24,クエスト:呪われた正義 ②
前回の投稿は“ 06/15 00:00 ”です。
通路を進んで行くと、私はいつの間にかエントランスに戻れなくなっていることに気が付いた。
迷ってしまって、帰り道がわからないというわけでは無く、通路が無くなり壁になってしまっているのだ。
そのことに気が付いたのは、通路脇から飛び出てくる何体目かのスケルトンを倒した後のこと。
最初にエントランスから覗いた通路には奥の壁がちゃんと見えていたはずなのに、一向にその壁にたどり着く気配がなく、奇妙に思い振り返ったところ道が消えてしまっていた。
試しに壁をガンガンと叩いてみるも、特に反応は無い。
仕方がないので、そのまま前進を続けていくのだが、先ほどから直進と左右の三方向に分かれる通路をずっと歩かされている。
私はずっとまっすぐ進んできたのだが、背後に壁ができたことに気付いてからは、スケルトンすら出てこなくなってしまった。
そこでようやく、もしかすると、正解のルートを引かない限り同じ道をぐるぐるし続けることになるやつでは、と感づいた私は、両腕のミニゴーレムにそれぞれ左右の通路を直進させてみることにした。
ゴーレムたちが私の体から離れ、通路を進んで行く。
おそらく、いままでスケルトンが頻繁に出てきていたのに、それが現れなくなったということはスケルトンないし敵が出現する通路が正解の道なのだと思う。
よくよく考えてみれば、敵がいるということはその通路を守っているということだし、その先に親玉なり元凶の装置なりがあるのは道理にかなっている。
おそらくこれで進展があるはずだと、通路に進むミニゴーレムたちを見つめていると、右の通路に進んだゴーレムが突然炎に包まれた。
すぐさま私も攻撃を受けたゴーレムの元へ転がり、ゴーレムに火をつけた放火魔を探すと。いかにも、炎を飛ばしますよといわんばかりに、杖とローブを身に着けたスケルトンが通路脇から姿を現した。
スケルトンメイジとβ版では呼ばれていた魔物だ。古びた杖に、フード付きのボロボロのローブ。スケルトン系の魔法職の中では最も初期に選択できるキャラクターで、使える魔法も多くは無かったはずだ。
魔術師の館なので出るだろうとは思っていたが、遂に魔法職と対面した私は先ほど攻撃を受けたミニゴーレムをちらりと見る。
ミニゴーレムは私と同じく“火耐性Lv2”を所持しているのか、スケルトンメイジの攻撃を受けてもけろりとしており、そのまま通路を直進し続けている。ミニゴーレムでこれなら特に心配することなく戦えるだろう。
直進するミニゴーレムには攻撃するという指令を与えていなかったため、ミニゴーレムは依然通路を直進していく。が、スケルトンメイジには自分へ危害を加えようとしているように見えたのか、杖を赤く光らせると、再びミニゴーレムめがけて魔法を放った。
再び、ミニゴーレムが炎に包まれるが、スケルトンが魔法を使っている間に私はスケルトンに近づいていき、生成した拳で殴りかかる。
ミニゴーレムに攻撃していたスケルトンだったが、流石に私にも意識を割いていたのか軽々と攻撃を避ける。私の攻撃を避けた際、スケルトンは後方に飛んで避けたのだが、その動きはあまりにも軽やかで、もはや浮いているかのようにも見えた。何か、スキルを使用したのだろうか。
ミニゴーレムよりも私の方を優先すると決めたのか、今度は私の方に向かって魔法を飛ばしてくる。
魔法の弾速は100kmほどだろうか、動き続けていれば私でも避けられそうだが、撃たれた瞬間、私が止まっていたら回避は難しそうだ。ただ、今回は今後の参考にしたいため避ける気はなく。そのまま魔法を食らった私は自分のHPを確かめた。
被ダメージは・・・4か。進化して魔法防御が上がったからか全然効かないな。
いや、そういえば“火耐性Lv2”がなかったらもっと入ってるのか。魔法使い系のプレイヤーと戦ったら勝てなそうだな・・・。
相変わらず不意打ちが一番強いなと思いながら、スケルトンに対し、お返しと言わんばかりにゴーレムを投げつける。
魔法よりもはるかに遅いそれを、スケルトンメイジは難なく回避するが、今回ゴーレムには攻撃するよう指示をしてある。着弾したのち、後ろから突進してきたミニゴーレムにスケルトンが気を取られている間に、もう一体のゴーレムをスケルトン目掛けて投擲。
ゴーレムがもう一体飛んできたことに気づき、スケルトンメイジは手に持った杖で何とかゴーレムを受け止めようとするが、近接職でもないスケルトンメイジが岩の塊をまともに受け止められるはずもなく、杖をへし折りながらゴーレムが着弾する。
直撃を食らったスケルトンメイジは体が半壊しており、起き上がることができなくなった骸骨の頭蓋をミニゴーレムが潰すことでスケルトンメイジとの戦闘が終わった。
このぐらいの魔法職相手であれば苦労はしないんだろうけどなぁ。
はじめての魔法職との戦いを終え、ドロップアイテムを回収しながら私はまだ見ぬ敵に思いを馳せる。
スケルトン系の魔法職が水属性の魔法を使ってくるイメージは無いけれど、食らったらどの程度ダメージを受けるのだろうか。“火耐性Lv2”で軽減して4ダメージなんだから、相当食らうんだろうな。検証しておきたいけど、オーバーキルになってできなさそう。
強みと弱みがはっきりしすぎているピーキーな性能であるからこその苦労に、頭を悩ませながらも、なんだかんだこうやって悩みながら頑張って戦う方が好みだったりする。
館の進み方も分かったことだし、どんどん進もう。と、私は再びゴーレムを切り離し、次の通路に進むよう指示をする。
魔法職と今後やり合っていくためにはまだまだ経験が欲しい。
