第55話 風間夫妻?
「確か前に会った時にそのモコって子は一緒だったよな? 一体どういう事だい?」
「いや、それは、ははッ……」
不味い。やっぱりそこをツッコまれてしまった。どうしよう――ギルドマスターみたいに本当のことを話すか? いや流石に不味い。
それで問題にされたら、俺たちの為に融通を利かせてくれたマスターにも迷惑をかけることになってしまう。
「その時から仮登録だったんですよ!」
俺が悩んでいると秋月が鬼姫に答えてくれた。
「つまり公園で会った時はまだ仮登録だったってことかい」
「は、はい。私も風間さんから聞いたのですが、その時は前職の後処理などがあって中々本登録まで進めなかったって。そうですよね風間さん!」
そこまで話して秋月が俺に目配せしてきた。話を合わせてということか、なるほど!
「そ、そうなんですよ。実は仕事も辞めることになって、そのタイミングでジョブストーンを手に入れたりモコをテイムしたりだったので、あはは――」
なんとか話を合わせて答えると鬼姫が顎に手をやり考える仕草。た、頼むからこれ以上ツッコんで聞いてこないでくれよ。
「――ま、いいか。別に誰に迷惑を掛けているわけでもないからね。だけど仮登録の状態で正規の冒険者を二人相手出来るなんてね」
「も、もしかして不味かったですか?」
「クゥ~ン」
「ピキィ~……」
とりあえず仮登録ということで話は済みそうだが、今度は冒険者二人を相手したことに問題があるのかと不安になった。モコとラムも心配そうにしているし。
「それは問題ないさ。こいつらから仕掛けてきたことだろうからね。正当防衛で済む。あたしが驚いているのは仮登録の身でこいつらを倒せたってことさ。いくら皆の協力があったとは言えね」
あ、そういうことね。
「風間さんは凄かったんですよ。結局私も助けられたし。勿論モコちゃんとラムちゃんも頑張ってましたけどね!」
「ほう。お前ら凄いんだなぁ。根性ある奴は好きだぜ」
「ワン♪」
「ピキュ~♪」
秋月に褒められ、鬼姫にも撫でられたことでモコもラムもご満悦である。
「――流石風間の名を持つ者……」
ふとそんなことを竹取が言った。何かジッと俺を見ている。
「風間の名、ですか?」
「ワン?」
「ピキィ?」
これに反応したのは秋月だった。参ったな、モコとラムも興味を持ってしまったぞ。
「風間という名字はあの風間夫妻と一緒。強き者の証明」
「あ~あ、また始まったねぇ~奥菜の風間推し」
「奥菜は風間夫妻を崇拝しているからね」
竹取の様子に蓬莱と十五夜が呆れたように言った。
「えっと、その風間夫妻というのは?」
秋月が聞いた。
「あぁ。夫婦で冒険者をしている二人でね。しかも夫婦揃ってS級になった上、世界での活動を認められた実力者ってことで一目おかれてるのさ」
「へぇ何だか凄そうですね。しかも風間さんと名字が一緒だなんて」
「そ、そうだね。そんな偶然もあるんだなぁ~あはは――」
とりあえず話を合わせておいた。しかしそんなに有名だったのかよ。
「風間、その名に恥じないように頑張る」
「あ、はい、頑張ります――」
俺の肩をポンッと叩き竹姫が言った。それになんとも言えない気持ちになったけど、とりあえず無難に答えておいた。
「さて、それじゃあそろそろこいつらを連れていかないとね」
「あ、あの! 一ついいですか!」
鬼姫たちが話をまとめ始めた時、秋月が鬼姫にむけて声を上げた。
「何だい?」
「あの、そこに倒れている人たちの件で、持っているジョブストーンはどうなってしまうんですか?」
秋月が鬼姫に問いかけた。言われてみればこいつらは明らかにギルドの規定に違反しているわけだしな。ジョブストーンをそのまま所持できるとは思えない。
