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超能力と、怪物と、少年 二


 悲鳴を上げたものに、何者かが覆いかぶさっていた。襲われているものに覆いかぶさっているものは、人間とはいいがたい姿かたちをしていた。もともとは人間だったのだろう。しかし今の姿というのは肉食動物のしなやかな曲線を描く肉体と、四速歩行に適した手足を持った怪物になっていた。人間だったと断言できる理由は、頭の部分である。まだかろうじて人間の顔を残していた。今も人間的な部分が消えていく最中であるところをみると、そのうちに完全な怪物になるだろう。怪物が覆いかぶさっている被害者を腹に収めることで完了するのだ。

 悲鳴の主はまだもがいていた。悲鳴をあげていたのは小さな子供だった。リュックサックを身につけていて、手には懐中電灯を握り締めていた。頼りになる光が少なすぎて、はっきりとした姿というのはわからない。しかし重要なのはみためでもなければ性別でもない。大切なのはまだ生きているということ。襲われている子供はまだ呼吸をしている。

 襲われている光景を確認した錬太郎の目に光が宿った。その光は物質的な現象として現れていた。闇の中で、夕焼けのような光がともる。錬太郎の動きに合わせて残像を生んだ。錬太郎が、覚悟を決めたのだ。目の前の怪物になってしまっただろう存在を、始末するという覚悟である。

 覚悟を決めた錬太郎は速やかに攻撃を仕掛けた。悩むなどということは少しもなかった。一気に四速歩行する怪物との距離を縮めてけりを放った。覆いかぶさっている格好であったので、錬太郎のつま先は、怪物の腹部に突き刺さった。錬太郎が迷いもなく攻撃を仕掛けたのは、襲われているものを助けたいという気持ちしかなかったから。そして奪われるかもしれないという恐怖が命を取り合う戦いの恐怖を、吹き飛ばしてしまった。

 覆いかぶさっていた何者かは、蹴り飛ばされた。サッカーボールが転がるような調子だった。錬太郎の脚力というのは、怪物の肉体を吹っ飛ばすだけのの威力があった。

 そして廊下を転がり、勢いが死んだところでもがき始めた。手足を震わせて、奇妙な泣き声をあげていた。水気の含んだものが床とぶつかる音も聞こえてくる。もともと強力な筋力を有している錬太郎が、思い切りまったく手加減をせずにけりを放ったのだ。その威力というのはとんでもないものがある。むしろ、先ほどの一発で内臓を損傷して、即死していないことのほうが不思議だった。怪物はずいぶんと頑丈だった。

 動けなくなっている怪物を確認して錬太郎は、襲われていた人物に声をかけた。

「大丈夫か」

情けない声だった。自分が行った行動に恐れを抱いたわけではない。自分の救助が間に合わなかったかもしれない。もしかしたらというのが頭に浮かび、それを恐れたのである。





 助け出した子供は、背の低い少年だった。八歳か、九歳くらいの少年だった。身長が百センチほどで、細身である。外で遊んでいるよりは部屋の中で本を読んでいそうな雰囲気がある。

 錬太郎の質問を受けて少年はうなずいた。少年は立ち上がり、リュックサックを担ぎなおした。手のひらとひざが汚れてはいたけれども、怪我らしい怪我はなかった。

 錬太郎は怪物が立ち上がるのを見た。

 四速歩行する怪物はけりこんできた錬太郎をひどい目でにらんでいた。しかしずいぶんとふらついていた。少年を狙ってはいたけれど、錬太郎がいるので襲えないといったような空気があった。まだ四速歩行する怪物はあきらめたりはしていない。少年を腹に入れるつもりだ。よほど腹が減っているらしくよだれをたらしていた。錬太郎の事をどう見ているのかというのはわからないが、少なくとも錬太郎が助けた少年はおいしそうな食べ物に見えるのだ。そして錬太郎は食事の邪魔をした悪いやつ。食べ物に関する恨みは恐ろしいとは言うけれども怪物になってもその理屈は通じるのだ。

