第8話 買い物帰りにて
「ワウワウ」
「ん?」
店を出たところでモコに裾を引っぱられた。視線の先には、家庭菜園用の種コーナーが並んでいる。ホームセンターは農業関連の品ぞろえも豊富で、肥料や農具を買っている人の姿もちらほら見えた。
「これを植えると野菜が育つんだぞ」
「ワウ!」
モコは目をきらきらさせて頷く。ほんと賢い子だ。
「ワウワウ!」
「え? それが欲しいのか? う~ん……」
ねだられたが少し迷う。勝手に山で作物を育てるわけにもいかないし――。
「クゥ~ン……」
甘えた声と潤んだ目。……まあ、そんなに高いものでもないし、あとで山のオーナーに会えたら相談すればいいか。
「じゃあ、これとこれと……」
モコが選んだ種と、菜園用の基本セットを購入。リュックがパンパンになったので小さなリュックを追加で買い、モコにも背負わせた。
「さて。荷物が多くなったけど後一つスーパーによって食料と飲み物買っていかないとな」
「ワウ! ワウワウ♪」
食料と聞いてモコが目を輝かせ嬉しそうに声を上げた。しかしモコは元気だな。
そして、俺達はホームセンターを離れ、スーパーへ向かおうと足を進めたのだが、その途中で背後から声がかかった。
「ねえ、あんた。もしかして冒険者かい?」
振り返ると、三人の男が近づいてくる。金髪ホスト風、スキンヘッドにサングラス、そしてモヒカン刈りの小柄な男。普段なら絶対に関わりたくないタイプだ。
「えっと、俺に何か?」
「質問の答えになってねぇだろ。冒険者か? って聞いてんだ」
スキンヘッドが凄むような声で迫る。どこか脅しめいている。
冒険者――ジョブストーンでジョブを得た者は、国の管轄する冒険者ギルドに登録しなければならない。ジョブによっては常人をはるかに超える力を持つため、管理が必要なのだ。公園で会った鬼姫もその一人だった。
だが俺はジョブストーンを持っていない。モコは自分の意思でついて来ているだけだ。
「見ず知らずの人に答える義理はないだろ? それじゃ」
答える義務はない。警察の職務質問でもないのだし――そう思い離れようとしたが、
「何だこいつ、生意気だな」
「おい、勝手に行かせねぇぞ」
三人が行く手をふさぐように回り込んできた。厄介だな……。
「モンスターを連れ歩いてる時点で冒険者なのは間違いねぇだろ? しかもさっき、ずいぶん買い物してたみたいじゃねえか。羽振りがいいようだな。――だからよ、ここは同業者のよしみで、少し金を分けてくれないか?」
「……は?」