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37,山林地帯

前回の投稿は“ 06/26 18:00 ”です。

 岩場を抜けるため、ゴロゴロと転がっていく。 


 夜も行動できるようになったおかげか、以前、岩場を抜けようとしていた時より行進速度は速く、二日ほど転がることで、岩場を抜けることが出来た。


 私が洞窟を出てから、森、岩場ときたが、そのどれもがだいたい2日ほどの移動距離で抜けられる場所だった。

 他の場所もそうなのかはわからないが、もし、私たちがもっと早い移動手段をもっていたら、一エリアどのくらいのスピードで抜けることが出来るのだろうか。

 

 人間陣営では馬などの移動手段が使えそうだが、荷台を付けたような馬車ではなく、人を乗せて走るだけの、速さ重視の馬を使えた場合、スタミナ等を考えなければ、一日でエリアを抜けられてしまいそうだ。


 そう考えると、私のリスポーン地点に、二日ぐらいあれば行けてしまうことになるので、いくらイベント等で人間と絡むことがあったからと言って、流石に、次のエリアですぐ人間陣営がいることは無いだろう。と高を括っていたが、実際はそんなフラグが機能することもなく、私の目の前には森が広がっていた。


 今回の森は、コボルトたちと出会った、木漏れ日が落ちる、静かで温かな森ではなく、薄暗く鬱蒼とした深い森だ。

 さらに、ただ森というわけでは無く、上を見上げると、森から傾斜が続き、山が形成されているのが見える。


 このエリアに名称を付けるのなら“山林地帯”なのだろうか。林というには、木々が多い気もするが、山の中腹からは木々もまばらになっているので、もしかすると、山に近づくほど木の量も減っていき、全体を均したら林と言って問題ない木の量になるかもしれない。


 山の高さは、あまり高くはない。山頂に雪が積もっているわけでもなさそうなので、気候も激変することなく、自力で天辺まで登ることが可能だろう。

 傾斜も緩めで比較的登りやすそうな山だが、私が転がり続けるのは少し難しい気がする、とりあえず、挑戦してみようとは思うが、失敗してそのまま下に転がり落ちることだけは無いようにしよう。


 

 一抹の不安を抱えながら、私は山林の中に足を踏み入れていく。

 まずは、木々の生い茂る樹海の攻略だ。岩場よりも強いであろう魔物の登場に気を引き締めながら、私は森の中へ身を投じた。





 ・

 ・

 ・





 山林地帯を進み始め、約3時間ほどが経過した。

 ごつごつと柔軟性の無い私の体では、木々の生い茂る樹海の中を進んで行くには少し勝手が悪く、迂回したり、細木を折ったりと、あまり効率よく進めてはいない。


 さらに、魔物も襲ってくるので、その対処にも追われていた。

 主に襲ってきた魔物は猿型の「ウッド・エイプ」という魔物。


 黒い毛並みをし、上腕が発達した逆三角形の体躯を誇る、マッチョな猿だが、体高はそこまで大きくない。大人しく並んでくれれば、私の方が背が高いだろう。

 太い両腕を器用に使い、枝から枝へと飛びまわりながら、私めがけて殴りかかってくるが、結局は物理攻撃のため、そこまでダメージは入らなかった。また、あまり頭が良くないのか、ワンパターンに後ろへ回ってからの攻撃を繰り返してくるため、飛び掛かってくるタイミングで、ミニゴーレムを投げつけると、避けることが出来ず、直撃していた。


 ただ、岩場よりも魔物のレベルが上がっていることもあるためか、なかなか倒しきれず、再三襲撃を食らったが、そのほとんどに逃げられてしまっていた。



 魔物の相手をしても、時間だけが奪われ、特に報酬は無い状態が続き、森を進むにしても、木々が邪魔で進みにくい。

 何かいい方法が無いかと考えていたところ、枝木に向かってミニゴーレムを投げつけていれば、意外と簡単に道を切り開けることに気づいた。

 