 怪物が立ち上がったのを見て錬太郎は少年を肩に担いだ。少年を米俵でも担ぐようにして担いだのだ。あっという間の仕事だった。錬太郎が少年を肩に担いだのは逃げるためである。少年が一生懸命走るよりも錬太郎が少年を担いで走ったほうがずっと早いと錬太郎は判断した。錬太郎には少年を担いで走れるだけの肉体があるのだから、やらないわけにはいかない。

 そして一気に逃げた。少年を担いでいるというのに恐ろしいほどのスピードだった。錬太郎の鎧のような筋肉が、脱出を助けてくれた。戦わなかったのは、戦う必要がなかったからである。もしかすると勝利することができるかもしれないけれど、少年をかばいながら、成人男性ほどの大きさがある肉食動物というか怪物と戦って無傷でいられるとは思わなかった。

 背後から、足音が聞こえる。ジャリジャリという音だった。音の主は四速歩行する怪物である。怪物は錬太郎の担いでいる小さな少年を食うために追いかけているのだ。自分の獲物を横取りされて、怒っているということもある。

 しかし錬太郎の逃げ足に追いつくことはなかった。四速歩行する怪物は錬太郎の一発でずいぶん損傷してしまっている。それに加えて錬太郎の勢いというのはすさまじいところがあった。少年一人担いだくらいではまったく衰えない肉体が、錬太郎の逃走を助けてくれたのである。




 完全に逃げ切ったところで、錬太郎に担がれている少年が言った。

「おろして」

少年の表情というのはずいぶん悪い。青い顔をしていた。これは恐ろしいものとであったからではない。少年は酔ったのだ。錬太郎というのは気にしていなかったが、とんでもない勢いで錬太郎は走っていた。もともと錬太郎というのは乗り心地のよい車とか、電車だとかではない。そのため乗り心地というのは非常に悪い。肩に担がれて思い切り走ったものだから、車酔いのような症状が、少年に襲い掛かっていた。

 錬太郎は暗闇の中で、少年をおろした。錬太郎はずいぶん丁寧に少年を肩から下ろした。もしかしてという気がしたのだ。もしかして怪物に襲われたときに目に見えない部分に怪我を負って、それが今になって変化をもたらしたのではないかと。だから非常に丁寧な扱いをした。

 そして少年に錬太郎が聞いた。

「大丈夫か。ものすごく顔色が悪い」

 少年が答えた。

「大丈夫。助けてくれてありがとう」

少年が、錬太郎に文句を言わなかったのは、錬太郎が助けてくれなければあの場所で死んでしまっていただろうというのが簡単に理解できたからである。少年は、車酔いのような状況にはなっていた。しかしそんなことどうでもいいと思えるくらいには、錬太郎に感謝していた。

 心配している錬太郎に少年が指をさした。

「たぶんこっち。たぶんこっちに、逃げ道があるから、そっちにいこう」

まだ気分が悪そうだったが自信に満ちた声だった。懐中電灯を真っ暗闇の中に向けて、少年は道を示した。少年には錬太郎にはない土地勘があるのだ。だから少年は錬太郎よりも自信を持って道を選んでいける。

 少年の助言を聞いて錬太郎が少し動きを止めた。考え事をしているようだった。錬太郎が考えたのは、小さな少年に道を任せていいのかということである。これが大人だったりしたら、すぐに錬太郎は道を任せていたかもしれない。なぜなら大人だから。しかし錬太郎に道を示してくれたのが小さな子供だった。だから少し考えてしまった。間違えているのではないかと。

