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たぶん9千5百年くらい前の古代オリエントのエリコに転移したけど意外とのんびり暮らしてる件  作者: 水源


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食料の余剰と欠乏が争いを生み出す、悲しいがそれは人の性というものかもしれない

 さてそろそろ秋になる。


「もう秋か、早いもんだな」


「そうね、早いものね」


 リーリスのおなかも順調に膨らんできている。


 妊娠初期は食欲不振になることがあるが、胎児は卵黄のうという器官から栄養を補っているので母親が食欲不振でも子供の成長位は問題ないが、胎盤が完成する妊娠5ヵ月目(妊娠16週)位からはつわりが落ち着いてきて胎盤を通して母親が摂取した栄養を胎児が吸収するようになるので、母親もこれまでより多くの栄養が必要になり食欲が増して来る時期だ。


 そしてこの時期だと春先の麦などの穀物や豆、野菜のストックも尽きてくるが、秋になればオークの木のドングリやピスタチオ、アーモンド、ヘイゼルやクルミなどのナッツ類やナツメヤシの果実であるデーツにリンゴや葡萄などの果実などは豊富に取れるようになる。


 果実はビタミンも豊富なのがなお良い。


 ナツメヤシの種子は、動物の飼料にもできるが、種子から取れる油脂は、石鹸にすることもできるはずだ。


 更にはナツメヤシの樹液は糖分を多く含むため、樹液を煮詰めて砂糖を作ることもできる。


 なのだが、そうして大きな街社会が形成されてくると、そういった蓄えられた食料を巡っての争いも発生するようになるのだな。


 特にまだ気候は安定しておらず、その他にもヨルダン川周辺の土地は肥沃で森林ステップを構成しているが、そういった地域は狭く、その狭い地域以外は木も生えておらず、草原での遊動的な狩猟や遊牧を行っている集団も多い。


 そうなると秋のナッツの実りや果実の実りが悪くなったときに食料が欠乏しての村同士であらそったり、遊動的狩猟や牧畜を行ってる遊牧民族が、エリコのような大規模に農耕を行ってる村を襲うということもある。


 なので本来エリコの環濠は水が引いた時に水はけを早く良くするため、壁は本来は雪解けの洪水による建物への浸水を防ぐためのものだったのだが、現在では他の村や遊牧民族の攻撃を防ぐための防塁や防壁の役割でも在るのだ。


 同時期の縄文人は原始的焼き畑は行ったが、麦ほど収穫率は高くないのもあるし人口密度も海岸に集中はしているものの、同時代のエリコ周辺ほど極端に高くはなかったのもあり食料が不足している時は複数の集落が一緒にイルカやクジラを狩ったりするなどで協力して食料を得ようとすることのほうが多かったようだ。


 寒冷化により食糧事情が変わった縄文後期では争いも有ったようだがな。


 そしてこの時代における武器はまず弓だな。


 狩猟で使うものと同じく石器のフリント(火打石)の鏃を使う。


ついで投石で、適当な大きさな石を投げつけるわけだがこれは案外危険だったりする。


 接近してしまった場合は石槍、石斧、石のナイフ、棍棒、木の棒、収穫用の石鎌までなんでも使う。


 基本的に専用防具というのはない。


 寒ければなめし皮の衣服、暑ければ下手すれば上半身は裸での戦いになる。


「革製でいいから兜と木製の盾くらいはほしいよな」


 これからは気候も涼しくなるし蒸れて動けなくなるということもないと思う。


 皮は膠で煮て固めるとかなりの硬さを得るからな。


 膠は動物の皮や骨を煮ることで得ることが出来るからまあなんとかなるだろう。


「まずは、畑を荒らす草食動物の骨と皮をもらうか」


 畑の豆などを喰おうとする害獣退治の狩猟は四季行われてるので、それで駆逐されたガゼルやノヤギ等の皮と骨を分けてもらい、適当な大きさに盾の方ナイフで切ったり、石斧で砕いたりして水を入れた壺にそれらを混ぜ合わせて膠を煮出す。


 それと同時に頭を覆う大きさの兜を皮を裁断して、縫い合わせることで作る。



「まあ、これをかぶってるだけでも投げつけられた頭に石が直撃しても多少は守ってくれそうではあるんだがな」


 同じように丸い形に作った皮を盾にするために何枚か用意する。


「まあこっちは取っ手もつけないとダメだが」


 とりあえず鎧はおいておいて、兜と盾を先に作ってみる。


 膠で皮を煮て、兜は皮を膠の溶液に浸けて中まで浸み透ったところでそのまま乾燥させ、盾の方は皮を膠の溶液に浸けて中まで浸み透ったところで取り出し、石槌でガンガン叩いて打ち延ばす。


 これを数枚重ねて更に打てば膠でくっ着いて一枚の硬い盾が出来上がる。


 皮を膠で煮て固めるというのは平安時代の源平武者に大鎧で使われているし、西洋のリネンキュラッサはそれこそ厚手の麻布を膠で煮て固めたものだが、大鎧は長大な和弓の矢を防げたし、リネンキュラッサも片手剣の斬撃くらいはとめられた。


 膠という接着剤の防御力は案外あなどれないのだ。


「まあこんな感じかね」


「あらそれは何に使うの?」


「ああ、もしこれから先、闘いになった時に弓を射かけられたらそれから身を守るために持つのさ」


「なるほど、そんなものもあるのね」


 まあ今のところそんな大きなものは作れてないが、もう少し大きな盾も作れるかね。


 鎧は野球のキャッチャーみたいに前だけ守れればとりあえずはいいか。


 とは言え争いがそもそも起こらないに越したことはないんだが。

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