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第114話 慎重に探索

 あの巨大なスライムから離れた後、俺たちはゆっくりとダンジョン内を進んだ。時には聞き耳を立てつつ、怪しい気配がないかを探るように――


「ここで分岐か――」


 正面に進むか、曲線を描くように続く左の道を行くか。


「ね、ねぇ。なんか音がするよ」


 俺たちがどうするか考えていると紅葉が不安そうな声で伝えてきた。確かに前方からゴソゴソと何か動いているような音が聞こえるな。とりあえず正面は怪しいし左の道を行くことにしようか。


「左に進むけど、何かあってもすぐに逃げられるように準備はしておいてくれ」

「う、うん」

「ゴブッ!」


 俺たちはゆっくりと進んだ。すると少し先で今度は十字路が見えた。分岐が多いなと思った直後、後方から足音が聞こえてきた。


 不味いな。迷ってる余裕はない。だとしたらどうする。俺たちは左に進んできた。右にいけばただ戻るだけで妙な音を鳴らしていた何かに遭遇する可能性がある。

 

 こうなったら――


「正面突破だ!」

「う、うん!」

「ゴブッ!」


 俺たちは早足で正面に向かおうとした。だが十字路に差し掛かったその時だ、ヒュンッという風切音がし――


「ゴブッ!」

「ゴブちゃん!?」

「お、おいまさかお前!」


 咄嗟に飛び出したゴブの肩に矢が突き刺さった。今の行動、まさか俺を庇おうとしてくれたのか?


 矢の飛んできた方向を見るとフードを被ったゴブリンが弓を構えていた。次の矢を番えこちらを狙ってきている。


「天地返し!」


 反射的に俺は新しく覚えたスキルを使用していた。地面を掘るように衝撃波が飛び、弓持ちのゴブリンをふっ飛ばした。


 だが、その影響で俺の鍬が折れてしまった。


「スキルに耐えられなかったのか――」

 

 半分の柄だけになった鍬を見ながら呟く。思えばホームセンターで購入した鍬だ。当然戦うことなんて想定されていない。にも関わらず酷使してきたのだから限界を迎えて当然といえるかもな。


「ゴブッ!」

「ギャッ!?」


 ゴブが鉄球を撃ち、立ち上がりかけた弓持ちのゴブリンが倒れた。死んだのかわからないが、立ち上がってこないのは確かだ。


 だが撃った後のゴブが心配だ。矢を食らったんだしな……実際ゴブの顔色が悪い。


「大丈夫か、いや大丈夫なわけないか……」

「ゴ、ゴブゥ!」


 だけどゴブは笑顔を作って大丈夫だとアピールした。俺を庇って怪我したっていうのに。


 だが俺たちに休んでいる時間はなかった。足音が近づいてきたからだ。


「行こう。すぐにここを離れるんだ。ゴブ、もう少し耐えてくれ」

「ゴブッ」

「ゴブちゃんしっかり!」


 俺は紅葉とゴブを連れて先を急いだ。後方の連中もこちらに気がついた可能性があるから急ぐ必要がある。


 だが参った。あんな弓を扱うゴブリンまでいるなんて。おまけに俺は武器を失ってしまった。


 事態は最悪に感じる。ダンジョンを更に進むと今度は正面が登りの勾配になっていた。左は下り坂のようになっている。これはそのまま正面だろう。


 とにかく上に戻りたいわけだからな。


「このまま正面だ」

「大丈夫かな……」

「ゴブゥ……」


 紅葉とゴブが不安そうにしていたが、わざわざ下層に向かうことはないと思う。だから俺たちは登り坂を進んだのだが――途中でゴトンっと何かの落下音。そして続くゴロゴロという音。


「まさか――」

「キャッ! お兄ちゃんあれ!」

「ゴブ~!」

 

 紅葉の指さした方向から大岩が転がってきた。まさかと思ったが、こんな漫画みたいな罠が本当にあるのかよ!


「戻るぞ!」

「でもゴブちゃん怪我」

「俺が運ぶ!」

「ゴブッ!?」

 

 俺はゴブを背負い来た道を戻った。幸いなことに紅葉の運動能力は高い。俺の足にも余裕でついてきた。


 だけど、来た道を戻っていると、数体のゴブリンの姿。しかも上にいたのと違って鎧を着ていたりと武装している。


「奴らより早く下りるんだ!」


 俺たちは最初に避けた下り坂の方へ向かった。ギリギリのところで俺たちの方が早くにさっきの分岐に入れた。その結果追いかけてきていたゴブリンどもは纏めて大岩の下敷きになった。


「このまま右に飛び込むぞ!」

 

 途中で右側に横穴が見えた。後ろから迫る大岩を避けるにはあそこに飛び込むしか無い!


 俺と紅葉は何もないことを願いながら横穴に入った。直後大岩がゴロゴロという音を奏でながら通りすぎたのが確認できた。


「た、助かった」

「ゴブゥ~」

「よかった~」

 

 俺たちはホッと胸をなでおろした。そして改めて横穴がどうなっているか確認したが、どうやら先は行き止まりのようだ。だけどそこには目を見張る物があった。


「これ、宝箱か」

「わぁ~これで二つ目だね!」

「ゴブッ!」


 宝箱を認め紅葉が目を輝かせて言った。二つ目、ということは紅葉たちは既に一つ見つけていたということか――

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