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鬱展開が嫌だと言ったら命を司る存在になったので、とりあえず燃やしてみる

鬱展開が嫌だと言ったら命を司る存在になったので、とりあえず燃やす方向で考える

作者: 衣谷強

思い付き短編です。

ちょっと脳が疲れているので、とにかく力技です。

どうぞお楽しみください。

「ごほっ、ごほっ……」

「おかあさん! しんじゃやだ! おかあさん! しんじゃやだよー!」

「マタナルさん……」

「ティニーちゃん……。うぅ……」


 目の前で弱々しく咳き込む母と、泣きすがる幼い娘。

 それを取り囲む村人の誰もが、明日を待たずに訪れる最悪の結末を想像しながらも、それを覆す力を持たない。


「どうしよう……。僕がテイマーじゃなくてヒーラーだったら……」


 唇をかみしめ、うつむくカドリー。

 一人前のテイマーを目指し、旅をしている中、宿を求めて立ち寄っただけの村。

 そこで初めて出会った親子の不幸を、十になるかならないかのカドリーは、心の底からどうにかしたいと考えていた。

 となれば、だ。


『とりあえず燃やそう』

「な、何を言ってるのラヴァ……! まだマタナルさんは生きてるんだよ……!?」


 俺の念話に、小声で抗議するカドリー。

 しかし俺は構わずカドリーの肩から飛び立つと、羽根から白い炎を放つ。


「きゃあああぁぁぁ!」

「お、おかあさんがもえちゃう!」

「ティニーちゃん! 危ない! こっちに!」

「み、水だ! 水を持って来い!」

「ラヴァ! な、何て事を……!」

「いやあああぁぁぁ! 熱……、くない……?」

『へ?』


 全員の目が点になったところで、俺はカドリーの肩に戻り、母親の身体の中の病原菌を焼き尽くした白い炎を消す。


「だ、大丈夫かい!? マタナルさん!?」

「……えぇ、熱くもなかったし、火傷もないし、……咳も、止まった……?」

「……おかあさん……?」

「もう苦しくない……! 息が普通にできる! まるで病気にかかる前みたい!」

「おかあさんなおったの!? おかあさんしなないの!?」

「……えぇ! そうよティニー!」

「おかあさあああぁぁぁん!」


 喜んで母親に飛びつく娘。

 泣きながら抱きしめて、その頭を撫でる母親。

 戸惑いながらも喜び合う村人達。

 母親の病気は特効薬のない肺病だった。

 あのままなら母親は病で命を落とし、出稼ぎの父を待ちながら母一人子一人で暮らしていた娘は、絶望の淵に落とされた事だろう。

 そんな現実はいらない。

 こういうのでいいんだよ。


「す、すごい……! 病気を治せるなんて、すごいよラヴァ……!」

『んじゃ、後は任せた』

「え?」


 状況を把握していないカドリーから離れ、窓辺に降り立つと、


「あんたすごいよ!」

「え、え!?」

「あの小鳥、フレイムバードか!? あれに何かさせたんだろ!? まさか病気を治す力があるなんて!」

「いや、その、僕は、えっと……」

「こんなすごいテイマー、初めて見たよ!」

「え、あ、は、はい……。ありがとう、ございます……。でもその」

「お祝いだ! ご馳走を用意するから食べてってくれ!」

「……あ、ありがとう、ございます……」


 母親の最期を看取りに来ていた村人達からの猛歓迎に、照れ笑いを浮かべるしかないカドリー。

 褒められ慣れていないからだろう。

 嬉しさと戸惑いで、はにかんだ笑顔を浮かべている。

 胸を張れカドリー。

 お前が救いたいと強く願ったからこそ、俺は力を振るえるんだ。

 テイマーが使役している生き物がした事の結果は、全てテイマーのものとなる。

 何かを害すれば、その代償を。

 何かを利すれば、その賞賛を。

 使役されている生き物は、テイマーの指示に絶対服従なのだから当然だろう。

 まぁ俺の場合は、カドリーの意思さえ感じ取れたら、後は自己判断で行動するけどな。


「ありがとう! とりさん!」


 声に振り向くと、涙の残る顔で満面の笑みを浮かべる娘がいた。

 礼なんかいいから、お母さんにもっと甘えてこい。

 そう思いながら羽根を振ると、


「うん! ありがとう!」


 また娘は母親の胸へと飛び込んで行った。

 部屋中が喜びに満ちている。

 これだよこれ。

 こういうのが好きなんだ俺は。

 前世でとにかく鬱展開が嫌いだった俺は、転生の際に、


「鬱展開をひっくり返せるような力がほしい」


 と願ったら、神様にめっちゃ同意され、どんな命も炎で自在にできる神の鳥へと生まれ変わった。

 そして仲間から魔獣への囮にされ、死にかけていた駆け出しテイマーのカドリーと出会い、共に旅をしている。

 これからも俺は、カドリーが一流のテイマーを目指す旅を共にしながら、目の前の鬱展開を燃やしていくだろう。

 世界がハッピーエンドに包まれるその日まで。

読了ありがとうございます。


ここのところ仕事のストレスのせいか、アニメやドラマの鬱展開に耐えられず、観るのを辞めてしまう事が増えてきて、このままじゃ駄目だ! と久々に筆を持った結果がこれだよ!

……シテ……、許シテ……。


お名前紹介。

主人公は小鳥、と見せかけて神の鳥であるラヴァ。由来は『溶岩』を意味するLavaから。

少年テイマー・カドリーは『可愛い』と『優しい』の意味を持つcuddlyから。

母親マタナルは『母性』を意味するmaternalから。

娘ティニーは『小さい』と『可愛い』を意味するtinyから。


また何か燃やしたい鬱展開があったら書くかもなので、その時はよろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[一言]  なんというか現実より優しい世界ですね…(疲れています)  長編だったら面白くなりそうなので短編なのが残念な気もしますが短編ぐらいが丁度いいのかもしれません。  ハマっているアニメが鬱展…
[良い点] 心が疲れている時にはこういう力技ハッピーエンドなお話が読みたくなる事もある、とてもイイ。 [一言] めっちゃ同意する神様も可愛い。神様も心を痛めていたのね…とほっこり。
[一言] 容易な曇らせ展開はもう食傷すっね
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