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港の死闘

……………………


 ──港の死闘



 マックスとレクシーは司法側の猛烈な追撃を受けながらも、港にむけて着実に前進していた。港はもう少しであり、そこにはソーコルイ号が潜水艦とともに停泊している。


「マックス! 後ろからお客さんだ!」


「了解!」


 マックスはパトカーの窓から機関銃を掃射して、追跡してくる司法側のパトカーやSUVを蜂の巣にしていく。


「俺はどうやらこういう場所でしか生きられないらしい。こうしているととても生き生きとした気分になって来やがるぜ」


「あたしもだよ。最高の気分だ。破滅がすぐそこにある!」


「そうだな。すぐそこに死神がいるぞ」


 連邦捜査局のヘリが上空を飛び回り始め、そのヘリを目印に司法側の車両が殺到してくる。それらをマックスとレクシーは狂気じみた笑顔で相手にしていた。


 撃って、撃って、撃って──。


「燃え上がれ」


 さらには炎が車両を襲い、炎上した車両がスピンしんがら他の車両に衝突する。


「はははっ! いいぞ、いいぞ! やっちまえ!」


「おうとも! やってやるぜ!!」


 暴走したマックスとレクシーの車両が港に向かっている中でカーターたちも追跡劇に参加していた。


「クソ。連中、滅茶苦茶やりやがる」


「州軍の出動を要請しておいて正解だったな」


「全くだ」


 カーターはヘリから撮影して映されている、州軍の装甲車が爆破されるシーンや検問(チェックポイント)が突破されるシーンを眺めて唸る。


 マティルダが言っていたように敵は相当な戦力を保有していた。州軍に事前に出動を打診しておかなければ、その間違いは警官たちの命で支払われることになっていただろう。これでも損害が無視できないくらいなのに。


「連中はどこに向かっているんだ?」


「この先にあるのは……港だ」


「パシフィックポイント港か。船で逃げるつもりなのか?」


「海は沿岸警備隊が封鎖している。ありえない」


 沿岸警備隊の巡視船もパシフィックポイント包囲に参加していた。


「じゃあ、港に立て籠もりか。まあいい。俺たちも向かうぞ。他の連中はほとんど仕留めた。残るはパトカーに乗っている連中だけだ」


「了解」


 カーターたちもパトカーに乗り込んで港に向かう。


 既にフュージリアーズは壊滅状態で、彼らは自分たちの3倍もの警官と州兵を道づれに壊滅していたのだった。


「本当に内戦か何かだな、畜生め」


 カーターは破壊された装甲車やパトカーが転がり、戦場になった道路を見渡して、そう忌々し気に愚痴った。


 カーターたちの乗せたパトカーは港に迫り、次第に銃声が聞こえてきた。


「戦闘が始まっているのか?」


「既に被疑者は港に侵入して立て籠もっている模様」


「クソ。遅かったか」


 カーターたちが急行している間にもマックスとレクシーは港に突入し、そこに立て籠もっていたのだった。


 港のゲート前には無数のパトカーと装甲車が集結し、規制線が張られた中で捜査官たちが港の様子を監視している。


「状況は?」


「先ほど手配中のマックス・キアナとレクシー・バートレットが港に入りました。現在、港にいた港湾管理局の職員数名を人質にして立てこもっています」


「人質を取られたのか。面倒だな……」


 先に到着していた捜査官の言葉にカーターが唸る。


「連邦捜査局の特殊作戦部隊と交渉人(ネゴシエーター)が現在向かっています」


「それまで持つといいんだが」


 カーターは他に手はないだろうかと考え込む。


 しかし、人質がいる以上下手に追い詰めることはできない。こういう状況に於いては人質の命が最優先であり、逮捕は二の次になってもしょうがないのだ。


「マックス・キアナ! レクシー・バートレット! 今、投降すればまだ罪は──」


 交渉人(ネゴシエーター)がそう呼び掛けたのに交渉人(ネゴシエーター)の頭が狙撃されて弾き飛ばされた。


「クソッタレ。あの連中、狙撃の腕もいいってわけか」


「迂闊に港に入れば俺たちも狙撃されるな」


 捜査官が愚痴るのにカーターがそう言って港の方を向く。


「沿岸警備隊の展開は?」


「完了したそうだ。ネズミ一匹逃がさないと言っている」


「ふむ。しかし、妙だな。どうしてこんな脱出のしようがない場所までわざわざ逃げてきて、立て籠もっているんだ?」


「それは確かにそうだな」


 沿岸警備隊がパシフィックポイント封鎖に参加するのは明らかだったはずだ。港からはどうせ逃げられないことも。


 なのに、マックスとレクシーは港に逃げ込んだ。


「何か手があるのかもしれない。そう考えた場合、投降を促すのは無駄な時間の浪費に終わる。素早く手を打つべきだ」


「しかし、無理に動けば俺たちの側にも犠牲が出る。既に無視できないほどの犠牲が司法側にも州軍にも出ているんだ」


「それでもあいつらを逃がせば、その犠牲はまるで無駄だったことになるぞ。それでもいいのか?」


「クソ。分かった。突入を急がせよう」


 カーターの言葉で港への突入が急がれる。


 州警察のSWATや連邦捜査局の特殊作戦部隊、州軍の部隊などが港に集結し、突入計画を相談し始めた。


「ドローンによる映像では被疑者2名はコンテナターミナルまで撤退している模様。コンテナターミナルに突入できるルートは限られている。待ち伏せされるか、ブービー・トラップの類で迎え撃たれるのは必定だろう」


 アドバイザーとして参加している“国民連合”陸軍の将校がそう言う。


「そこで提案なのだが、海の方から港に上陸し、地上部隊とともに挟み撃ちにするのはどうだろうか? 相手が少数であることを考えれば、数の優位を生かせる多正面作戦を展開した方が犠牲は押さえられる」


「そうだな。海からの上陸について訓練を受けている連中を探そう。そうしたら、作戦開始だ。ハンニバルの幹部2名を拘束する」


 こうして作戦は決定した。沿岸警備隊と連邦捜査局が合同で海上からの上陸作戦を決行。同時に地上部隊がコンテナターミナルに突入する。


 それによってマックスとレクシーを拘束するのだ。


「ひとつ留意すべき点は港にはハンニバルにとって重要な何かがあるということだ。ルサルカの資産だったものかもしれない。ルサルカが人身売買ビジネスをやっていたならば、船の1、2隻は持っていたかもな」


「それは連中を拘束した後でゆっくり探そう。今はやつらを捕まえないと」


「ああ。それはそうだ」


 カーターは戦略諜報省のシャドー・カンパニーと違って殺害を目的にしていない。彼はどんなクソ野郎だろうと公平な法による裁きを受けるべきだと考えていた。


「全部隊、配置についた」


「よし。これで終わりにしよう」


 そして、ついにマックスとレクシーを拘束するための作戦が開始されたのだった。


……………………

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新連載連載中です! 「人類滅亡の日 ~魔王軍強すぎて勇者でもどうにもなりません!~」 応援よろしくおねがいします!
― 新着の感想 ―
[一言] 敏腕捜査官も流石に潜水艦は読めなかったようだ
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