 しかしすぐにうなずいた。錬太郎は笑っていた。

「わかった。俺はこの建物の構造を知らないから、任せるよ」

少し考えて錬太郎は自分が何も知らないことに気がついたのだ。そしておそらく名前も知らない少年のほうがずっとこの建物の中身を知っているということに思い当たり、任せることに決めた。少年だからといって何も知らないなどということはないのだから、任せてしまえばいい。そして、もしも怪物に出くわすことになったとしたら、そのときにはそのときと、そう決めた。

 そして少年がライトで道を照らした。少年の照らすライトはまったく迷いがなかった。少年は本当にこの建物の中身というのを知っているのだ。だから、迷わずに道を示していける。

 錬太郎はその後を追っていった。少年の歩くスピードにあわせて、ゆっくりと追いかけた。




 少年の案内は正確だった。懐中電灯を使いうまく道を示してくれた。身長がずいぶんと低いため、進むスピードは遅かった。少年は頭の中に自分の地図を持っているのだ。そのため真っ暗闇になって、周りの状況がわからなくなっていたとしても迷うことがない。

 何度か怪物とすれ違った。怪物たちの姿はいろいろだった。人間の形をほとんど保っていないものもいれば、人間らしい格好のものもいた。しかしほとんどが人間ではなく、人の言葉を話すこともできなくなっていた。そして示し合わせていたかのように同じような行動をとった。彼らは少年を見つけると襲い掛かってきたのである。会話をする余裕などどこにもなかった。

 しかしそのつど、少年が機転を利かせた。襲われるたびに道を変えてみたり、物陰に隠れてみたりした。少年が機転を利かせられるのは、単純に少年の頭がいいということもある。しかし錬太郎の存在というのが大きな理由になっている。錬太郎というのは怪物を前にしてもまったくひるまず、それどころかあっという間に攻撃を仕掛けて危機から救ってくれる人間というように少年には見えている。そのため安心できるのだ。もしものときには錬太郎が戦ってくれるだろうという安心感が、頭を十分に働かせたのである。

 錬太郎と少年は、更衣室にたどり着いていた。何度か怪物たちとすれ違い、また戦いを選ばなくてはならないときもあったが、それでも二人は無事であった。まったく怪我というのはしていない。これは錬太郎の身体能力と勇気。そして少年の冷静な判断と情報がかみ合ったことで生まれた結果である。どちらがかけていたとしてもここまでくることはできなかっただろう。

 更衣室の電源というのはまだ生きていた。錬太郎がスイッチを入れると電灯がついてロッカーの並んだがらんとした部屋が浮かび上がった。

 少年が錬太郎に言った。

「もう少しいったら、管理室があるはずだからそこでブレーカーを上げよう。そうしたらエレベーターが使えるようになるはず」

少年の呼吸が少しだけ荒くなっていた。少年には年相応の体力しかないのだ。怪物と追いかけっこをするなどというのは精神的な力も肉体的な力も奪っていく。特に命がけなどという圧力を感じながら動き回るのだ。小さな体にはこたえるだろう。

 錬太郎は、更衣室のロッカーをあさっていた。ずいぶんと必死な様子であった。更衣室のロッカールームをあさっているのは身につけるものを探すためである。ここまで錬太郎は素っ裸のままで動き回っていた。錬太郎が助けた少年は錬太郎の姿について特に何もいわなかったが、光の下に出て行くというときになって、素っ裸というのは非常にまずい。そのため錬太郎は緊急避難として誰のものでもいいから身に着けるものをいただこうというように考えたのである。

 そしてフリーサイズのズボンを発見した。ロッカーの扉をいくつか壊して、やっと見つけた。錬太郎が見つけたのは男性用の長ズボンである。このズボンは、てかてかとした光を放っていて、腰周りを紐で調整するタイプのズボンだった。錬太郎が叩き壊したロッカーの持ち主が持ち込んだ長ズボンである。

