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なんだか温かい。安心する。
幼い頃、母に抱き締められて眠っていたような…
人の体温てどうしてこんなに安心するんだろう…
………………………
ん?体温?
あれ?
目を開けると、目の前に高宮さんの寝顔。
驚いて起きようとしても、身動きが出来ない…
しっかり抱き締められている。
えっと、落ち着け私。
まずここは私の家じゃない。すると高宮さんの家?
昨日…そう昨日飲み会で、ちょっとしんどかったから一次会で帰りたかったのに、部長の誘いを断りきれず二次会行って…眠気MAXで同じ方面らしい高宮さんとタクシー乗って…
そこから記憶にない。
遂にやってしまった…寝落ち…
「んっ…」
あ、起きたかな?高宮さん…
「ん…おはよう…宮野さん…もうちょっとこのまま…」
そう言ってさらに抱き寄せられる…
温かい…何故か安心する…
高宮さんは5歳上の今年30の営業マン。独身。凄くイイ人めちゃくちゃモテる。
そんな人の家に泊まった挙げ句同じベッドで寝ました。とか…誰にも言えないわ!このことは墓まで持って行かなきゃ!
じゃなくて!
「ちょっ、高宮さん!起きて下さい!ていうかすみません…泊めて頂いたようで…」
「まぁ、俺としてはラッキーだったんだけどね。タクシー乗った瞬間に寝ちゃうから。お持ち帰りしちゃった。さすがに寝てる子襲うほど、落ちぶれてないから安心して。」
「すみません…」
「自覚ないだろうけど、宮野さん狙ってる奴結構いるんだよね。今まで何人の男と一緒にタクシーで帰った?」
「………」
「でも君は絶対に寝落ちしない。しっかり運転手に道案して最寄り駅で降りて帰る。そんな君が昨日はタクシー乗った瞬間に寝ちゃうから。ついね。お持ち帰りしちゃった」
「すみません。ありがとうございました。あの…そろそろ放してくださいませんか?」
さっきから抱き締められたまま、頭上で言われている
「嫌って言ったら?」
「冗談は止してください」
「宮野さんは誰とも付き合う気ないってホント?」
「…………はい」
「じゃあ、俺のことは嫌い?」
「…………嫌いじゃありません」
むしろ、この状況で何故か安心する自分に驚いてる
「じゃあ、付き合おう」
「は?」
私は咄嗟に上を向いてしまった
「俺のこと、嫌いじゃないんでしょう?じゃあ絶対好きにさせてみせるから。それまでは手を出さない。約束する。でもたまに抱き締めさせてくれたら嬉しい。だから、ね?」
「いや、あのっ!」
「よし!じゃあ今日は俺も久々に休日出勤なしだし、映画でもいく?」
「ちょっと、あのっ!」
高宮さんは急に起き出して、準備をしだす
「はい。これ、タオル。お風呂はここ
。準備しておいで」
そう言ってお風呂場に入れられて。扉がしめられた。
そんな驚くほど強引な彼との付き合いが始まった。