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よくわからない

見目麗(みめうるわ)しい人の考えていることはわからないですね…









あれから、誓約書とか他にも諸々サインさせられ(したではなく、させられた(・・・・・)、です)

これからのことを細かく決められた(反論は一切言えませんでした)私は、

決め事の一つ、引越しを慌ててさせられました


下っ(したっぱ)メイドにあてられた四人部屋から、移動を命じられた部屋は



なんと、堕天使様のお部屋の続きの間でした


堕天使様のお部屋は寝室とリビングでできており、この部屋はリビングと中で行き来できるようになっています

現在堕天使様の側付きはなぜかいないために私がこの部屋に移動するはめになってしまったのです



荷物は少ないのでそれほど手間ではなかったのですが、その少ない荷物を引っ越しの手伝いを申し出てくれた堕天使様は(拒否しましたが、笑顔で言いくるめられました)紳士に荷物を持ってくださったのですが、なんでただのメイドが荷物を持たせてんの?!

と、まわりに凄い目で見られました…



自分で持つと言い張ったのに、持たせてくれなかったんですよ

断じて私が持たせたわけではありません



しかも時折、こちらを見て優しく微笑まれるので(堕天使様の微笑みはもはや私には恐怖です)そのたびに生気が吸われている気分になり





引越しが終わった時点で私はすでにフラフラでした




けれども明日からの地獄を思うとそのまま寝るわけにもいかず、食堂でご飯を無理矢理つめこみ、お風呂に入り、ホッと落ち着きようやく寝ようとしたところでハタと思いあたりました



どう見ても怪しい人間を自分の側付きにするって、おかしいですよね?

寝首をかかれたいと宣言してるようなものじゃありませんか?


尋問の前にスパイなの?とかも聞かれなかったですし…


え、国を守る軍のお偉いさんですよね?堕天使様

そんなでいいのでしょうか?

この国の将来は大丈夫でしょうか



それに、普通の隊士飛び越えていきなり側付きなんかにされた私のやっかみがすごそうなんですが

今日だけでも、堕天使様の続きの部屋に移動すると知った同僚からもの凄い目で見られましたし

堕天使様は誰もが憧れる美貌だけでなく、強い魔法が使える立派な魔法士でもあります

そんな彼に憧れる人なんてあとをたたない…







本気で明日が怖くなってきました


特に女の嫉妬が怖いです


もしやそれを狙って私が自ら辞めるように促しているのでしょうか?

いいえ、まわりくどすぎますね

では、一体何の目的があんなことをしたのでしょうか?









…堕天使様の考えていることがまったくわかりません



人ならざる美貌をもつものは人ならざる考えをもっているのでしょうか


堕天使様の前にもそういう方を何人か見てきましたし

きっとそうなのでしょう


だったら、平凡な私にそのお考えがわかるはずもありませんね


考えるだけ無駄というものでしょう

ならば、明日に備えてもう寝ることにしましょう




お休みなさい






















ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ



小さな女の子が必死に森の中を走っている


けれども小さな足がもつれて転んでしまった



「いたぞ!あそこだ!捕まえろ!」


ハッと後ろを振り返ったその女の子は慌てて立ち上がるとさっきよりもさらに必死に足を動かし始める



木々の間を走っている女の子の全身のあちこちに擦り傷や切り傷が出来ている








ーーーあの女の子は私


母のおかげで逃げられた私は一生懸命走っていた



泣きながら


わけもわからず


どうしていいかわからず


逃げて!


その言葉に従ってただ逃げていた








ねえ、いつまで走ればいいの?



どこまで逃げればいいの?



待っている人も、会いたい人も


もう、誰もいないのに












どうして私だけが生き残ったの?





















「っは、は、は、は、は」


ガハリと起き上がり、慌てて辺りを見回してみると、

そこは昨日移動した部屋でした

しばらく呆然としていますが、状況がわかってくると思わずため息が出ました


「夢、ですか。………なんで」




「ずいぶん(うな)されていたいたね。大丈夫かい?」


その声にベットの後にある扉を慌てて振り返ります

そこにいらっしゃったのは、堕天使様でした


扉を少し開けて顔出してこちらを見ています


多分、(うな)され声が聞こえてしまったのでしょう


隣は堕天使様のお部屋ですから(ちなみに堕天使様の寝室はリビングの反対側の隣です)


まだ朝日が昇ってもいないのにもう起きてていらっしゃったのですね

さすが、


「あ、すみません、だて、ええと副隊長よりも長く寝ているなんて側付き失格ですね。今すぐ仕度をします」


結構な状況に気付き、ベットをおりて深く謝罪します


「ああ、ゆっくりしてて大丈夫だよ。まだ始業時間にはほど遠いから。ゆっくり仕度しておいで」


うう、神々(こうごう)しいまでの微笑みです

けれども昨日の件でその微笑みの裏になにかありそうな気がするのは気のせいでしょうか

気のせいと思いたいです




無言で黙り続ける私を不思議に思ったのか

ん?と首を傾げる姿がとても様になっています


「いえ、なんでもありません。副隊長がお仕事をしているのに、部下がゆっくりしているわけにはいきませんし、急いで仕度します」




頑固(がんこ)だね。でもご飯はきちんと食べておいで」


クスリと笑って、頭を引っ込めて戻っていき、閉められた扉をみながら、私はいくつに堕天使様には見えているのか不思議になりました





優しさなのか、子供に見られているのか、どちらでしょう
















堕天使様はよくわかりません

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