20,進化
『レベルが上がりました。進化可能です。』
空が赤く染まり始めている夕暮れ時。
これからスケルトンが出てこようかというタイミングで、最後のマンティスを倒し、お待ちかねの進化の時間がやってきた。
ゲーム内で丸三日、この時のために狩りをしていたから、なんだか感慨深いな・・・
子を見つめる親のような穏やかな感情に包まれながら、私はメッセージに表示された選択肢から『YES』を選択する。
『進化先を選んでください。』
聞いていた話と同じように、進化先を問うメッセージウィンドウが表示される。
が、それはミノタウロスさんの話から私が予想していたものとは大きく違っていた。
えっ・・・・・・・・・
『 ラージゴーレム
ストーンゴーレム
ゴーレムディクター
ファイアゴーレム
マーブルゴーレム
ゴーレムファイター
ゴーレムリーダー 』
多すぎる!
表示された選択肢の量に私は驚く。
ミノタウロスさんの時は二択だったと聞いていたが、その三倍以上の進化先が表示されてしまった。理由が全くわからないので、とりあえず、フレーバーテキストを読んで進化先を選ぶことに。
見た感じ、ラージゴーレム、ストーンゴーレムはゴーレムの正統進化といった感じだ。ラージゴーレムはその名の通り、今の姿よりも大ききくなったゴーレム。そして、ストーンゴーレムは少し体が大きくなるだけでなく、「土魔法」を扱えるようになり、魔法を扱いながら戦うゴーレムといった感じだ。
双方ともに手は無いものの、ラージゴーレムは今後も巨大化していくことが予想され、ロマンにあふれる。ストーンゴーレムの方も、魔法によって遠距離攻撃や、坂を作って加速することも考えられ魅力にあふれていると感じる。
ゴーレムディクターは私の「採掘」がレベル2になっていることから選択可能になった進化先の様だ。
大きさは変わらないが、手が使えるようになり、採掘もより得意になる。「エコー」や「精錬」といった炭鉱夫さながらの能力になるため、鍛冶職のクランにでも入っていたらかなり重宝されそうな能力だが、私はソロなので、興味はありつつも選択肢からは外す。
ファイアゴーレムとマーブルゴーレムは私が宝石類を持っていることから派生する進化先で、野良のゴーレムたちが宝石類を喜んで集めていたのはこれが理由のような気がする。
ファイアゴーレムはインベントリの「ルビー」×3を消費することで進化することができる種族で、体の形や大きさは変わらないが、全身にひびが入り赤い筋が走るという、見るだけで熱くなってきそうな見た目となる。「熱い体」というスキルを手に入れ、転がりのような直接攻撃で接触した際に熱による追加ダメージを与えられるようになるが、さらに水属性に弱くなるようだ。ここまで特化していくと行動範囲が限られてしまう可能性が出てくるので今回は却下だと思う。
マーブルゴーレムは5種類以上の鉱石をインベントリから消費することで進化することができる。
こちらも大きさは変わらないが、ファイアゴーレムと違い手が生えており、灰色の体表からは色とりどりの鉱石が生成される。「自己採掘」という特殊なスキルを持っており、体から生みだされる様々な鉱石類を自分で採集できるようだ。お金稼ぎができるという点であれば、ゴーレム種の商人的立ち位置なのだろうか。面白いとは思うが、戦闘に不向きすぎるのでこちらも選択しないだろう。
ゴーレムファイターは神託で戦闘行為を行うことで派生する種族らしい。ハイオークというような上位種でなくとも、戦闘を行うだけでこの派生が現れるようだ。
外見は一回り大きくなり、手も生える。体の色は変わらないが、手のみ黒色の石でできていて、いかにもこの手で殴るだろうことがわかる。種族スキルに「ファイター」が加わることで素手での戦闘にバフが入るようだが、速度が大きく変わるということは無さそうなので、近距離で戦う際の択が増えるということだろう。
最後にゴーレムリーダー。本来群れをつくらないゴーレムが集団戦を経験することで、派生するゴーレムの様だ。
体は一回り大きくなり、手も生えてくる。しかし、厳密に言うと、この手はただの手ではなく、時間経過で消えてしまう部下ゴーレムであるらしい。「ゴーレム生成」というスキルを使用することで自分の体に手を生やすことができ、それに命令したり、投げつけることで自立させ、まるで群れで戦うかのように集団戦ができるとのこと。
ゴーレム生成のリキャストや持続時間等はわからないが、“手”や遠距離攻撃(?)もあり、かなり面白そうな種族といえる。欠点を上げるとすれば、なんだか存在自体が悲しい種族であること。仲間との共闘を忘れられずに、お人形あそびをしているようでちょっと心に来る。
これら7種類のゴーレムから私が興味を持っているのは4種。正統派二つとファイター、リーダーの色物2種だ。これらはそれぞれに強みがあり、戦闘もしっかりできる種族だ。正統派2種が手を持たないことを考えると、色物2種の方が望ましいとは思うが、ラージゴーレムに関してはどこまで大きくなるのかロマンにあふれているところがある。
ファイターとリーダーであれば、個人近距離高火力と集団中距離中火力という分け方になるのだろうか。
バザールで回復薬を買えるようになった今、近距離でガンガン殴っていくことも可能なので単純に火力を出すならファイター一択のような気もするが、リーダーでできる疑似集団戦に興味がないかと言われれば嘘になる。どうしたものか。
事前情報と乖離した多すぎる選択肢に私は頭を悩ませる。
きっと、ここで選んだ種族からどんどんと性能が特化していって特殊な個体へとなっていくのだろう。未来を想像して私がどんなプレイをしてみたいのかよく考える。
うんうん唸りながら十分ほど考えた結果、私は自分がどの種族に進化したいのか決めることができた。
多分、この種族が一番私が面白いと思えるゴーレムだ。
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種族:ゴーレムリーダー Lv1
HP:75/75
MP:12/12
力 :25
魔力:8
防御:65
魔防:25
速 :5
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<通常スキル>
「転がり」:Lv1 「採掘」:Lv2
<種族スキル>
「火耐性」:Lv2 「風耐性」:Lv2
「斬撃耐性」:Lv2 「水脆弱」:Lv5
「ゴーレム生成」:Lv1(60/60)
<パッシブスキル>
「体重」:Lv1 「飲食不要」
「不思議な瞳」
<称号>
「こだわりのPK」
「ジャイアントキリング」
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『ゴーレムリーダーに進化しました。』
視線が少し高くなり、自分の体が変化したことを実感する。
私はゴーレムリーダーを選んだ。
決め手は一番いろんなことができそうだったから。でかくなることも、近距離戦もゴーレムリーダーでできないことではない。
それに「ゴーレム生成」が気になりすぎる。自分でNPCを作って共に戦うことにはかなり興味がある、体から分離して動き出すというのもロマンがあっていい。早速使ってみよう。
あたりがどんどんと暗くなってきているが、一回だけ、一回だけと心の中で唱え、ゴーレム生成を発動する。
ポンっと一瞬で私の右半身に直径50㎝ほどの岩が現れる。その岩に向かって「動け」と命令すると、ボトリと私の体から離れ、足を生やしてのそのそ動き始めた。
す、すげー・・・!
自分の生み出したゴーレムが行く当てもなくぐるぐる歩き回っている姿をキラキラとした目で見つめながら、私は進化の凄さを実感していた。
ブクマ&評価ありがとうございます。
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