表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/140

第14話 ダンジョンをお掃除

第二章のはじまりです!

「よし、それじゃあ始めるか!」

「ワンッ!」

「ピキッ!」


 俺が高圧洗浄機を構えると、モコは気合満々で木製デッキブラシを“がしっ”と抱え込んだ。柄を両前足でがっしりつかむ姿は、どこか職人めいていて頼もしい。ラムは道具こそ持てないが、ジェル状の身体をぷるんと膨らませて“やる気スイッチ”を全開アピール中だ。


 まずは川へ行き、タンク式洗浄機に水を補充する。タンクは二十リットル入るが満タンにすると重量がズシリとくる。


「ピキィ」


 ラムが俺の肩に乗り、外の空気に興味津々。川べりに着くと、そのまま飛び込みパシャパシャと涼しげに泳いだ。――まあ、遊び半分でも水は水。見ているだけで涼しく、気持ちがほぐれる。


 タンクを満たしたら拠点前まで戻る。岩壁一面に残る落書きと泥汚れが、今日の標的だ。


「さぁ、まずは外壁から行くぞ!」


 ノズルを握り、トリガーを引くと――シュゴォォォッ! と轟音とともに白い水柱が発射される。高圧水流が岩肌を走るたび、赤や黒のスプレー文字がみるみる溶け落ち、石肌本来の灰色が顔を出す。


「ワン!」


 モコはブラシでゴシゴシ。四肢で踏ん張り、毛が揺れるほど力強いストロークを見せる。ブラシの毛先が落書きの隙間に潜り込み、洗剤を泡立たせながら汚れを削ぎ落としていく。岩壁はみるみる清潔なグレーに変わり、霧状の水滴が朝日の反射で七色に煌めいた。


 タンクが空になったので再び川へ――と思ったとき、ラムが肩へ乗り上がる。


「ピキィ!」


 ラムがピョンピョン跳ねて何かを訴えかけてきた。何だろう? と思っているとラムが高圧洗浄機の蓋の上に体を乗せてピョンピョン跳ねている。


「ラム。それは乗り物じゃないぞ」

「ピッ! ピキ~」


 体を左右に振って何かを訴えてきてる。どうやら遊びたいわけじゃないようだ。う~ん、もしかして――


「蓋を外せばいいのか?」

「ピキィ」


 どうやらそういうことらしい。タンクの蓋を外すと、ラムがポフッと飛び込み、体内に蓄えていた清水を一気に放出。透明の水がゴボゴボとタンクを満たしていく。


「おお、助かる!」


 これで川への往復の回数が半減だ。ラムが誇らしげにぷるぷる跳ねるので「ありがとう」と頭を撫でると、照れたように体をプルプルさせた。


 皆の協力もあり外壁が一段落したので、俺達はダンジョン内へ。薄明りの壁にも、スプレーと泥手形が無残にこびりついている。


「モコはブラシ係、俺が洗浄機。ラムは……」

「ピキィッ!」


 ラムは自ら壁に向かい、ホースのように水を放射。さきほどの川遊びで吸い込んだ分を、今度は掃除に活用するらしい。しかも、俺が置いたバケツの中の洗剤液をスッと吸収し、泡立つ洗浄水を放つというハイスペックぶり。


「参った。高圧洗浄機顔負けだな……」


 ラムの水流で汚れをふやかし、モコがモフモフ前足でブラシを操り、俺が仕上げの高圧水で一気に洗い流す。三段コンボは驚異的な効率で、壁はみるみるクリーンに。


 途中、天井から垂れ下がる鍾乳石の先端に絡まったクモの巣も、ラムが“ぷしゅっ”と水を吹きかけて除去。モコが巣の残骸を器用に掴み、ゴミ袋へポイ。俺は床面の泥斑をスポンジでこすり、最後に水流で流す。


――ガ、トウ……。


 なんだろう? 岩肌の奥から微かな声が届いた気がしたが、モコもラムも首をかしげただけ。空耳かもしれない。気にせず作業続行。


 最後にダンジョンの奥へ進み、冒険者や悪戯者が放置した空き缶・ペットボトル・壊れた木箱などを回収。モコは口にトングを咥え、ラムは小物を内部に取り込み、ゴミ袋の上で吐き出すという驚きの分別テクを披露した。


「よし、可燃ごみ・不燃ごみ・リサイクル、全部分けたな」

「ワン!」

「ピキィ~♪」


 薄暗かったダンジョンが、しっとりとした岩の質感を取り戻し、ランタンの光がくっきり反射している。落書きは影も形もなく、足元は泥一つない。


 外へ出て改めて壁面を眺める。灰色の岩肌が朝日に映え、かすかに虹色の水膜が輝いていた。


「見違えたな……」

「ワンワン!」

「ピッキィ~♪」


 モコはブラシを掲げて勝利ポーズ、ラムは身体を星形に広げて祝福ジャンプ。二匹の“お手柄ドヤ顔”に、俺も大きく頷く。


「よし! 一休みしたら、分別袋をゴミステーションへ運ぼう。ダンジョンもきっと喜んでるさ」


 俺の言葉に、モコは尻尾をぶんぶん振り、ラムはぷるぷる波打ちながら賛同の音を響かせた。――こうして、自称「放置ダンジョンお掃除隊」最初のミッションは、大成功で幕を閉じたのだった。

新章がはじまりました!これからも頑張って更新していきます!宜しければブックマークや下にある☆で評価していただけると嬉しいです!感想やレビューもお待ちしてますのでどうぞよろしくお願い致します!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
作者さんはひょっとしてどさんこですか? ゴミステーションという言葉は北海道弁だと聞いたことあるので…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