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18,拠点

 突然現れたメッセージウィンドウに私は動揺する。


 外を見ると、依然スケルトンたちはこちらに入ってくる様子はなく、見向きもしない。さすがに、ここで拠点化を了承することで事態が悪化することは無いだろうと、とりあえず、ゲーム側からの提案を承諾して様子をみてみることに。


 『“巨石の岩窟”を新しい拠点に登録しました。』


 新しいメッセージが流れ、洞穴を拠点として登録すると、薄暗かった洞穴の中が、ぱぁっ、と明るくなり、外でたむろしていたスケルトンたちも見えなくなった。


 仕組みは理解できていないが、偶然手に入れることができた拠点によって、三度目のリスポーンを避けることができた私は、安堵の息を吐き出す。



 しかし、このゲームに拠点の仕様などあったのだろうか、β版の情報や、掲示板を見ている時にそんな書き込み一つも見たことは無かったが・・・。いつの間にか、新しく要素として追加されたのだろうか。



 私がログアウトしている最中に何かがあったのかと、掲示板を開き、検証スレや攻略スレをのぞいてみると、どうやらゲーム内で二日ほど前から各地でこのような、所謂「セーフゾーン」が発見されるようになったようだ。

 魔物プレイヤーがセーフゾーン内に入ると、拠点化するかどうかのメッセージが現れ、了承することで自身の拠点となるらしい。詳しい仕様についてはまだ検証中のようだが、現時点で数十か所の拠点が発見されたという書き込みが見られる。全体のプレイヤー数を考えれば、かなり少なく、発見したプレイヤーの証言を見るに私と同じく、たまたま見つけたプレイヤーが多い印象を受けた。


 所有しているプレイヤー数が少ないからか、できることが多いわけではないらしく、リスポーン地点、体力回復高速化、バザール、の三点のみが拠点で行える行為らしい。

 その中でも、バザールについては拠点を持っている大きなアドバンテージになるのではと、浮足立ったが、どうやら各集落でもできるようになっているらしく、拠点を所有している魔物プレイヤーのみに与えられた特典というわけでは無かった。

 このように、拠点を所持したからと言って大きく変わる点は特になく、掲示板では、拠点を所持しているプレイヤーが増えれば、拠点でできることも増えていくのだろうと予想されていた。そのため、魔物プレイヤーの中ではセーフゾーンを探すことがちょっとしたトレンドとなっているようだ。



 できることが少ないとはいえ、私のように集落をつくらないタイプの魔物からしたら、喉から手が出るほど欲しい機能だ。特にバザールなんて今までなかったんだから、皆躍起になって探すんだろうな。



 プレイヤー間で差が出ないような配慮がなされているかと思いきや、群れをつくらないプレイヤーにとって、バザールを扱えるかどうかは大きな違いとなる。

 手に入れられた幸運に感謝しながら、私も早速バザールで取引を行ってみることにした。



 バザールの仕様としては、各プレイヤーが自身の商品に値段を付けることによってアイテムを販売できるようになる。プレイヤー間で交渉を行って売買を行うことはできず、そのような行為は直接取引で行うようにと明記されていた。


 また、素材系のアイテムを販売することはできないらしく、加工貿易チックな稼ぎ方はできないようだ。素材系のアイテムが欲しいのであれば、これもまた直接交渉か、集落の露店等では売買が可能とのこと。なので、全ての交易がバザールで完結するわけでは無く、お金の力が万能になるわけでは無いようだ。

 私が持っているアイテムの中でも、宝石類はこのルールに該当し、バザールで買うこともできなければ、売ることもできない。石とゴーレムは関わりが深そうなので、現状売り払うつもりはないが、いらなくなった時のためにも、積極的に集落は訪れた方がいいのかもしれない。


 ポーションのような多くの人が販売、購入するアイテムについては、運営が一律同じ値段で購入、販売するようになっていて、プレイヤー間で差が出ないようになっている。プレイヤーのレベルが上がれば上がるほど、生産力に差が出てくるからであろう。こちらに関しては私もかなりお世話になることが予想されるが、先ほど確認したところ、ポーション(小【HP20回復】)1つでまさかの500Gだった。シビアなことに変わりはない。


