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わかった

「あらツキ様、珍しいお方をお連れしているのね。趣味が変わったの?そうだと私はもう用済みかしら」


「まさか。いつまでも美しいままの貴方(あなた)に私が捨てられることはあっても逆はございませんよ。それに、まだお見かけしたことはございませんでしたか?彼女はこの間側付きの副官に任命したルネです。こう見えても相当腕がたつ者なんですよ」


「あら、そうだったの。突然側付きにしたから貴女(あなた)が彼女に惚れたのかと思っていたわ。最近全然あなたは私を誘ってくれないし」


「それでしたらとっくに昔に貴女は私の側付きになっていますよ。最近の私は執務室に缶詰めです。仕事が忙しくて。すぐに逃げだそうとする隊長の子守りもしなくてはいけませんし。夜は寂しく一人寝です」


「くすくす。相変わらず上手いことをいうのね。しょうがないわ。この頃つれないのは水に流してあげる。暇になったらまた誘ってちょうだいね?」


「もちろん」


「ふふ、またね」


そう言って去って行った方はさる伯爵夫人。と言っても若い頃に政略結婚で嫁いだあの方は何年も前に夫を亡くした未亡人。若いのにお金も持っている彼女の趣味はもっぱら自分磨きだそうだとか。確かにもう30を超えるというのに、美貌はそこらの若い令嬢方の上をいっています

オマケにナイスバディですし





それにしてもこれで何人目でしょうか

遊び相手は一体何人いるのか聞いてみたいですね

権力もあり、スタイルも顔も良い人が遊んでいるのは当然かもしれませんが

未婚の令嬢に手を出さないだけましとも言えますし


堕天使様は理由は知りませんが大人の女性にしか手を出さないことで有名です

どのような美しい令嬢がせまっても決して落ちないらしいです


「なにか?」


美しい横顔をじっと見ながら考えごとをしていたら、どうやら視線を感じたらしいツキ様がこちらを見下ろしてきました


「いいえ。ただ、いつもと違う服装なので違和感があるだけです」


そう誤魔化しましたかが、見ていた理由の一つに変わりありません

そうなのです

今日の堕天使様は白の生地に金の糸が入った隊服を着ていらっしゃり、黒の髪の毛がとてもはえていてまさに、物語に出できそうな神のごとくの雰囲気がただよっています


先ほどから見つめすぎた何人もの令嬢がクラリと目眩をおこすほど


仕事を交えないと鬼畜さもなりを潜め、柔らかい微笑みと丁寧な所作で貴族の子女たちに話しかけていくので時間がたつにつれて、彼に見惚れるものがじょじょに増えていくさま



見ていてとても面白いです、はい


その分、隣にいる私へのキツイ視線も増えていくのですが、仕事でここにいるだけですし、嫉妬なんて可愛い視線に気後れするほどヤワではありませんから

見事にスルーさせていただいてます


先ほどのように直接嫌味をいう人もいらっしゃりますが、そこは下手に出てやり過ごします


笑顔を全く見せず、嬉しそうにもせず、ほとんど話もしないでただ傍に立っているだけの私にだんだんと周りも仕事でここにいるんだと理解してくる人もいるようで


思っていたほど被害が無くて助かります


それにしても…


「正式な正装をみるのは始めてかな。どう、似合ってる?」


なんておっしゃっている堕天使様はその多数の目線を全く気にしていません


もう慣れっこなのでしょう



「多くの方の目線を奪っていらっしゃいますし、似合っているのではないでしょうか」


「ぷ、なにそれ。君自身の感想はないの?」


「はい?」


「ずっと見ていたのは君も私に見惚れてくれたからかい?」


クスクスと楽しそうに笑っている堕天使様がよくわからずも、どうやら私の感想を聞きたいそうなので素直に言ってみることにします


「確かに普段と違うのですが、ここまで見惚れるほどなのかと疑問に思っていました。副隊長は笑っているよりも仕事をしている時の真剣な目の方がかっこいいと思いますけど」


なんてたって、堕天使様の微笑みにはなにかありそうな気がして居心地が悪くなりますし

私的には真顔の時の堕天使様は人間らしさがあって落ち着きます


「…そう」


フイと顔をこちらから背けて手で抑える堕天使様


なにか変なことをいったのでしょうか?


先ほど言った言葉を反芻していた時





それは起こりました



ドガアアアアアアアアアアアアアアアン!



とてつもなく大きな音と共に庭につながる方の窓がいっせいに割れて変なお面をつけた集団が侵入してきました


「きゃああああ!」


「な、なんだね、君達は!」


「我々は狼の牙(ファングオブウルフ)だ!大人しくーーぐっ!」


最後までセリフを言えずに声を張り上げていた男は吹っ飛んでいきました


私が勢いをつけて床を蹴り、一息で懐に潜り込んで回し蹴りを放ったからです


侵入者に流れを掴ませないためにはさっさと戦闘に持ち込んだほうが早いですし、この国の技術を漏洩(ろうえい)するわけにもいかないので結局潰すのなら今やった方がいいですから



そんなことで先制をうったのですが、思った以上に男は吹っ飛んでいきそのまま壁に衝突して気を失いました

音からすると骨が何本か折れたようです


弱すぎですね


「…?」


何かが琴線にひっかかりましたが戦闘が始まったので取り合えず目の前の相手を潰していくことにします



結構な人数が入り込んでいたみたいで一対四くらいの配分ですが、さすがこの国の隊士たち


あっという間に制圧していきます


そう、見事と言えるくらいに早く…


「ああ、なるほど」


琴線にひっかかった理由がわかった私は広間を飛び出しました




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