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親友に裏切られ婚約者をとられ仕事も住む家も失った俺、自暴自棄になり放置されたダンジョンで暮らしてみたら可愛らしいモンスターと快適な暮らしが待ってました  作者: 空地 大乃
第二章 冒険者登録編

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第20話 山の管理者

いつも感想や誤字脱字報告を頂きありがとうございます!

 突然の来訪者に驚き、俺は必死に両手を広げた。


「その……勝手にダンジョンを使っていたのは謝る。でも、泥棒目的じゃないんだ。ここで静かに暮らしていただけで――」

「く、口では何とでも言えます!」


 セーラー風ブラウス姿の女性――秋月は、つい先ほどまでの可憐な表情を一変させ、険しい目で俺たちを睨みつけた。


「ここには、片付けても片付けてもゴミを捨てて行く人がいるんです。洞窟の壁に落書きまでして……。あなたも、同じタイプの“迷惑キャンパー”かと思ったんですから!」


 確かに入口付近は張り紙や空き缶、焚き火の燃えかすで荒れていた。俺が初めて来た日ですら、壁面には罵詈雑言が刻まれていたくらいだ。警戒するのも無理はなかった。


「俺は片付けをしていた側だよ。見てくれ、この壁――」


 高圧洗浄機できれいにした石壁を指差す。古い汚れは大方落ち、昨夜の種まき跡も整然としている。


「確かに……落書きがなくなってる……」


 彼女は少しだけ声を落ち着かせたが、まだ疑念を捨て切れていない様子だ。


「大げさなことは言わない。けれど、俺はこの子たちと平和に暮らしたいだけなんだ」

「ワンワン!」

「ピキィ!」


 俺の足元で、モコとラムが前のめりになって吠え、あるいは震え、存在をアピールする。モフモフの毛並みとゼリーのような体がランタンの光を受けて揺らいだ。


 秋月の視線が二匹に吸い寄せられ、険しかった眉がみるみるゆるむ。


「な、何ですか……この子たちは? 見たことのないモンスター……なのに、かわいい」

「ここで見つけたコボルトとスライムさ。攻撃性ゼロ、むしろ甘えん坊。一緒に畑を作っている相棒なんだ」


 俺がモコの頭を撫でると「ワフッ」と鼻を鳴らし、尻尾を高速回転。つられてラムがぷるるんと体を弾ませて喜びのダンスを披露した。


「ほら、人畜無害だろ?」

「か、かわ……いえっ、だ、だからといって簡単に信じるわけには――」


 秋月は言いながらも視線が二匹に釘付け。手を伸ばしかけ、引っ込め、また伸ばし……とうとう誘惑に勝てず、そっとモコの頭を撫でた。


「……ふわ、ふわふわ……っ」

「ピキィ~♪」


 ぷにぷにのラムにも触れた途端、秋月の頬がゆるゆるに崩れ、絶妙な甘い声が漏れる。


「うぅ~……可愛いですぅ!」


 完全に陥落である。モコはドヤ顔で尻尾を振り、ラムも得意げに胸(らしき部位)を張った。


 いいタイミングだと思い、俺は以前から気になっていた疑問をぶつける。


「ところで君、名字が山守って言ったよね。ここを所有してる落葉さんの親族?」

「え、ええ……お爺ちゃんを知ってるんですか?」


 秋月がぱちくりと瞬きを繰り返す。


「ああ。昔からソロキャンでこの山を使わせてもらっててね。ルールを守れば好きにしていい、ってよく焚き木を分けてくれた。頑固だけど筋の通った人だったよ」


 秋月は感激したように息をのむ。


「お爺ちゃん、偏屈って言われがちなのに、そんなふうに言ってもらえるなんて……」


 彼女の肩がわずかに震え、その眼差しが柔らかくほどける。だが次の瞬間、暗い影が瞳を曇らせた。


「それで……もしかして、キャンプの延長でここに寝泊まりを?」

「ああ。最初は短期のつもりだったけど、モコとラムに出会ってから長居してしまってね。挨拶に行こうと思ったら、山で姿を見かけなくて――」


 そこで話を切り出す。


「落葉さん、今もお元気かな? ちゃんと近況を報告したいんだけど」


 秋月は一度口を開きかけ、視線を床へ落とす。洞窟の静寂が、ひんやりと肌を撫でた。


「お爺ちゃんは……その……」


 小さく震える声。雫のようにこぼれ落ちた沈黙の重さが、胸にずしりとのしかかる。


 しばらく姿を見なかった理由――頭に最悪の可能性が浮かび、背筋を冷たいものが走った。嫌な予感が静かに背を冷やした。

ここまで読んで頂きありがとうございます!

ここまでの話を読み、そういえばブックマークがまだだった!という方がいましたらこの機会にブックマークして頂けると嬉しく思います!

そういえばまだ評価してなかったな~という方で「モコやラムが可愛い!」「もっと癒やしが欲しい!」「ダンジョン暮らしのこれからが楽しみ!」と少しでも思って頂けたなら下の☆を増やして評価して頂けると、とても励みになります!

そして既にブックマークも評価もしたよ~という皆様ほんとうにありがとうございます!これからも皆様のご期待に添えるよう更新を頑張ってまいります!これからも宜しくお願いします!

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