第29話 検査を受けてみた
俺たちは香川さんに言われたとおり二階へ行き、採血を受けた。そのあとは〈簡単な〉体力測定──のはずが、思った以上に盛りだくさん。身長・体重を量る程度かと思いきや、握力計やランニングマシンでの持久走、パンチングマシン、さらにはモグラ叩きのような反射テストまでやらされる羽目になった。
「つ、疲れた……」
「お疲れさま」
「ワン！」
「ピキ～」
ヘトヘトな俺を見て秋月がねぎらい、モコとラムも励ますように鳴く。
「うん、モコとラムのおかげで元気が出たぞ」
頭を撫でると、二匹は気持ちよさそうに目を細める。
「ワフ～ン♪」
「ピキィ～♪」
本当に癒やし効果抜群だ。
「いよいよ次はモコとラムの番ですね」
「そうだな、検査と鑑定を受けないと」
「クゥ～ン……」
「ピキィ～……」
不安げに鳴く二匹を連れてモンスター用検査室へ。白衣にメガネ姿の女性──名札には〈立川〉とある──が迎えてくれた。
「よろしくお願いします」
「任せて。あらあら、ずいぶん可愛らしいモンスターね」
どうやら子どものモンスターは珍しいらしい。
「まずは鑑定をするわね」
立川さんが魔導端末を翳すと淡い光がモコとラムを包み、すぐに結果が表示された。
「特に問題なし。人に危害を加えた形跡もないわ」
「ワン！」
「ピキィ！」
二匹が胸を張るように鳴く。やっぱり犯罪級に可愛いだけあって、危険性ゼロだ。
「次にステータスね。……ふむ、今はまだ低いけれど成長力が高いわね」
「あの、その鑑定結果って僕も確認できますか？」
「え？ 使役者なら自分でも見られるでしょう？ まあ、念の為に書類を出すから目を通しておいて」
危うくボロを出しかけたが、立川さんは気にも留めず用紙を手渡してくれた。秋月も興味津々で覗き込む。
――――――――――――――
【鑑定結果：モコ】
モンスター種：コボルト
ネーム：モコ
使役者：風間 晴彦
レベル：1
戦闘力：E＋
魔法力：E
信仰力：E
生産力：E
成長力：A＋
特性：好奇心旺盛／学習／根性
スキル：初級格闘術
【鑑定結果：ラム】
モンスター種：スライム
ネーム：ラム
使役者：風間 晴彦
レベル：1
戦闘力：E
魔法力：D
信仰力：E
生産力：D
成長力：B＋
特性：溜水／給水
スキル：水鉄砲
――――――――――――――
「おお、二匹とも特性とスキルがついてる！」
「すごい！」
「ワオン！」
「ピキィ！」
秋月にも褒められて二匹とも嬉しそうだな。成長力は特にモコがＡ＋と高い。将来が楽しみだ。
「えっと、一応ステータスは認識していたのよね？」
立川が首をかしげる。鑑定結果に舞い上がって、うっかり設定を忘れていたのはここだけの話だ。
