水辺には生き物がいっぱいいる、それは子供の観察対象にもなる
今日はリーリスや娘と一緒にヨルダン川の川べりに来ている。
雪解けの氾濫も収まって乾季になると川の流量も減って比較的安全になるからな。
川べりについた途端に娘がてこてこ早足になる。
「おしゃかなー」
そして、娘が川の中を泳ぐ魚を指差して目を輝かしてる。
「おお、魚だな」
ちなみに魚の正式な名前がなにかははっきりしないがたぶん鯉の仲間だと思う。
「おしゃかないっぱいー」
そういってひざまずいて水へ手を伸ばす娘。
念のためリーリスは娘の真後ろで娘を支えている。
「ちべた!」
水に冷たさにびっくりして娘は自ら手を引っ込めた。
「ああ、水は冷たいから落ちないように気をつけないとな」
それを聞いて娘が抱きついてきた。
「やー水こあーい」
リーリスは微笑んで言う。
「大丈夫、大丈夫、でもちゃんと気をつけないとね」
そう言ってリーリスは娘の頭をなでた。
「あい、きつけゆでし」
娘はコクコク頷いていった。
でもやはり水に中にいる魚などは気になるらしい。
しゃがみながらチロチロと水面を除いては笑ったり驚いたりしている。
そこにぴょこぴょこ跳ねるアマガエルの仲間がやってきた。
「あ、ぴょんぴょん」
俺は娘に教えた。
「あれはカエルっていうんだぞ。
小さい時は魚と一緒に川を泳いでいて大きくなったらああやってぴょんぴょんはねるようになるんだ」
娘は首を傾げた。
「おおきく?」
俺は頷いて言う。
「ああ、お前さんも大きくなったらぴょんぴょんはねたり走ったり踊ったりできるようになるぞ」
そう言ったら娘がその場でカエルのマネをし始めた。
「ぴょんぴょん、ぴょんぴょん」
そして娘は両手を上げて喜んでいる。
まだ、幼い娘は走ったりするのは難しいけど、子供は体を動かすのが大好きだ。
ああちなみに今日は家族皆で魚釣りに来ている。
「よいせっと、ミミズは便利な万能餌だよな」
リーリスと俺は娘と一緒に川べりで釣りを楽しみながら食料の調達もしてるってわけだ。
木の棒で河原の土を掘り返すとミミズが出てくるのでそれを捕まえて小さな籠に湿らせた草と一緒に入れて、釣り竿と釣り針で魚を釣る。
雪解けが終わり麦や豆の収穫が終わって食べるものにはあまり困らない夏はのんびり川魚や貝を取って食べることも多いのだ。
畑にはクローバーやウマゴヤシのたねなどがまかれてそこそこ草も生えてるのでガゼルなどがそれをはみに来ることもあるんだが、これ等牧草の繁殖力は強すぎるし、ある程度食べて増えてくれたほうが都合も良いのでこの時期のガゼルは割りと放置気味だ。
「それっ」
「いくわよ」
俺とリーリスは餌を付けた釣り針を川に投げ込む。
娘はお腹が空いたらリーリスの乳を飲んでは寝たりもしてる。
まあ、エリコ周辺は夏になっても熱中症になるほど暑くも蒸してもいないので昼寝にもちょうどいい。
この時代の釣りは時間を潰すための趣味ではなく食料を得るための作業ではあるが、楽しみながらのんびり行うものだから焦ったりもしない。
乾季に突然雨が降ってくることもめったにないし夏はのんびりできるいい季節だ。
「来たわ!」
「お、釣れたか」
「ええ、これで今夜のおかずも万全ね」
「そうだな」
連れた魚は結構でかくて80センチ位はあるな。
それを活け〆にしてエラと内臓を取り除く。
「これで臭みもないうまい魚が食えるぞ」
「そうね」
ちなみに俺は坊主だった、とほほ。
まあ、俺とリーリスが食べるには十分な量だったのでパンと一緒に美味しく頂いた。
「魚もなかなか捨てたもんじゃないよな」
「そうよね」
ま、そんな感じで夏はのんびり生活だな。




