ウリンボが水の中に飛び込んでバチャバチャ泳いだりもしてる。
「お前さんたちもだいぶなれてきたな」
ロバの親子もだいぶなれてきて前みたいに突然止まってそこから動かなくなるということも少なくなった。
「ろばしゃー、はいどー」
そして子供ロバの背中に乗ってご満悦な娘。
「ごきげんだな」
俺の言葉に微笑んで答えるリーリス。
「そうね、すごく楽しそう」
子供は何かにまたがったりするのはかなり好きだ。
21世紀の公園の遊具にも動物の形をしていてまたがれるそういった遊具は結構残ってるしな。
一応、振り落とされたりしては困るので動かない状態の子供ロバに乗っけてるだけだが。
ロバは馬ほど乗りての意思を読み取ることはできないので走らせて障害を飛び越えるようなことはできないが普通に歩くくらいの事はできる。
馬に比べるとおとなしくて、背も低く意外と力があるロバは荷運びなどにはとても役に立つのだ。
「そろそろ降りるか」
俺が娘にそうきくと娘はプルプル首を横に振る。
「やー」
それを見てリーリスは苦笑い。
「あら、まだ物足りないみたいね」
俺は頷く。
「まあ、子供ロバの方は嫌がってないみたいだし、まだ乗せててやるか」
娘はキャッキャと笑いながらロバの背中にまたがり続けてる。
「ろばしゃー、はいどー」
だが、そのうち飽きたのか疲れたのか娘が俺の方を見上げてきた。
「おんもー」
「はいはい、ちょっとまってろな」
俺はロバの背中から娘を抱き上げて娘をおろしてやる。
クローバーの柔らかな絨毯のうえにちょこんと座らせると娘は寝転がった。
吹き渡る風が気持ちがいいな。
そんな間にリーリスはヤギの乳を絞っていた。
炻器の壺の中にためたヤギの乳を炻器のコップですくって娘に差し出すリーリス。
「はい、これ飲んでみて」
娘はバネ仕掛けの人形のようにぴょこんと体を起こした。
「あい」
そしてコップを両手で挟んで口へ運ぶ娘。
コクコク飲んでるが口元からダバダバ乳がこぼれてる。
「あーあー、もうちょっとこぼさないように上手く飲まないとだめだぞ」
俺の言葉に娘は首をかしげて見上げている。
「?」
そしてコップの中の乳を飲み干すとけぷと息を吐きだす。
「おなかいっぱー」
「そう、良かったわ」
リーリスは微笑んで娘の口元を布で拭ってやった。
まあ、まだまだ小さいからこぼすなと言っても難しいか。
哺乳瓶なんかがあるといいんだけどな。
「そういえば知ってるか。
四つ葉のクローバーを見つけると幸せが訪れるんだって」
リーリースは興味深そうに答えた。
「あら、それなら探してみましょうか」
娘もよくわかってないようだが調子を合わせて言う。
「ああしもさがすー」
「よしじゃあ皆で探してみよう」
四つ葉のクローバーの発生の頻度は1万分の1程度らしい。
そりゃ見つかったら運がいいといわれるのも納得だ。
しゃがみこん四葉を探してみるがやっぱりそう簡単には見つからない。
「うーんないなぁ」
「そうねえ」
俺とリーリスが顔を見合わせたときに娘の声が上がった。
「あったー」
そして俺とリーリスが娘の所にいくと娘の手の中には確かに四つ葉のクローバーが有った。
「お、ほんとだ、すごいぞ」
「えらいえらい」
俺とリーリスが交互に娘の頭を撫でると娘はニパッとわらった。
「すごーの?」
「おおすごいぞ」
「すごいわよ」
俺達が言った言葉にバンザイする娘。
「すごー、すごー」
そんなことをしていたら日も傾いてきた。
「じゃ、そろそろ帰るか」
リーリスが頷く。
娘は探すのでつかれたのか寝てしまった。
「この子の将来が幸多きものになりますように」
俺は大地母神にそう祈りながら家路についたのだった。
もちろん家畜たちも一緒だぞ。




