魔法の島の戦い
頑丈に白い石が組まれた宮殿の広間の白壁に窓から朝陽の光が差しこみ、アーチ状の輝かんばかりの白い光の模様をいくつも描き出していた。まるで空を突くかのように高い天井から垂れ下がった天幕が、ゆらゆらとゆれている。そこには、二人の男が立っていた。一人は、茶色い鬚を生やした静かな表情をたたえた男で、淡い青色の大きなマントを羽織っている。もう一人は、その男にむかって膝をついていて、精悍そうな相貌の若い男である。
「リディルス、決戦のときは近いな」
小鳥のさえずりだけが静けさを支配する広間に、穏やかな声が響いた。
「はっ、数百年にわたる戦いは、ようやく幕を閉じます」
リディルスと呼ばれた若い男が、言った。
「長く、また不幸な戦いだった」
茶色い鬚の男が、つぶやくようにして言う。
「正義の灯火は、いつも闇のなかで灯るものです」
リディルスが、膝をついたまま、静かに言った。
「そうだったな」
茶色い鬚の男は、腰の銀色の長剣に手をかけつつ、ゆっくりと大理石の広間の床を歩きはじめた。
「のう、リディルスよ。小鳥のさえずりとは良いものだな」
茶色い鬚の男の言葉に、リディルスは困惑した様子で無言でいた。
「張り詰めた空気のなかにいる私たちの心を、すこしの間とはいえ、解き放ってくれる」
茶色い鬚の男はそう言うと、木製の高い扉の前に立った。その扉はまるでその男の心の内を読んだかのように、ゆっくりと音も立てずに静かに開き、その男は青色のマントをゆらめかせつつ、その広間からゆっくりとでていった。