 シャツも見つけた。五枚で千円で売っていそうな真っ白いシャツである。これもまた錬太郎が叩き壊したロッカーの持ち主のものである。

 しかし身に着けたのはズボンだけだった。シャツに関しては見につけようともしなかった。というのが、どちらも体のサイズにあっていなかったのだ。シャツに関しては腕を通して、身に着けたとしたらシャツが破れるだろう。ズボンに関しても無理やり足を通してはいているため、ぴちぴちに張り詰めてしまっていた。

 少年が笑った。

「サイズ合ってないね、そのズボン。スパッツみたいになってる」

 ズボンをはいた錬太郎が少年に名乗った。少し恥ずかしそうだった。

「俺の名前は、花飾錬太郎だ。助かったよ、気がついたら裸でここにいた。君の案内がなかったら、怪物どもと戦い続ける羽目になっていただろう」

 少年がはっとした。少年は自分がまだ名前を名乗っていないことに気がついたのである。しかし仕方がないことである。何せ怪物に襲われて、そして今まで逃げたり隠れたりしながらやってきたのだ。落ち着いて自己紹介などする暇はなかった。

 まだ名乗っていなかったことに気がついた少年は、自己紹介をした。はきはきとした声だった。「僕の名前はイオニス・タイム。助けてくれてありがとう」

 そして続けてこういった。ずいぶんよく通る声だった。

「気がついたらってことはここがどこだかわからないんだよね? 

 おしえたげるよ、ここは超能力技術研究所だよ。聞いたことくらいあるでしょ? 世界最大の研究機関。ここは研究所の地下部分のゆるいところだよ」

 錬太郎は頭を横にふった。信じられないという様子だった。イオニス少年が教えてくれた建物の名前にさっぱり錬太郎は主いたるところがなかったのだ。そして仮に錬太郎がまったく知らない世界最大の研究所だとしても、超能力というところがまた信じられなかった。

 錬太郎はこういった。嘘をつくなというよりは冗談はやめてほしいというきもちがずいぶん強く乗っていた。

「さっぱりわからない。超能力技術研究所? なにそれ? 超能力なんてあるわけがない」

 イオニス少年がこういった。嘘を言うわけがないといった自信に満ちた表情だった。そして少しだけ錬太郎こそ冗談を言うなよという感じが目に宿っていた。

「超能力がないなんてそんなわけないじゃないか。超能力が発見されたのは、僕が生まれてくるずっと昔の話だよ。小学校でも教わるのに、錬太郎が知らないわけがない。いやそもそも信じられるとか信じられるとか、そんなの自体がおかしいくらいだよ」

イオニス少年が自信満々なのは証拠がいくらでもあるからである。証拠があるのなら認めるしかない。錬太郎は認められないけれど実際使ってみたり触れてみたりしたことがあるというのならば、認める以外にないだろう。ちょうど飛行機を信じない人に飛行機を見せてみたり飛行機に乗ってもらったりすればいやでも信じられる。飛行機はあるといって胸を張って伝えられる。

 イオニス少年の話を聞いて錬太郎は、額を押さえ更衣室のベンチに座った。ずいぶんとショックを受けたようだった。錬太郎が落ち込んでしまったのは、超能力の話をしたからではない。錬太郎は、もしかしたらという可能性に思い当たってしまったのだ。これは錬太郎が気を失うきっかけになったあの事件である。月から放たれた光があらゆる物をなめとって奪っていったこと。あの事件から錬太郎はいったいどのくらい眠っていたのだろうか。錬太郎はこのように思ったのだ。もしかしたら自分が眠っていた時間というのはとんでもなく長く、自分が眠っている間に世界が変わるようなとんでもない出来事があったのではないか。たとえば、あの月から放たれた光がきっかけになって、超能力などという理解できない技術が発展しただとか。それを考えたとき、錬太郎は自分が別世界にいるということを深く理解して、そして、失われたもののことを嘘ではないことなのだと受け入れるようになっていた。喪失というのが確かになったことで、心の力が失われたのである。

