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親友に裏切られ婚約者をとられ仕事も住む家も失った俺、自暴自棄になり放置されたダンジョンで暮らしてみたら可愛らしいモンスターと快適な暮らしが待ってました  作者: 空地 大乃
第二章 冒険者登録編

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第30話 注射が苦手?

「そ、そうなんですよ。本当こうやって改めてステータスを確認すると喜びも一入で。ははは!」


 俺は苦しいながらも何とかごまかそうと必死だった。


「そ、そう。まぁ別にいいけどね」


 どうやら立川さんも納得はしてくれたらしい。ふぅ、よかった。俺は書かれていたステータスを思い出す。そういえば使役者の名前がしっかり俺になっていたな。名前も俺がつけたままだった。


 よく考えると不思議だけど、モコとラムに懐かれたからなのだろうか。


 どちらにしてもそのおかげで助かったな。そこに名前があったからこそ、そこまで追求されなかったわけだろうし。


「次に採血と体液採取。注射器を使うわよ」


 そんなことを考えていると、立川さんが金属トレーから長い注射器を取り上げ、ラムとモコに近づいたのだが――


「クゥゥ~ンっ!?」

「ピ、ピキィィ~~!!」


 モコは尻尾を股に挟み、ラムはゼリー状の身体をひゅっと細く縮めて俺の足の裏にへばりつく。二匹そろってガタガタ震え、耳とプルンッとした体をペタッと寝かせる姿は、見ているこっちまで切なくなるほどの怯えぶりだ。


「そこまで怖がらなくても、ちょっとチクッとするだけよ」


 立川が苦笑しつつ針を構えるが、モコは涙目で「くぅ~~」と鼻を鳴らし、ラムはプルプル震え過ぎて肩乗りスライムから“肩マラカス”状態になっている。肩の上で小刻みに震えるせいで、俺の頭も貧乏ゆすりみたいに揺れてしまった。


「えっと先生……どうしても、ですよね?」

「当然よ。健康証明がないと街中に連れて歩けなくなるわ。大丈夫、ちょっとチクッとするだけだし、1秒で終わるわ」


 ぐうの音も出ない正論。俺はしゃがみ込み、二匹の視線を合わせる高さまで降りた。


「モコ、ラム。怖いのはわかる。でもこれが終われば安心して外にも行けるんだ。俺がついてる。頑張ろう」


 そっとモコの前足を握り、もう片方の手でラムの頭を撫でてあげると、モコは目をぎゅっと閉じ、ラムはぷるぷるしながらも小さく頷いた――気がする。


「ワ……ワン!」

「ピキッ!」


 覚悟の鳴き声。立川が素早く針を刺し、わずか数秒で終了。


「はい、おしまい」


 モコはぽかんと目を開け、ラムも「もう終わり?」と言わんばかりに揺れる。立川さんの腕も良いのだと思うが、本当に一瞬の体感だったらしい。


「えらかったぞ!」


 俺と秋月でモコとラムを愛情たっぷりに撫でると、二匹は尻尾と身体をめいっぱい振って喜びを表現する。


「これで検査は完了。結果は分かり次第送るわね」


 立川が事務的にまとめながらも、名残惜しそうに二匹を見つめる。


「……あの、少しだけ撫でてもいい?」

「モコとラムが嫌じゃなければ」

「ワン!」

「ピキキィ~♪」


 了承の鳴き声を聞いた立川は、目尻を下げて頬をほころばせる。モコのふわふわとラムのひんやりぷにぷにを交互に撫でては「はぁ~癒やされる」ととろけていた。


「ありがとう。いい気分転換になったわ。業務に戻らなきゃね」


 満足げに笑う立川に頭を下げ、俺たちは検査室を退出。廊下を曲がったところで、前方から長い黒髪の少女が歩いてくる。見覚えのある和装姿――


「貴方、ホームセンターで会ったわよね?」


 彼女――天野川 雫が柔らかな声を掛けてきた。

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