19,マンティス狩り
ガキン!!・・・ガキン!!
マンティスの鎌が縦横無尽に振るわれる中、私は引くことなく距離を詰め、マンティスの足目掛けて倒れこむ。
ギチチッ!!
足を潰すと、痛覚が存在するのか、マンティスは苦痛を訴えるかのようにのけ反り呻く。その反応を知っていたかのように私は、さらに足を潰していき、マンティスの機動力を奪っていく。
私が岩場でレベル上げを初めて、既に3日が立とうとしていた。
私が岩場で狩れる魔物はマンティスとロックリザードのみであり、その中でもマンティスばかりを狩っていたため、今ではほとんど作業のような気持ちで戦闘を行っている。
おかげでインベントリにはマンティスの素材ばかりがたまっているが、数多く狩ったこともあり、レアドロップとして「マンティスクロー」という武器を手に入れることができた。攻撃力+5と、金策があまり進んでいない人であれば手軽に強化できる装備として重宝されるかと思い、ハイオーク武器と同様バザールで売りに出したところ、掲示板に書き込むより早く売れてしまった。今はこれぐらいのレベルの武器が適正なのだろう。
マンティス武器は700Gで売却したため、前回の残りお金と合わせて、追加で2個のポーションを買った。夜の掲示板作業でも、少し調べたが、やはり現状お金はポーション等に変えておいた方がロストしないという点で無駄がないという結論に至っていた。
そのため、無事に買い手が見つかった「豚骨棍棒」の方も、私は全てポーションに変えていた。これで私が所持しているポーションは合計で10個。HP200分の超回復力であり、ここまでの量の回復薬を持っているプレイヤーはそうはいない、大満足だ。一応ポーションを買う前に、他プレイヤーの店も見てみたが、私が入手して扱えるものは見当たらなかった。
だが、唯一「スクロール」という魔法具には興味を抱いた。
スクロールとは、魔法が込められた羊皮紙のことで、使い捨てではあるが使用者のMP消費なしに魔法を扱うことができるという優れモノだ。私のような魔法弱者にはうってつけのアイテムであり、それもあってかなり興味を惹かれたのだが、込められている魔法が「フラッシュ」という明かりを灯す魔法だったのでガックリしてしまった。
私としては、遠距離攻撃ができる魔法や、一瞬でどこかへ移動できる魔法が込められていれば、ドンピシャ大喜びと言ったところだったのだが、そんなにうまくいくこともなかった。
売主もこのスクロールにあまり価値を見いだせていないのか、500Gで売っていた。若干高いような気がしなくもないが、自分の使えない魔法を扱えるようになると考えると、安いのかもしれない。
一応、検証スレの住人に報告したところ検証班の一人が血涙を流しながら購入していた。訪問販売みたいな気分になって後味が悪かったが、インベントリから直接使用することでスクロールを使える、という情報を手に入れたので、私でも問題なく扱えるとわかった点は良かったと思う。
スクロールの作成方法や入手方法についてはわかっておらず、検証班の人に聞いてみても、知り合いや掲示板にも書き込みは無いとのことで、今後の進展待ちということだった。販売していた売主に話が聞ければとも思うのだが、あいにく、フレンドでもない限り、個別メッセージは送ることができないので、親切な誰かが掲示板に公開してくれるのを待つしかない。
拠点の仕様検証については、検証スレの人と協力して以下のようなことが分かった。
・拠点内で攻撃されることは無い
・ターゲッティング状態で拠点に入ると、ターゲットが解除される
・拠点内に攻撃は届かない
・拠点内でダメージを与えることはできない
・フレンドの拠点には許可があれば入ることができるが、バザール、リスポーンの利用はできない
・パーティメンバーの拠点には許可があれば入ることができ、リスポーン地点として利用することもできるが、バザールは使用できない。
・クラン、ギルドメンバーの拠点については検証できていない。
・拠点をフレンド、パーティの所有物として扱うこともできるが、その場合、メンバー1人1人の拠点所有数に1加算される。
・拠点を一度放棄した場合、同じ拠点を同一人物(フレンド、パーティ)が利用することはできない。
