子供が歩いて喋るようになるとすごく楽しくなるな。
さて、更に時が流れて、子供が自分で立ってよちよち歩いたり喋ったりするようになってきた。
とは言えまだまだ乳離は先だけどな。
「ちょっと外に出るか」
リーリスが頷く。
「そうね、ちょっとお散歩でもしましょう」
娘もうなずいた。
「あい」
娘を真ん中にしてリーリスと娘と俺とで手をつなぎながら町を歩いていると、生まれてから1年を無事に乗り切ってくれてほんとよかったと思う。
もちろん成人するまではまだまだ安心はできない。
だが、人間の赤ん坊は1年ほどの間ほぼ自力で行動することができないし、自分で行動できるようになってもすぐに走れたり食べ物を得られるようになるわけでもないのに人間はよく絶滅しないですんだものだと思う。
もっともこれでもゴリラやチンパンジーより乳離れの時期は速いのだが。
ゴリラは3年、チンパンジーは4年間、オランウータンに至っては8年から10年ほど授乳期間が有って、その間子供はずっと母親にしがみついている。
もっとも哺乳・育児中のメスは本来発情しないが、それでは交尾ができないのでチンパンジーやゴリラのオスは積極的に乳児を殺そうとしたりもするが。
交尾をしたいがための子殺しはイルカなども行っている。
オランウータンは交尾がしたいがための子殺しはしないがそのかわりに、発情期ではないメスの同意のない、オスによる強制的な交尾、つまりレイプを行う事がある。
いわゆる強姦をするのは数の多い動物の中でも人間とオランウータンとチンパンジーだけと言われているな。
オランウータンには、その他にもヒトとだけ共通していて、チンパンジー、ボノボ、ゴリラなどのような、他の霊長類にはない特徴がある。
それはメスの発情周期がわからないということと発情周期に関係なく、いつでも交尾が可能であるということ。
さらにオランウータンのメスは相手のえり好みをし、体が大きく、吠え声も立派なオスをパートナーに選ぶんだが、成体であっても体が小さく、立派に吠えることができない雄もいる。
そして、レイプ行為を行うのはそういったメスにパートナーに選ばれないオスで、素早い動きでメスを力づくで捕まえてレイプする。
この時メスはオスと殴り合って戦ったり、悲痛な叫び声をあげるのだがオスの力には勝てないので望まぬ相手の子供を宿すことになったりするわけだ。
さらにチンパンジーは他集団との殺し合い、同種食い、子殺し、レイプ、集団での個体へのいじめ等々かなりひどい。
まあボノボにはそういった暴力性はほぼ見られないのだが、この差は住んでいる場所である。
コンゴ川の左岸にボノボ、右岸にチンパンジーとゴリラが住んでいて人間はその右岸からも追い出された存在だ。
なので人間はどっちに近いかというと、まあチンパンジーに近いのだろう、悲しいことではあるのだがな。
ちなみにコンゴ川の左岸には潤沢な植物性の食料があるのだが右岸は左岸ほど潤沢ではない。
またボノボとチンパンジーの差はリーダーがメスかオスかというのもある。
ボノボの集団はメスがリーダーで、チンパンジーはオスがリーダーなのだ。
人間社会でも農耕や狩猟採取などの食料が潤沢な社会で女性がリーダーの社会は争いは少なく、遊牧などの食料が潤沢でなく男性がリーダーの社会は争いが多い。
そんなことを考えていたら娘が何かに気がついて指をさす。
「おーしゃ、ねこしゃ」
どうやらのんびり日向ぼっこをしてる子猫のところに行きたいらしい。
「おお、子猫もかわいいな。
まあ、お前さんのほうが可愛いけど」
立派な親ばかである。
そういいながら俺たちは子猫のもとに行く。
「ねこしゃ、かーい」
そういって娘はじっと小猫を見てる。
子供って何か興味のあるものを見つけたらじっとそれを見たりするのもすきだよな。
やがて目を覚ました子猫は走って何処かに行ってしまった。
「ねこしゃ、いないー」
泣きそうな顔で言う娘を抱き上げて俺は言う。
「ああ、猫も家に帰ったんだよ。
俺たちもそろそろ家に帰ろうか」
娘がこくりと頷く。
「あい」
リーリスも頷く。
「そうね、そうしましょう」
そして俺達は家に帰った。
うちの子どもが一番かわいいと思うのは時代が違おうと変わらない。
是非とも今後も無事に何事もなく育ってほしいものだ。