「あぁ、それなら間違いなく没収だな。冒険者の資格も剥奪されるだろうさ。PK行為も事実なら冒険者用の収容所に入れられて暫く出てこれないと思うぜ」
そうなのか。勿論何かしら罪に問われるとは思ったが、冒険者ともなると刑務所とはまた別な場所に入れられてしまうんだな。
「あの、それならジョブストーンを譲ってもらうことって出来ますか?」
「え? 山守さんあれ欲しいの?」
「ピキィ?」
「ワオン?」
思わず会話に割り込んで聞いてしまった。何せジョブストーンが欲しいということは冒険者になりたいと言っているようなものだからな。
「うん。それにあの近藤という人が持っていた格闘家のジョブストーンなら使いこなせそうかなって」
控えめな笑みを浮かべながら秋月が答えた。そうか、確かにそれなら秋月が使えば十全に力を発揮できる気がする。
「格闘家のジョブストーンが使いこなせるって、何か心得があるのかい?」
鬼姫が質問した。秋月は一見すると強そうに見えないからな。
「彼女は凄いんだ。山守流柔術という流派の使い手で金沢って冒険者とも渡り合っていたからな」
「何だって! あの山守流か! 驚いたね。確かに名字が一緒とは思ったけどね」
鬼姫が驚いていた。ということは山守流を知っているんだな。そういえば楓が冒険者も習いに来ると言っていたっけ。
「へぇ~貴方強いんだね~」
「あはは、まぁ護身用程度には」
蓬莱に聞かれ照れくさそうに笑って返す秋月。あれは護身用というには十分過ぎる腕前だと思うけどな。
「そうかい。う~ん出来れば叶えて上げたいけどねぇ。回収後のジョブストーンの扱いはギルドの管轄だからあたしからは何とも言えないのさ」
「そ、そうですよね。ごめんなさい」
「そんなしょげるなって。あたしからは決められないけど、そういう希望があったことは伝えておくよ。上手く行けば弁償代の一つとしてくれるかもしれないからねぇ。まぁ保証は出来ないけどさ」
「は、はい! 宜しくお願いします!」
こうして話はまとまった。鬼輝夜の面々は倒れている連中を運んで行くようだが一つ問題があるようで。
「冒険者やってたこいつらはどうでもいいんだが、こっちの四人は流石に適当ってわけにはいかないんだよねぇ」
「あ、それなら私の車に乗せて行きましょうか? 五人乗りなので入ると思います」
「いや、流石にそれは危険だろう」
「それなら~私も秋ちゃんの車に同乗するよ~代わりに一人はバイクの後ろに括り付けてけばいいよね?」
「あ、秋ちゃん?」
「駄目~?」
「い、いえ! 大丈夫です!」
蓬莱の呼び方に最初は戸惑っていたけど秋月もすぐ馴染んだようだ。
「それなら大丈夫かな。だけどこいつらが暴れたら」
「わかってま~す。任せてちょ♪」
鬼姫に対して蓬莱がウィンクしながら答えた。だけどちょっと気になるんだが。
「あの子、戦えるのかい?」
「――問題ない。あぁ見えて腕は立つ」
俺の疑問には竹取が答えてくれた。そうなんだな――人は見かけによらないってわけか。
その後、俺たちは見送る為、一旦ダンジョンの外に出た。
「それじゃあ風間さんゆっくり休んでくださいね」
「仮登録ってことは講習があるんだろう? 頑張ってな」
「はい。ありがとうございます。山守さんも気をつけて」
「大丈夫だよ~私がいるからね~♪」
こうして鬼神楽の四人と山守は去っていった。ちなみに近藤を含めた五人組は縄で縛られた後バイクに繋がれ引き摺られながら去っていった。扱いが雑! 暫くして男たちの悲鳴がこだましてきた。
「――ダンジョンに入るか」
「ワン」
「ピキィ」
そして俺たちはダンジョン内に戻った――




