とりあえずお試しでキルベト・クムランに住んでみて色々試してみようか
さて、現在はエリコの周囲はヨルダン川の増水で水に囲まれている。
なので現在の食料の採取は川魚が主だが、春に収穫したばかりの小麦や大麦などは沢山あるし、乳製品も豊富なので、せかせか働かなくても食料に困ることはほとんど無い。
現状のキルベト・クムランやエン・ゲティ、アルノン川の河口流域などでは狩猟を楽しんで、その狩った獲物の肉を食べることを楽しむための行楽のための場所という感じだ。
マハマート・マインは春の収穫作業などの疲れを温泉に入って癒やすための湯治場だな。
そんな感じで暇を持て余したエリコの住人はそれなりの数がエリコの外に出かけているが、現状ではまだ現代で言うならキャンプ場のような一晩寝泊まりして気分転換をするための場所か、せいぜい別荘地であって、長い期間居住するための場所としての整備が進んでいるわけではない。
はっきりいえばエリコが住みやすすぎるので、わざわざ移住する必要性がないんだよな。
とはいえ将来的には移住せざるを得なくなるはずだし、いつの間にかエリコ以外の人間に居座られたりしても困る。
そういうわけでキルベト・クムランに住むことができるように環境を整備していこうと思う。
とはいっても俺一人でできることではないので、家族の協力は必要なんでまずはリーリスに相談だな。
「リーリス。
秋のどんぐりの収穫が始まるまでは割と暇だし、キルベト・クムランにいってあちらに長いこと住めるように仕込んでおきたいんだけど手伝ってくれるか?」
リーリスはしばし考えたあと頷いた。
「ええ、いいわよ。
二人の子供もさほど手がかからなくなってきているしね」
「そうかありがとう。
あとはマリアに許可を得るべきか」
「そうね。
家を長く開けるなら、家畜の世話をしてもらうためや、空き家と間違われてゴミを投げ込まれないためにもリーリムやお母さんにも声をかけておかないといけないわ」
「じゃあそっちはリーリスにお願いするな。
俺はマリアに許可を取ってくる」
「わかったわ」
そして俺はマリアにキルベト・クムランに家族で住み込んで環境を変える許可をもらった。
「わかりました。
ああいった場所は夏の増水期だけ利用できれば最低限良いと思っていましたが、通年で住めても問題はないですからね」
マリアがそう言うので俺は頭を下げたあと言った。
「ありがとな。
今回は取り合えすどんぐりの収穫や麦の種まきが始まる前には一旦戻ってくるつもりだ。
現状だとキルベト・クムランでどんぐりや麦を手に入れるのは難しいしな」
「わかりました」
というわけでまずは秋のどんぐり拾いが始まって忙しくなるまではキルベト・クムランに居座っても良い許可をもらった。
リーリスはリーリムやお母さんに家や家畜の世話をお願いしてくれた、あちらも快く引き受けてくれたようだ。
「リーリムったら家畜の世話をしておくかわりに、なにか目新しい美味しいものを食べさせてよねーだって」
「なるほど、それじゃなんか考えておかないとな」
キルベト・クムランには俺達家族といっしょに山羊のつがいも連れて行く。
夏は山羊乳の旬であり、青草を食べて育ったヤギのミルクはさっぱりした味わいが特徴で飲みやすくうまい。
ただ、山羊は暑さには弱いので健康管理に注意しないといけない。
十分な日陰と水分の確保、風通しを良くするなど暑さ対策をちゃんとしないとな。
山羊は比較的なんでも食べるからキルベト・クムランでも餌に困ることはないだろう。
あとは山羊の毛をつかって敷物や毛布を作りたいが毛織物にするより、圧縮して不織布にしたほうが座り心地はいいかもしれないな。
羊は山羊以上に暑さに弱いし餌も山羊ほど何でも食べるわけではないから今回は置いていこう。
あとはキルベト・クムランに低いものでいいので鳩の塔を立てておけば鳩の肉や卵を一年中手に入れられると思う。
そして今回はまだ皮を割っていない状態のどんぐりも持っていこうと思う。
オークことヨーロッパナラは比較的丈夫で多少の乾燥にはたえられるらしいが、窒素は多めに必要らしいし、塩分濃度が高いだろうキルベト・クムランでちゃんと育つかわからないが、オークのたぐいはどんぐりを埋めておけば春に芽が出て育っていくはずだ。
桃栗三年柿八年というように栗や果樹は穀物と違って種などを埋めたらその年に実がなって食べられるようになるわけではないとはいえ、育ってくれれば手間がかからず毎年実りを得られるからな。
実際に日本の縄文時代では集落に栗の木を植えて育て、実を食用にしたほか、幹は建材に、枝はかまどなどの燃料に使っていたりする。
こうやって利用できる植物を身の回りに植えて育てることは結構古くから行われているんだな。
あとナツメヤシの種も持っていこうか。
多分ナツメヤシならキルベト・クムランでも育ちそうな気がする。
現代であれば樹木は挿し木で育てるほうが多いようだが、この時代では挿し木や接ぎ木を行うのは難しいし、手間もかかりすぎるので素直に種を埋めてあとは自然に任せるとしよう。
もともと植物はタネを動物に運んでもらって生息域を広げていく戦略を持っていて果実は類人猿や猿などに、どんぐりやナッツなどはリスなどに運ばせることでその生息範囲を広げているわけだ。
人間が主食を採取でのドングリやナッツなどから農業での麦などの穀物や芋に切り替えたのは、穀物やナッツは種を巻いたり種芋を埋めれば半年ほどで食べられるようになりすぐに増える手軽さがあったからだな。
その代わりに硬い土を耕したり、しゃがんで雑草を引っこ抜いたり刈り取ったり、といった農作業と向き合うはめになったわけだが。
現状ではなにもないキルベト・クムランを、食べ物が十分な量が手に入るようにするのは大変だとは思うが頑張ってみようと思う。




