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人間が昼間活動できるようになっていたのは望外の幸運だったと思うべきなんだろうな。

 人間は太陽が上ったら起き出し昼間に活動し、夜に寝る。


「おはようリーリス、今日も元気かな?」


 俺の問いかけにリーリスは笑って言う。


「ええ、大丈夫よ」


 生まれたばかりの子供の子育ては大変だがリーリスは元気なようだ。


 そして次に娘に問いかける。


「お前さんも元気かな?」


「あー」


 俺の問いかけに笑って両手を上げる娘。


 そろそろ言葉の意味がわかってきてはいるらしい。


 子供が生まれたばかりの時は授乳や排泄などで大変だったが、大きくなってきてそういったこともやっと大変ではなくなってきた。


 筋肉がついてきて寝返りをしたり、ちょこんとおすわりをすることもできるようになってきたな。


「んじゃ、食べ物をとりに出かけてくるな」


「はい、いってらっしゃい」


 基本的に人間は太陽のでている間に行動する昼行性の生物だ。


 昼行性生物としては魚類、両生類、鳥類や昆虫類の多くは昼行性だったりする。


 だが、哺乳類の多くは夜行性で、哺乳類を食べる事が多いワニも多くは夜行性、蛇や亀は昼行性が多いが夜行性もいる、トカゲは昼行性が多い。


 これは視覚に関して魚類、両生類、爬虫類、鳥類などの多くは、赤・緑・青・紫外線に反応する4種類の錐体細胞を持っているのに、哺乳類の多くは、赤と紫外線に反応する2種類の錐体細胞しか持っていないことも関係する。


 その代わり夜間でも光に敏感に反応する桿体細胞の数が増加していたり嗅覚や聴覚が発達していることがおおい。


 人間の眼球が顔の正面に2つ並んでいるのは視界の狭さという点で言えば欠点だ。


 多くの生き物の眼球は顔の左右に並んでいて後方にも視界は及んでいる。


 だが人間にはそうしなければならなかった理由がある。


 樹上生活では枝から枝への距離を正確に把握して立体視できる必要があったからだ。


 枝と枝の距離や位置を正確に把握できなければ当然樹上から落ちてしまうからな。


 立体視の能力は動き回る小動物などを食料とする、距離感の把握が大切な哺乳類の虎、ライオンなどのネコ科肉食動物や鷲、鷹、梟などの猛禽なども持っているけどな。


 また、緑の中の黄色や赤等の果実の色を見分ける事ができなければ食料を得ることができなかったろう。


 こういった資質は人間が霊長類として樹上で昼間に活動し、果実を食べて生活していたことで得られたものだ。


 人間の手が物をつかむということができるのも樹上生活のおかげだな。


「まあそのお陰で比較的安全なんだよな」


 特に哺乳類の肉食動物は昼間に寝ていることが多いので、その分安全なのだな。


 まあ、狩猟をして食料を得る彼らの場合は食事を手に入れるのが大変なので、なるべく無駄にエネルギーを消費しないように暇な時間は寝ているというのもあるんだが、哺乳類の殆どは汗をかくことができず上げた体温を下げることができないからでもあるんだ。


基本的に全身で大量に汗をかけるのは人間と馬くらいのはずだな。


 無論、死にそうなほど腹が減ったらその限りではないのだけどな。


 大変なのは哺乳類の草食動物で彼らの睡眠時間は基本的に4時間、キリンなどは一日2時間程度なので昼間でも夜でもうつらうつらしてることも多い。


 ちょっと変わっているのはイルカで彼らは完全に寝てしまうことはなく、片目を閉じてその片方の脳を休ませながら行動し続けている。


 それでも睡眠時間は5時間位であるらしい。


 これは魚と違い肺呼吸するイルカなどは定期的に水面に出て空気を取り入れないといけないからだな。


 うっかり寝過ごして溺死は笑えない。


 これには例外が有ってコアラやナマケモノのような他の動物には毒である植物の葉を食べている草食動物は基本的に睡眠時間が長い。


 毒を分解しながら少しずつ消化するために長い睡眠時間が必要なのだな。


 大型肉食獣が基本的にいないオーストラリアのコアラはともかく、猛禽も猛獣、蛇もたくさんいる森のなかで生きているナマケモノがなぜ絶滅しなかったかは一見謎なのだが、寝る時や交尾、出産するときも木の上でぶら下がったまま行い、その動きがあまりにも遅すぎるので他に派手に動く生物が居た場合木の枝としてしか認識されないかららしい。


 週に1回排泄をする時には木の下の根本に排便をするのだがその時は捕食される可能性が高くなるらしい。


 ナマケモノは筋肉などが少なすぎて食べる量も1日の食事量が8gほど。


 そしてナマケモノは筋肉がほとんどないので体温を保つことができない、ナマケモノは哺乳類にも関わらず変温動物だったりする。


 なので寒い場所では生きていけない。


 だが、ナマケモノは食べる食料が少なくていいので殆ど動かなくてもいい。


 食べる量がごく僅かなので葉っぱがなくなって争うようなこともしない。


 同じ樹上生活者の猿はそういう点では競争の厳しい社会だからな。


「まあ、さほど競争がないのはいいよなこの時代」


 川の魚や貝、麦や豆などにそれを食べに来るガゼルやイノシシ、ナッツや団栗など食べるものは豊富なこの地域ではそれ故に競争などはあまりない。


 川の魚を獲って帰れば母娘の笑顔にむかえられるのはいいことだ。


「今帰ったぞー」


「はーい、おかえりなさい」


「あー」


 他人を蹴落としたり、他人から財産を奪わないと生きていけない時代よりは不便でも全然この時代はいいよな。

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