 錬太郎の落ち込む様子を見てイオニス少年の表情が、変わった。やってしまったというような表情になった。イオニス少年は錬太郎の落ち込み具合を見て、錬太郎というのが何かの被害者なのではないかというように考えた。これは錬太郎がイオニス少年に話した目覚めたときにはこの研究所にいたいう話。そして全人類が使えているはずの超能力に対してまったく知らないといったこと。これを組み合わせたときイオニス少年には錬太郎が何かしらの事件に巻き込まれ、そして記憶を操作された被害者に見えたのだ。少なくとも超能力を使えば記憶を操るくらいのことはできると思いつく。そう考えたときイオニス少年は自分が話して聞かせた内容がまずいものだと考えた。錬太郎の心を傷つける行為だったのではないかと思ってしまったのだ。

 イオニス少年は錬太郎に言った。今までのはきはきとした調子ではなく、優しい声だった。

「あの、ごめんね。何も錬太郎のことを知らないのに、おかしいとかいっちゃって」

 錬太郎は頭を振った。錬太郎はイオニス少年に気を使わせてしまったことを察したのである。

 そしてこういった。

「いや、イオニス君は悪くないよ。ごめんね、説明してくれたのに。正直言って、さっぱり何がなんだかわからない。

 記憶喪失とかではないと思ってる、自分ではね。一応覚えていることはある。家族のことだとか、友達のこと、学校のこと。それに最後に見た景色も。でも、超能力なんてものはきいたことがない。少なくともこんなにでかい研究所があるなんてことはきいたこともないよ」

 イオニス少年が錬太郎の肩に手を置いた。慰めのつもりなのだ。こういうときになんて言葉を相手に送ればいいのか、イオニス少年にはわからなかった。

 そしてこういった。

「とりあえず、ここを出よう。そして落ち着いたら病院を探せばいいよ。きっと記憶も戻ってくるよ」

 錬太郎は、イオニス少年にお礼を言った。できるだけ力強くお礼を言った。

「ありがとう」

自分よりもずっと小さな少年に、勇気付けられるとは思わなかったのだ。そして勇気付けられたからにはイオニス少年の言うとおりまず外に出て行かなくてはならないという気持ちになっていた。何せこの建物には怪物がうろついているのだから。いつまでも同じところでうずくまって入られない。このお礼は前向きになれたことへのお礼なのだ。

 錬太郎はそしてこうも言った。

「そういえば、どうしてイオニス君はこんなところに?」

不思議だったのだ。イオニス少年というのはどこからどう見ても子供である。リュックサックを背負っているところを見るとピクニックにでも行くのかなと思うくらいに子供だった。そんなイオニス少年がどうしてこんな怪物がうごめいている研究所に足を運ぶのだろうか。さっぱり錬太郎にはわからなかった。研究所なのだから、勤めている人たちはそれこそ錬太郎よりもはるかに年上のおじさんだとか、おばさんだろうと。

 イオニス少年は答えた。恥ずかしそうだった。

「お父さんとお母さんを迎えにきたんだ。今日は映画を見に行く約束をしていたから。でも、昨日は帰ってこなかった。今日の朝も帰ってこなかった。だから僕が迎えに行くことにした」

 錬太郎は目を見開いた。とても驚いていた。錬太郎にとってイオニス少年というのは小さな子供である。身長は低いし体も細い。そんな小さな子供がこんなところまで一人でやってきたという。それも映画を見るために。驚かずに入られなかった。自分の家で待っているという選択を選ばなかったということにも、あえてここまでくるというその決心も。

 そしてイオニス少年を錬太郎はほめた。

「すごいね。その行動力」

 イオニス少年はうなずいた。うれしさ半分、寂しさ半分といった様子である。それはそのはず、ここまでこなくてはならなかったということが、映画に行くという約束を破られてしまったという、結果であるからだ。できるならこんなことをせずに、家族一緒に映画に言っておきたかったというのが本当なのだ。

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