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聖地の隙間風

かつて私が感銘を受けた、ある酒場を舞台にした漫画がある。そこには酒への深い造詣と、人間模様を鮮やかに切り取る洒脱な世界が広がっていた。ページを捲るたびに、重厚なカウンター越しに差し出される一杯のグラスに、人生の機微を感じ取ったものだ。

 だが、時として「作品」という結晶の美しさと、それを生み出した「作家」という人間の輪郭が、必ずしも一致しないという事実に直面することがある。私たちが愛した物語の裏側で、生身の人間としての作者が振るう振る舞いや、その人間性に失望を覚える瞬間。それは、憧れていた酒場の扉を開けたら、想像とは違う隙間風が吹いていたような寂しさに似ている。


漫画のモデルと呼ばれた店に当時通っていた。とても落ち着いて居心地の良い店で、マスターの酒への深い知識を肴に楽しんでいた。

ある時、何やら取り巻きを連れた客がきて、マスターと大声ではなしを始めた。

ゴルフの話を周りに振って笑っている。


「勘弁してくれよ、ここは静かに呑む所だぜ」と内心思っていると、他にも居た客に一杯奢ると言い出した。

「うわ、まんまべからずじやないか」と漫画の常連さんのマナー論を思い出した。

言わば聖地みたいなこの店でそんな風に振る舞うとは。

ニッコリ笑って「ありがとうございます。でも今夜はぼちぼち失礼しようと思ってますので」と断った。流れでマスターにお会計をお願いして支払いしている時に、「常連さんですか?」と尋ねると「先生です」

と返事。首をひねると「あの漫画の先生ですよ」と。


 作品と作家の人としての輪郭が、必ずしも一致しないのは当たり前だ。ポップな絵を描いてるからポップな画家とは限らないし、重厚な曲を作曲するから重厚な作曲家とは限らない。

 でも、それでもどこかオーバーラップしている部分があって欲しかった。勝手な言い分であることはわかっているが、それぐらいあの漫画の世界が好きだったんだ。

 

 現在も本棚にはあの漫画が並んでいるが、以降一度もあの店に行ってはいない。

先日某YouTuberさんにお会いしてお話ししましたが、まんま動画の人物像と一致していたので思い出しました。人それぞれですね。

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