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麦の収獲の季節がやってきた

 さて、春になり野原に茨やアザミなどの様々な花が咲いて、そしてその花が散り始めると穀物や豆の収穫の季節だ。


 麦に穂が出てからおおよそ一月ちょっとくらいで麦の穂に実がつくからな。


 青かった麦の穂などがすべてが黄金色に変わって行くのはなかなか壮観だぜ。


「麦や豆の収獲の季節か。

 飯の心配をしなくていいのは助かるよな」


 まずは大麦を収穫して、それが終わった頃に小麦も収穫の季節を迎える。


 それが終わればヨルダン川が雪解け水で増水して畑に新たな土を運んでくるのだな。


 そしてこの頃には乾季になってきて雨も殆ど降らなくなってくる。


 収穫した麦を濡らさないように乾燥するにはちょうどよいのだ。


 同時に子どもを無事に産んだ山羊や羊、ロバなどの乳が出るようになるので、乳の搾乳や畑の麦などを食べに来る草食動物達の狩猟もしながら、食料の確保を行うわけだ。


 俺は一面に広がる麦畑に来ている。


「あたり一面に広がる黄金の麦の穂か、いやいやすげーな」


 21世紀の日本では北海道くらいしか見れそうにない光景だ。


 ちなみに身重なリーリスは家で留守番だぜ、何かあって母子共に……なんてのは困るからな。


 そしてそろそろ子どもも生まれそうな時期なはずなんだよな。


「さてと、収獲を始めるかね」


 穀物の茎を左手で手でつかみ、根本から鎌で刈り取る。


 そして根本を亜麻の紐で縛って、乾燥させるために干す。


「やっぱりそこまで実の数は多くないんだな」


 長年の品種改良だとか豊富な肥料だとかは現在のエリコの麦には当然無いから、そこまで付いている実は多くないがおそらくこれでも十分多いのだろう。


 このあたりが麦の原産地であって気候や温度などは麦の育成に最適のはずだし、ヨルダン川の増水で適度に土には栄養が運ばれてきているはずだしな。


「まあそれでも十分多いんだろうけど」


 実際、2ヶ月程の春の収獲の期間での大麦、小麦、豆類の収獲でエリコの1年分の食料は十分に足りるくらいだ。


 そして余った穀物などは交易のときに石器などとの交換のために貨幣代わりとなるわけだ。


「これだけ食料が余ってるなら食料を巡って争う必要なんて無いのにな」


 とは言えヨルダン川の周辺は肥沃だがそこを離れれば荒れ地や砂漠も多い。


 かと言ってそこらに住んでる連中も全部エリコに入れるというのも無理だ。


 人数が増えすぎれば必ず揉めごとが起こるからな。


「なかなかむずかしいよな」


 その後、脱穀は麦の穂を吊るして10日程乾燥させた後、それを落として地面において穂を木槌でゴンゴン叩き、バラバラにする。


 その後、底の浅いかごに入れて風で籾殻を吹き飛ばせば、脱穀できる。


 ヨルダン川に行ってカラス貝を採取もする。


 そして俺は新麦と山羊乳とカラス貝でクラムチャウダー風の麦粥を作る。


 妊婦には消化の良いもののほうがいいだろう。


「おーい、麦粥ができたぞー」


 俺は石皿にふやかした麦粥を入れてリーリスとリーリスの世話をしてくれている妹のリーリムに持って行く。


「ありがと、いただくわね」


 フーフー覚ましてから麦粥を食べるリーリス。


「ここの食事は美味しいから嬉しいのよね」


そう言って粥をたべているリーリム。


「しっかり食べて、丈夫な子どもをうんでくれよ」


「うん、大丈夫よきっと。

 ん、これ美味しいわね」


「おう、新麦に新鮮なヤギの乳とカラス貝のダシが出てるからな」


「ありがとうね」


「なに、いいってことさ」


 本当に母子ともに問題なく出産できてほしいものだ。

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