ソロプレイでも、パーティプレイでも拠点の数が同じようになるよう、配慮がなされているようだった。パーティを組めば、拠点を持っていなくとも、リスポーン地点として扱えるという点はソロにはない利点だが、これを罰してしまうと集団戦で敗北した際にバラバラの地点にリスポーンしてしまうことになるので致し方ない。
クランやギルドについては、現状組んでいる人が検証班にいなかったので、調べることができなった。しかし、検証班内ではこの点を検証できないことよりも、拠点内でダメージが与えられない事実に対して残念そうにしていた。おそらく、拠点内でダメージ量等の検証を行いたかったのだろう。私も、拠点内でダメージ計算ができるのであればその仕様を利用できたかもしれないが、あいにくソロプレイなので、そもそも試す相手がいない。
そして、仮説ではあるが、セーフゾーンの発生場所はプレイヤーごとに違い、プレイヤーがプレイしている魔物の生息地のみに現れるのではないかということが判明した。
これは私もそうなのだが、他の拠点所持プレイヤーも、多くの場合が自分と同種を見た、もしくは同じような種族を見た場所でセーフゾーンを発見しており、信憑性は高いと考えている。
ただ、例外もあり、とあるドライアドプレイヤーが神託に従い海岸沿いの洞窟でボスを倒したところ、その洞窟を拠点として入手することができたらしい。
ドライアドは本来森に生息する魔物であり、体が植物なので、海の近くに生息はすることはできない。神託の報酬と考えれば、完全な例外としてしまってもいいのかもしれないが、結論を出すのはもう少しサンプルが集まってからでもいいだろうということになった。
ドシン・・・
そんなことを考えているうちに、もう何匹目かもわからないマンティスを倒すことができた。順調にマンティスを狩り続けた結果、現在、私のレベルは19。進化まであと1だ。
今朝、19レべに上がったばかりなので、20レベルまではもう少し時間がかかるが、今日中に上げることはできるだろう。このまま、マンティスを狩り続けて、岩場からもおさらばだ。
岩場から出ることで拠点は、ほぼ使えないも同然になるが致し方ない。拠点の保有数は一つではないようだし、またどこかで見つかることを祈ろう。そしてできれば、その頃までにポーションを使い切ることも心掛けたい。回復系は残しておいてもいいことは無いと昔から相場が決まっている。使えるタイミングが合ったらガンガン使って行こう、出し惜しみは無しだ。
回復薬を複数手に入れ、今後ハイオークのような強敵が出てきた際にも、タイマンである程度勝負ができるようになったことを確信する私は、進化によってさらなる強化をするため、再びマンティスを探しに出かけるのであった。
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このゲームのリスポーン地点は、“同一エリア内の拠点”>“集落、街、村”>“エリア入り口”、と優先度が決まっている強制リスポーンであるため、わざとデスしてテレポートという手段は同一エリア内でしか使えません。
一度登録した拠点を破棄した際に二度とそのセーフゾーンを拠点として登録できない理由は、ソロプレイヤーが不遇になりすぎるからです。
登録、破棄が無限にできてしまうと、パーティメンバーABCそれぞれが拠点を一つずつ持っていた際、破棄登録を繰り返し、全ての拠点をリスポーン地点以外の目的で使用できてしまいます。そのため、一度パーティで登録した場合、そのうちの一人を解除する場合でも全員が同拠点を使用できなくなる仕様になっています。
ソロプレイヤーが自身所有の拠点をパーティ結成の際にパーティ全員の所有にしたいと考えた際は、課金アイテムを使えばパーティの所有に変更することができます。
ただし、破棄に際したルールは変わらないので、登録を解除する場合、全員が同拠点を使用できなくなるだけでなく、そこからソロ用に戻すこともできません。
『インベントリ』
ポーション×10
マンティスの欠けた鎌×27
マンティスの外骨格×36
マンティスの翅×23
インセクトアイ×22
「マンティスクロー」×1
ロックリザードの外殻×2
ロックリザードの爪×1
ロックリザードの牙×2
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今日はもう一話投稿するかもしれません。