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噂は意外に控えめ

「じゃあ頼むよ。あ、これも。これもいけそうだね。うん、これも行けるね」


ぱっぱ、ぱっぱと書類に判子(はんこ)を押し、なにかを書きつけ、行き先ごとにわけて置いてあった書類をどんどん私の手の上においていかれる堕天使様


結局、自分の目線と同じくらいまで重ねられました

初日から鬼畜すぎやしませんか

ちなみに行き先は全て口頭でしか伝えられていませんし、聞き返せる雰囲気でもありません

そして、この行き先というのがこの王宮の端から端までで、あちこちに行くことになりそうです


「半刻ほどで戻ってきてね。次の仕事あるから。それと、財務への書類は返事もらってきてね。それまでは戻ってこなくていいから」







矛盾してやいませんか

なぜ、返事をもらってくるまで帰ってこなくていいと言いながら、制限時間があるのでしょうか

どう考えてもおかしいですよね


「時間がどんどんすぎてってるよ。モタモタしてていいの?」



え、もうカウント始まってるのですか

ちょっとの考え事すらも命とりなのですね

間に合わなかっときになにが起こるのでしょうか






…………、急ぎましょう








書類を崩さないように、けれどもなるべく早歩きで進みます


これで書類は全て届け終わりましたが、持っていくよう頼まれた書類の分、増えているのでまだ油断はできません


「失礼します」


扉をノックし、返事があったので入ります


ここは財務室です

返事をもらうのはここですよね


「財務室長はいらっしゃいますか」


「ああ、あっちにいるよ。そのまま奥まで進んで」


「ありがとうございます」


教えてもらったままに進むと中年のおじさんがいらっしゃいました


「財務室長様。ゾルデ副隊長からの書類を持ってきました。返事をすぐ書いてほしいとのことですので、お忙しいとは思いますがお願いいたします」


「ああ、これか…。ええと、いや、今は手が離せないんだ。後にしてくれ」


忙しいですよね。書類がたいぶ積み重なっていますし


ですが、私のためにも返事を書いてもらいましょう


「誠に申し訳ありませんが、貰うまで帰ってくるなと言われておりますので、お願いいたします」


「…帰ってくれ。第一、これ以上そちらにまわせるお金がないんだ」


なるほど

帰ってくるな、は予算をもぎ取ってくるまで帰ってくるなということですか

頑固そうなおじさんですし、難しそうです

けれども、制限時間がありますし

仕方ありません



「そういえば、私、最近ある場所で室長様をお見かけしました」


「ん?」


「三日前、東のお庭で、メイドの」


「今すぐ書くから待っていてくれ!」


ありがとうございます

その代わりこれ以上は語るのはやめておきましょう

捜査の報告のために城のあちこちに目を光らせておいて良かったです

危機を免れました


「ほら、これでいいだろう!だから、さっさと出てってくれ!」


「ありがとうございます。これで失礼します」


どんなに嫌がられても、綺麗にお辞儀をしてから退出です

あ、もう結構時間がたっています

急ぎましょう


















「つかれました…」


部屋に戻った私は倒れこむようにソファに横になりました


あれからもあちこちに使いっ走りをされられたのはまだよかったのですが、


ここの計算はできるかと言われ、思わずはいと頷いた次の瞬間渡された資料の多いこと…


しかもやはり制限時間付きです。さすがに無理だと思った私が、「む」と口を開いた瞬間、笑顔で、なにか?と、聞かれました

背後に例のドロドロを背負って





はい

もうスピードで割り当てられた机について仕事を始めました


しかも堕天使様の凄いところは自分も凄い量の仕事をさばきながらもこちらの仕事の進み具合をきちんと見ているところです


私はだから、さらに必死になりましたとも

時々感じる視線が圧迫感に感じられて…

自分でもビックリするぐらい、早く進みました


それを見てさらに笑みを深くする堕天使様














恐っ



正直いって同じ部屋にいたほうが疲れました

使いっ走りの方がまだましでした

こちらも制限時間はありましたが、常にプレッシャーを感じることはありませんでしたから


堕天使様と二人っきりなんて誰もがピンクの意味でドキドキなのに、私は別の意味でずっとどきどきでしたよ



冷酷非道とは聞きましたが、

鬼畜とは聞いたことがなかったですね

噂の方が控えめです






それにしても

こんなんでこれからやっていけるのでしょうか





ああ、ダメです、こんなところで寝ちゃいけないのに、でも…もう、無理………ぐぅ

























ガチャリ




ん…誰か部屋に入ってきている…


誰、でしょうか…?


このまま…寝たフリをして…

様子を、見ましょう…




って、これ、堕天使様の…気配…


…なんだろ、…人がいる時は…もっと頭が、覚醒する、はず…なのに…


眠気(ねむけ)が…なかなか、さりません…



なんで、でしょう…


堕天使様、が、優しそうな…雰囲気、だから…かしら…





ふわっ




あれ…抱えられ…てる…?


そういえば…ソファの上で…寝落ち、したんですっけ…





とさっ



やはり、ベットに

運んでくれたん




サラリ






「お休み」



キィ



バタン





















いま、耳元で囁きましたよね

サラリと頭を撫でましたよね


鬼畜なのにここぞで優しいなんて反則です

普通の人は一発でノックアウトですよ
















堕天使様は噂以上に濃いお(ひと)です


堕天使様が部屋を覗いたり勝手に部屋に入ることはスルーなルーネちゃん笑

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