次もメイジが出ないかなと期待しながら私は先へ進んで行った。
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三方向への分かれ道を魔物がいる方へ、魔物がいる方へと進んで行き、どんどんと館の奥へと向かって行くと遂に通路が開け、領主の執務室前のような荘厳な扉が目の前に現れた。
この先に今回の元凶となるものがあるのだろうと、扉を開ける前に一度HPやスキルポイントの確認を行う。
すべてが全快になったことを確認し、意を決して扉を開くと、そこには体高160㎝ほどの漆黒の鎧を纏ったスケルトンが鎮座していた。
鎧を纏ったスケルトンは、今まで見たどのスケルトンよりも太い骨をしており、その両手には全身を覆えるほど大きな刀身を誇る大剣を握られていた。
このスケルトンが元凶であると断定した私は、問答無用でゴーレムを投げつけた。
侵入者に気づき目を赤く光らせたスケルトンは、ゴーレムを避けることなく剣の腹で受け止めると、そのまま私に目掛けて突っ込んできた。
床に転がるミニゴーレムを無視して、突撃してくるスケルトンに対し、私は再びゴーレムを投げつけることで牽制しようとする。しかし、スケルトンはその勢いを緩めることなく、ゴーレムを大剣で弾き飛ばすと、私に斬りかかってきた。
まさか、そのまま突っ込んでくると思わなかった私は、ゴーレムを生成してガードしようと試みるが、間に合わず、スケルトンの巨大な剣をまともに食らう。
高い防御と“斬撃耐性Lv2”があるため、大したダメージにはならなかったが、それでも3ダメージと耐性と防御をもってしても抑えきれない一撃を貰ってしまった。
弾き飛ばされたミニゴーレムたちが、スケルトンの元に群がり足を押しつぶしたり、突進して体勢を崩そうとするも、今までのスケルトンとは格が違うのか、気を取られたりよろめくこともない。
纏わりつくミニゴーレムを完全に無視して、私に剣を振るい続けるスケルトンに対し、何とか岩の拳でガードをするが、まともに攻撃を食らわないだけでダメージは加算されていく。
ミニゴーレムたちの援護では、スケルトンを崩すことができないと悟り、拳によるパンチで剣を弾き返し何とか相手の体勢を崩そうとするが、スケルトンの力は思いのほか強く、反動で私自身も弾かれてしまい、距離ができるだけで反撃する隙を作ることはできなかった。
ゴーレムの投擲も、ミニゴーレムによる下段崩しも、拳でのパリィも効かない。
打つ手がない・・・なんてことは全然ない!
進化によって強化されたのはスキルだけではない。
再び私との間合いを詰め、大剣を振りかぶって斬りかかろうとするスケルトンに対し、私は地面を蹴り拳ではなく体そのもので斬撃を受けに行った。
元祖疑似パリィ。
全体重の乗った突進は、スケルトンの大剣を弾くだけでなく、その体を押し倒した。
進化によってサイズが上がった私の体は、ハイオーク戦の時のように弾き飛ばされず、そのままスケルトンのマウントポジションを奪い取った。
地面にひれ伏すスケルトンに対し、私は拳を振り下ろす。
横たわったスケルトンは何とかその攻撃を大剣でガードするが、片手では重い大剣を扱いきることはできず、攻撃の衝撃でガードが崩れる。
その隙を逃すはずもなく、一撃、又一撃と拳を振り下ろし、スケルトンの鎧ごと押しつぶす勢いで攻撃を繰り返す。
何度かガードを試みるスケルトンだったが、体勢の有利が覆ることは無く、最後は全身を使ったプレスで押しつぶされガラガラと崩れていった。
スケルトンとの一戦を終え、フーッと息を吐く。
一瞬ヒヤッとしかけたが、最後の方は一方的だった。やはり、剣士相手にはめっぽう強い。
しかしながら、合計で30ほどHPを削られてしまっている。ポーションがないと剣士以外の強敵とは戦えないかもしれない。
館のボスらしきスケルトンとの戦闘を終え、ボスを倒したら終わりなのか、ボスを倒してさらに何かしなくちゃいけないのか、クエストクリアの有無で確かめようとしていると。まだ、ドロップアイテムを拾っていなかったことに気づく。
神託のボスよりは格が低いだろうが、クエストのボスも一般のモンスターよりは格が高いはずで、そんな魔物のドロップ品を忘れてはいけないと、崩れ落ちたスケルトンの方を見ると、事切れたはずのスケルトンがカタカタと動き始めていた。
揺れる骸骨に不気味さを覚えていると、屋敷の床から重く絡みつくような煙がスケルトンを包み込むように立ち込めてきた。
折れていた骨や鎧の破片がどす黒い煙に包まれ、再度その体を形成していく。
大剣が再びその手に戻り、復元された体からは先ほどの戦いを微塵も感じさせない力強さを感じる。煙に包まれ復活したスケルトンの瞳には赤い光が灯り、数分前と同じように私を睨みつけた。
再戦を予感し、両手のゴーレムに力を籠めるが、これから始まるのはただの再戦ではなかった。
スケルトンの後方に、再び薄暗く見通すことのできない黒煙が広がる。
怪しくたなびく煙の中から現れたのは、屋敷で見たスケルトンメイジが貴族になったかのような、煌びやかなローブを身に纏った魔法使いのスケルトン。
そのスケルトンが、手に持ったこれまた豪華に装飾されたワンドで地面を突くと、触発されたかのように、大剣スケルトンが目を一層輝かせ、大きく咆哮した。
RPGのド定番、連戦ボス。
どう考えても黒幕な魔法使いのスケルトンに注意を払いながら、ひとまず私はポーションを呑んだ。
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