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たぶん9千5百年くらい前の古代オリエントのエリコに転移したけど意外とのんびり暮らしてる件  作者: 水源


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このあたりは塩の確保が楽なのはいいな

 さて、リーリスの家族の協力も有って、1週間ほどで新しい家はできた。


 そろそろ本格的に暖かくなってきたので、着る衣装も亜麻を織ったものに変わってる。


 流石に毛皮だと暑すぎるからな。


「いやいや、ずいぶん早いな。

 それに随分立派な家だ」


 リーリスは笑っている。


「それは勿論、あなたがこれからも色々作れるようによ」


 ああ、なるほど、俺は発明家として期待されているらしい。


「なら頑張らないとな」


 ヨルダン川という定期的に氾濫を起こす大河の側に住み、その大河を利用するために街の周りに石の壁を積み上げていくにはそれを管理するリーダーが必要だったはずだ。


 この時代ではまだ富裕層と自由民、奴隷のような階級格差や農民と職人のような職業は発生していないが、もう少しすれば人々の社会的関係や役割分担が決まっていき、それにより身分と言うものも出来るのだな。


 それがウバイド文化以降のメソポタミアやエジプトなわけだが。


 それとは別に秋の採取と春の農耕による収穫の増加やガゼルの狩りに加えて山羊や羊の牧畜、ヨルダン川での魚や貝の漁労による豊富な食料を得られることで、街にいる人間が消費する以上の食料が通年でほぼ確保できるようになった。


 余剰な食料が確保できることにより、街にいる全員が食料の確保に従事しなくて大丈夫になれば、便利な道具などの発明研究生産に専念できる人間も出てくる。


 たとえば日干し煉瓦の発明などはそれの最たるものなのだろう。


 本来ならあと1000年もしたら土器も用いられるのだがな。


 煉瓦というのは土でできているのでいわば自然の洞窟を自分たちで割りと簡単に平らな場所に作れるようになったようなものだ。


 無論それは乾季が長く続いてその間に家を建てられ、雨季でもさほど大雨にならないという気象条件があったからこそ可能であったことでもあるが、煉瓦というのは昼間は熱を吸収し夜間には熱を放出するので、夏でも家の中は割と涼しく、夜はわりと暖かくて過ごしやすいのだ。


 まあ、淡水資源も森林資源も少ないこの地方は風呂がないのはチョットしんどいものがあるけどな。


 そしてリーリスが俺に言う。


「今日は塩を取りに行きましょう」


 俺は頷いた。


「ああ、塩は大事だよな」


 人間のみならず動物の生活と塩は切っても切り離せない。


 塩がないと人間は正常な生命活動が困難になってしまうからな。


 勿論調味料としても重要だし魚などを干す時に塩漬けにしたりなど長期の保存のためにも必要なものだ。


 さて海の側ではないエリコで俺達がどうやって塩を手に入れるかというと、エリコは死海の近くでもあるので、そこに塩の結晶である岩塩を取りに行く。


 日本人は塩は海水を煮詰めてつくるというイメージがあるが実は地球全体から見ると、岩塩を使用する民族は約80%で圧倒的に多い。


 そもそも海岸線に接していない場所に住んでる人間も多いしな。


 そしてこの辺は大昔テーチス海という海があったせいで地層の中に塩が滞留している。


 乾燥すればそれが地表にあがってきてしまうので、土地の乾燥し過ぎは致命的でもあるのだが、その地下の塩を含んだ水も含めて水が流れ込む死海は世界一塩分濃度が高い塩湖としても有名で海水の塩分濃度が約3%であるのに対し、死海の湖水は約30%の濃度を有するためその周りには岩塩がゴロゴロしている。


 勿論そこまで歩いていくのは大変なので船で行くのだが今回は葦をあんで作った葦舟だ。


 葦を束ねてつくった小さい葦舟は人類が作り出した最も古い舟で丸木舟ほどは大きくないが、材料が簡単に得られて、磨製石器の斧など製作に特別な道具を要しないためつくるのが簡単であるというメリットが有るし、しかも軽い。


 なので現代でも結構使われていたりする。


「さてじゃあいくか」


「ええいきましょう」


 川岸にとめてある葦舟に俺たちは小さなツボを持って乗り、船竿でヨルダン川を下っていく。


 そして2時間もすれば死海に到着するので適当に船を止めて陸におりた。


 死海には岩塩の柱がいくつも立ってるし、その底は岩塩だらけ、海岸も当然同じだ。


 岩塩を下手にふむと足のうらを切るので気をつけないといけない。


 だから拾うのも簡単、ただしにがり成分なども全て凝縮されているのでやや塩辛い上に苦い。


 豆乳があれば豆腐も作れるんだけど、大豆は中国北東部の作物なのでここにはまだ無い。


「こんなもんかね」


「ええ、十分じゃないかしら」


 結構な大きさの岩塩を適当に拾ったら帰ることにする。


 ちなみに死海は塩分濃度がたかすぎるから15分も水に浸かってると、皮膚はフニャフニャに伸びるのではなく水が吸い取られて縮んでいく。


 ナメクジに塩をかけると縮むようにな。


「なんか変な感覚だな」


「さあ、川で塩を落としましょう」


「了解」


 ちゃんと塩を落とさないと大変なことになるからな。


 そして帰りも2時間位で街に戻れた。


 時間が余ってるならチョット死海に浮かんできても良かったかもな。


 のんびり塩を取りにいける程度に余裕があるのは良いことだ。

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