第134話 モグラとも仲良くしよう!
「実は今朝なんだけど、腹を減らしてたこいつを見つけてさ」
俺は秋月に、モグラを発見した経緯をかいつまんで説明する。モグラは秋月と俺を交互に見ながら、サンドイッチを幸せそうに頬張っていた。
「そうだったんだね。ふふっ、何だか可愛い子ですね」
秋月がモグラの前でしゃがみ込み、その頭をやさしく撫でる。モグラは気持ちよさそうに目を細め、ちょっと鼻先をヒクヒクさせている。食べている最中だけど、どうやら撫でられるのは大歓迎みたいだ。
「ところで、この子の名前って何て言うんですか?」
「え? 名前?」
「はい。まだつけてなかったんですか?」
そう言われて、確かにそうだなと思う。今朝出会ったばかりだから先のことは考えていなかったけど、このまま一緒に過ごすとしたら名前は必要だよな。
「ワンワン!」
「ピキィ~」
「ゴブゥ~」
「マァ!」
モコやラム、ゴブ、マールが一斉にこちらを向いて、言葉にならない声を上げる。どうやら「このモグラも仲間にしてあげようよ」と訴えているらしい。モグラのほうも、つぶらな瞳でじっと俺を見上げていて、どこか期待しているようだ。
「そうだな。お前はどうしたい? 一緒にいたいか?」
「モグゥ~♪」
モグラは嬉しそうに声を上げ、ヒシッと俺の足元に抱きついてきた。な、なんて可愛いやつだ……。
「わかった。じゃあ名前は……モグ! これでどうだ?」
「モグゥ~♪」
俺がそう決めると、モグはさらに嬉しそうに跳ねながら鳴いた。どうやら気に入ってくれたみたいだ。
「わかりやすくていい名前だね。よろしくね、モグちゃん」
「モグゥ~♪」
秋月が微笑みかけると、モグは首をちょこっと傾げて鳴き返す。単純かもしれないけど、こういうシンプルな名前のほうが覚えやすいし、モグ自身もすぐ馴染めるだろう。
「ワンワン♪」
「ゴブゥ♪」
「ピキィ♪」
「マァ♪」
「モグゥ♪」
モグが仲間に加わったことを喜ぶように、五匹は輪になってくるくると踊りだした。モグもまだ慣れてないはずだけど、すでにピョコピョコと小さく跳ねて楽しんでいる。あまりに微笑ましくて、秋月がスマホを取り出して動画を撮り始める。
「すごく可愛い……。ね、これアップしても大丈夫かな?」
「ああ、新しい仲間が増えたし、その紹介も兼ねていいかもな。最近バタバタしてたけど、動画配信も続けてたんだよな」
秋月はここの様子を動画で発信していて、けっこう反応もいいらしい。モグの加入は視聴者にもウケそうだ。
「それにしてもハルさん、今日はギルドへ行くんでしょ?」
「あ、そうだった。あと食材やいろいろ買い足したい物もあるからな」
ダンジョンでの畑仕事も拡大してるし、土壌改良のための資材も追加で揃えたい。さらに道場に顔を出す予定もある。けっこう忙しい一日になりそうだ。
「折角だからモグも登録したいし、まずはギルドかな」
「モグゥ?」
「正式に俺たちの仲間ってことだ。一緒に来てくれるかい?」
「モグモグ~♪」
モグが尻尾を振るような仕草を見せて大喜びしている。名前をつけたばかりなのに、もうしっかり打ち解けてくれてるみたいだ。
ちょっと気になって、ステータスを壁に投影して確認してみる。
モンスター種:土竜
ネーム:モグ
使役者:風間 晴彦
レベル:2
戦闘力:D+
魔法力:D
信仰力:D
生産力:D
成長力:B
特性:土の加護
スキル:穴掘り、土弄り、爪強化
ちゃんと使役者は俺になってる。モンスター種は“土竜”と書いて“もぐら”と読むっぽいし、スキルもまんま土関係だな。それだけに畑仕事とか土壌改良には、もしかしてかなり役立ってくれそうだ。
「準備ができたら車出すので言ってくださいね。私が山の管理者としてサポートします!」
「いいのか? ギルドって結構遠いよな」
「問題ないですよ。ここの管理者として当然です。ね!」
秋月はやる気満々だ。ギルドまでの移動も助けてもらえるならありがたい。俺としては車の運転までしてもらうのは申し訳ない気もするけど、秋月が言うにはこれも仕事らしい。
「よし、じゃあみんなでギルドに行くか!」
「モグゥ!」
「ワンワン!」
「ゴブゥ!」
「ピキィ!」
「マァ!」
こうして、モグも新しく仲間に加わったまま、俺たちは秋月の車に乗り込んでギルドへ向かうことになった――