第17話 ジョブストーン
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「ん? 何だこれ……?」
「クゥ~ン?」
掌に載せた蒼い玉を眺めながら首を傾げると、モコも釣られて小首をかしげた。
直径はピンポン球ほど。表面はガラスでも鉱石でもない不思議な質感で、内部には白い星雲のような渦がゆっくり回転している。ひんやりしているはずなのに、中心からじんわりと脈打つ温度が指先へ伝わってきた。
宝箱の中身が、ただのビー玉のわけがない。記憶の引き出しを探る――深夜に読み漁った【ジョブストーン解説サイト】の画像が脳裏に浮かぶ。そう、まさにこの色合いだった。
「もしかしてこれ、ジョブストーンかも……」
「ワン?」
「ピキィ~?」
二匹が“それ何?”とでも言いたげに頭をコテン。可愛いが、視線は真剣だ。咳払いし、思い出せる限りの知識をかみ砕いて語る。
「ジョブストーンっていうのは、不思議な力を宿した石で、人間が身につけると“ジョブ”――職能みたいなものを覚えられるんだ。剣士とか魔法使いとか、農業系なら農民とかね」
言いながら胸が早鐘を打つ。モコとラムはワクワクが抑えられないらしく、目をきらきら輝かせて俺と石を交互に見つめている。
「ただ、コレが本物かどうか確認しないとな」
深呼吸し、玉を掲げてネットで学んだキーワードを唱える。
「――ステータスオープン!」
瞬間、青白い閃光が走り、玉からほとばしった光線が洞壁に情報を投影した。空中ディスプレイのように文字列が浮かび上がる。
ジョブ名 :農民
装備者 :――
ジョブレベル :――
戦闘力 :E
魔法力 :D
信仰力 :C
生産力 :B
成長力 :D
「やっぱりジョブストーンだった……!」
思わず声が裏返った。モコは「ワウ! ワウ!」と尻尾をプロペラのように回し、ラムはぷるぷる震えながら「ピキュ~!」と甲高い声を上げる。洞窟がミニお祭り会場になった。
農民ジョブ――戦闘職ではないが、生産力Bは魅力的だ。問題は「装備者」が空欄なこと。特殊な腕輪やペンダントなど“ソケット装具”に嵌めて初めて効果が発揮されるらしい。持っていなければ宝の持ち腐れだ。
しかし、どうしていきなり宝箱が現れたんだろう。モンスターを倒したわけでもないのに……何か条件でもあるのかな?
う~ん、考えてもわからないか。そもそも、放置されたダンジョンに宝箱が出ることが異例なわけだし。
「さて、せっかく手に入れたけど、問題は装具をどうやって手に入れるかだな」
「ワフン?」
「ピキィ?」
二匹が首をかしげる。
「このジョブストーンは、特殊な腕輪に嵌めることで装備が可能なんだ。ただその腕輪を俺は持ってなくてね」
そう、つまりこのままだとジョブストーンを装備することが出来ないわけだが――
モコ「ワンワン!(気に入ってくれたらブックマークしてくれると嬉しいワン!)」
ラム「ピキィ~」←評価もつけてくれると嬉しいな~とプルプルしている。