 スキルポイントを消費してしまうため、何回も連続して行うことはできないが、これをすることで奥地へと進んで行く速度はかなり上がった。



 メシメシ・・・バキバキ・・・



 と、現実でやれば、確実に山の所有者に激怒されるであろう蛮行を行いながら進んで行くと、少しづつではあるが、だんだんと木の量が少なくなっていっていることに気づき始める。

 

 山に近づいてきたのかもしれないと思っていると、今度は一切、木の生えていない少し開けた場所に出てしまった。 

 実際の森林では、古い木が倒れた際にこのような開けた場所ができることがあり、これまでとは違った植物が成長し始めると言うが、この場所は木が一本倒れたにしては、少し開けすぎている気がする。


 森を進むうえでの中継ポイントなのか?と思い、スキルポイントを回復させがてら、座って休憩しようと考えていると、森の中から、私が相手してきた猿よりも一回り大きな猿が飛び出してきた。


 

 「キィィィッッーー!!!」



 勢いよく枝からジャンプし、私の目の前に着地した、黒い体毛に緑の渦状の模様を持つ大きめの猿は、私を見て地面を叩くようにして威嚇してくる。



 「「「キィ!キィッ!!!」」」



 その後ろには、私が先ほどまで何度も襲われた、ウッド・エイプの集団がおり、少し離れた木の上から鳴き声を上げている。

 


 ボス格の猿を連れてきたのか・・・



 どうやら、私から敗走していったウッド・エイプたちは、ボスの猿に私を倒すよう頼み込んだようだ。ボスはボスで子分(?)がやられたことに怒っているのか、歯茎をむき出しにしながら、こちらを睨みつけて、やる気満々といった様子。群れをつくる魔物に縁があるな・・・私は。

 


 足が遅いだけでなく、移動のしづらい山林では逃げ場がないので、私はそのまま戦うことに。

 見たところ、ボス猿も武器は持っていない。物理攻撃をしてくるのであれば、こちらの方が有利に戦えるだろう。


 また、どういう習性なのか知らないが、子分のウッド・エイプたちはボス猿に加勢しない模様。昔のヤンキーのようなタイマン至上主義なのか、こちらが一匹しかいないからなのか、ボスのプライドなのかはしらないが、一対一でやれるのはありがたい。

 ただ逆に、この状態でミニゴーレムを独立させて動かしてしまうと、「話が違うじゃねぇか!」と、ウッド・エイプ達まで加勢してきて厄介なことになりそうだ。実際、現時点でなぜ加勢してこないのかはわからないので、仮定の話でしかないが、とりあえず、不意打ちだけは警戒しておこう。


 

 このボス猿も危なくなったら逃げるのかな。その時、どうやって追撃すればいいんだ・・・



 ウッド・エイプに詰め切れなかった経験から、倒せる倒せないではなく、ボス猿との戦い、その最後を考えるが、やはり自分よりも素早い相手に逃げ切られるのは、普通のゴーレムの時からの課題の一つとして改善できていない。


 しかし、逃げ切られないようにする手段もまた、昔から知ってはいるのだ。

 それは、一撃ないし、一発で大ダメージを出すこと。


 倒してしまえば、逃げるも何も関係ない。



 私よりも大きなボス猿に、どうやって致命の一撃を加えるかはさておき、方針が決まった私は、一応保険で「エスケープ」のスクロールに手を掛けながら、戦闘を開始した。





 


 ―――――――――――――――――――――――



 「ウッド・エイプ」

 筋肉の発達した、小さいゴリラのような猿の魔物。群れで生活し、ボスの命令には逆らわない。群れのボスを決める際は一対一の決闘を行って、勝った方がボスとなるが、敗者の命を奪うことまではしない。むしろ、相手が死に至るまで、執拗に痛めつけた者は、決闘を見守るウッド・エンプ達によって袋叩きにされ、命を落とす。群れ内でのルールを野生の戦闘にまで持ち込むことがあり、一対多の戦いで、なす術無くヤられる事も有る。

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