内戦状態
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──内戦状態
ひたすら港を目指すマックスとレクシー。
「飛ばせ、飛ばせ! ぶちかませ!」
「イエイ!」
レクシーが運転するSUVは州軍と警察の検問を次々に強行突破しながら港を目指している。
だが、その前にフュージリアーズのマシューたちを合流することになっていた。
「後方からパトカーだ! 警察のお出ましだぞ!」
「マシューとの合流地点までもう少しだ! かっ飛ばせ!」
パシフィックポイント中のパトカーが集まったかのように次々にパトカーが現れてはマックスに軽機関銃を掃射されて逃げていく。
「しかし、マシューたちと合流するのに使う人間は当てになるのか?」
「今のあたしたちには駒がないんだ。贅沢は言えないさ。そろそろ車を降りるぞ」
「了解!」
立体駐車場に入ってレクシーが合図し、マックスが頷いて降車。
「よう。あんたらのファンがパシフィックポイントに押し寄せてるぜ」
「だから、あんたに頼むことにしたのさ、デニソフ警部補」
立体駐車場で待っていたのはデニソフ警部補だった。
「代わりの車と制服は手配してくれたか?」
「ああ。そこに準備してある。だが、その前に金だ」
デニソフ警部補はマックスとレクシーの逃亡のために怪しまれない車と警察の制服を準備することになっており、そのことで多大な報酬を受け取る予定であった。
「もちろんだ。金は準備してある。こっちにこいよ」
マックスがそう言ってデニソフ警部補を車のトランクの方に呼ぶ。そこに金が収めてあるという具合だ。
そして、デニソフ警部補がそれに乗ってトランクを覗き込んだ時、彼の頭が爆ぜた。後ろから45口径の自動拳銃によって頭を弾き飛ばされたデニソフ警部補がトランクの中に倒れ込む。
「これが報酬だ」
マックスはそういうとデニソフ警部補を車のトランクに押し込んだ。
そして、車に向けて火をつけた。デニソフ警部補の死体が収まった車が炎上を始め、ごうごうと黒煙を断ち上される。
「発信機はないか?」
「ないぞ。確認した」
デニソフ警部補が準備した車に発信機の有無がないのかを確認し、マックスとレクシーは州警察の制服を纏った。
「じゃあ、逃亡レースを続けるか」
「ああ。マシューたちに会えば、いよいよ逃げられる」
マックスとレクシーはパトカーに乗り込み、フュージリアーズのマシューたちと合流することになっている古い工場に向かった。
パトカーになると無線も装備されており、警察無線から包囲網がどれだけ狭まっているかを把握することもできた。
「警察の連中はあたしたちを完全に見失ったみたいだ」
「いいニュースだな」
警察はまさかマックスたちがパトカーに乗っているとは思えず、完全にマックスたちの姿を見失ってしまっていた。
マックスたちは逃げ続け、パシフィックポイントを駆け抜ける。
「そろそろだ」
そして、かつて自動車部品工場だった古い工場に入り、車を止めた。
「マシュー。いるか?」
レクシーが呼び掛けるとマシューたちが工場から姿を見せた。全員が完全武装している。完全な戦争への備えだ。
「レクシーの姉御。こっちの準備は万端だぜ」
「では、行くとするか。他の連中もドンパチしているみたいだしな」
パシフィックポイントの各地で脱出を試みるフュージリアーズとそれを阻止しようとする警察で衝突が発生し、両者が無視できない損害を出し続けていた。
「港に向かうまでのルートだ」
マックスがそう言って地図を広げる。
「わき道を通って戦闘を避けるのはなしだ。時間が経てば経つほど俺たちは不利になる。故に強行突破によって一気に港に向かう。主要な道路を正々堂々と通って大暴れだ。文句のあるやつがいるなら今言え」
「文句なしだ、料理人」
「オーケー。連中に目にもの見せてやろうぜ」
そして、血に飢えた猛犬どもが銃を手に殺戮へと向かう。
マックスとレクシーを乗せたパトカーを先頭に防弾仕様の2台のSUVに乗り込んだマシューたちが続く。
「前方に検問だ」
「ぶちかませ」
レクシーのその合図でマックスが州兵の検問に炎を燃え上がらせる。州兵たちは火だるまになって逃げ出し、数名が発砲しようとして上官に止められてるのが目に入った。
『──被疑者はパトカーで逃走中の模様! 人質の有無は現在不明にして許可があるまでの発砲を禁止する! 繰り返す──』
彼らが発砲できないのはマックスたちがパトカーを奪ったときに、警官を人質にしてるかもしれなかったからだ。
「ははっ! 連中、びびって撃ってこないぜ。余裕だな」
「全くだ。向こうが撃たないならこっちから一方的に鉛弾を叩き込んでやる」
「最高だぜ」
マックス、レクシー、マシューたちは州兵から州警察や市警の警官、連邦捜査局の捜査官まで全てに向けて鉛弾を叩き込みながら、速度を落とさずに港に向けてアクセルを全開にして飛ばす。
一方的な虐殺が続くかと思われたときだ。
「クソ! あの連中、俺たちの仲間を……!」
「交戦規定なんてクソ食らえだ。撃て!」
装甲車に乗っていた州兵部隊がマシューたちのSUVに向けて50口径の重機関銃を発砲。銃弾がSUVを蜂の巣にしていき、SUVはスピンして建物にぶつかった。
「マシュー!」
『俺たちにかまうな! 行け!』
「クソ。そう簡単に死ぬなよ」
『ああ。派手に暴れてやるさ。幸運を祈る!』
レクシーたちにマシューたちはそう言い、SUVから降りると、まずは携行対戦車ロケット弾で銃撃してきた装甲車を攻撃。装甲車はあっさりと吹き飛び、爆発炎上して乗員もろとも燃え上がる。
「さあ、来いよ、クソ野郎ども! 俺たちがまとめて相手してやるぜ!」
マシューたちは陣地に立て籠もり、自動小銃や機関銃で近づいてくる司法側の戦力を銃撃し、次々に死体を積み重ねていった。
「戦車だ! 戦車を前に出せ!」
「クソ野郎どもめ。覚悟しやがれ」
ここにきて州軍の戦車部隊が迫り、随伴歩兵を後方に控えさせた2両の主力戦車がマシューたちに迫る。
「そろそろお終いだな。最後に派手にやってやろうぜ」
「ああ。やってやろう!」
マシューたちは携行対戦車ロケット弾を手にして、それを叩き込むと同時に、爆薬を持って戦車の側面に回り込んだ。
携行対戦車ロケット弾を放ったフュージリアーズのメンバーは連装機銃によってハチの巣にされたが1台の戦車を撃破。さらに側面に回り込んだ部隊は戦車を爆薬で走行不能に至らしめたのちに随伴歩兵に射殺された。
「こいつら、イカれてやがる」
「こんなのが後何人いるんだ?」
州兵たちはそう愚痴り、彼らの戦意は低下しつつあった。
しかし、それでも多勢に無勢のフュージリアーズ側は大きな損害を出して壊滅しつつあり、抵抗は徐々に小さいものになっていた。
「レクシー。フュージリアーズはほとんどやられた。生き残りは数名だ。州軍が出動したのが一番不味かったな」
「クソ、クソ。あたしたちは何としても生き延びるぞ」
「ああ。そうだな」
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