 

 バザールの仕様をある程度確認した私は、とりあえずの軍資金稼ぎに、例の「豚骨棍棒」を売りに出すことにした。

 この間、掲示板を見た際に、攻撃力+7の武器を1000Gで購入したと書いてあったので、ここは3000Gで売りに出すことに。

 4000Gぐらいの強気な値段で売りに出してもよかったが、この値段にしたのは意図がある。

 まず、現状魔物プレイヤーが資金を得る方法があまりないということ。

 素材を売れないため、いくら魔物を狩っていたとしても、銭に変えることはできない。そのため、お金を持っているのは集落で売買を行っているものか、神託やクエストをクリアしたものということになる。

 集落での売買がどれほどの値段になるかわかないため、私は神託での報酬を基準に考えることになる。私が上位種であるハイオークを倒して得た資金が2000G。おそらく、現在、神託でこれ以上の金額を稼いでいるプレイヤーはいないだろう。さらに、その次に高価だと考えられる宝石類も、まともな方法で手に入れることができるのは琥珀や水晶の欠片ぐらい。これらのことから、普通のプレイヤーが全アイテムを投げ売って得られる金銭が3000Gほどだと判断した。



 と、まぁ、色々考察垂れ流したのだが、ぶっちゃけ私は、あのミノタウロスさんの財布を想像してこの値段を設定した。

 私と同じく、上位種を倒して、2000Gと何かしらのドロップ品も手に入れただろう。掲示板も見ているようだったし、私の棍棒を狙っているんじゃないかなー、と考えている。


 インベントリを操作し、棍棒を売買に出し、金額を3000Gに設定する。


 自身の販売欄を確認し、きちんと棍棒が売りに出されていることを確認すると、一応宣伝のため掲示板にも一言書き込んでおいた。

 ワクワクとした気持ちで、ログを眺めているのもいいが、そんなに直ぐ売れるわけもないので、自身の買い物もしてしまう。


 以前からポーションを買うことを決めていたため、運営が販売しているページに行き、買えるだけのポーションを買った。

 少しぐらいお金を残しておいてもよかったが、この間デスポーンしたことによって、2000Gあった私のお金が、1400Gに減っていた。一度のデスで3割持っていかれるらしい。アイテムよりシビアだ。

 拠点に貯金機能でもあれば話は別なのだが、そのような機能はおろかアイテムボックスさえないので、とりあえず、買って持っておくことがデスを防ぐ意味でもよいと考えた。


 合計1000Gを使って、私は2個ポーション(小)を手に入れることができた。


 これで、私のHPは実質2倍。継戦能力が飛躍的に上がり、一人でもそれなりに戦えるようになっただろう。残金が400G余ってしまったのが少しもったいないが、現状マナポーションすら売っていない状況なので、他に欲しいものがない。なんとかデスしないようにして次につなげよう。



 全然時間は立っていないが、もう一度、自身のログを確認して棍棒がまだ売れていないことを確認する。


 

 朝にならないことにはここから出ていくことはできないが、日が昇ったら、岩場でレベル上げをしてしまおうと考えている。

 狩れる魔物は少ないし、経験値効率も良くないが、どれほど進めば岩場から出られるのかわからない以上、一度進化してしまって、スケルトンに負けない強さを手に入れてしまいたい。


 私がどのように進化するかわからない以上スケルトンに勝てるようになるかなんてわからないが、少なくとも、時間がたてば、バザールからまとまった資金を手に入れることができ、最悪の場合はポーションでゴリ押して岩場を脱出する手段もとれる。最善手ではないが、安牌だとはいえるだろう。


 しかし、昼間にレベルアップをするとなれば、行動できない夜にすることを考えておきたいが、特に思いつくことが無い。

 


 検証スレで拠点検証のお手伝いでもしようか・・・



 これ以上分かることは少なそうだが、現状できることはそれぐらいしかないので、さっそく私は掲示板から情報を集め始めるのだった。


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― 新着の感想 ―
[一言] 今のところ唯一の、環境で飛び抜けて高ランクの武器がポーション小6個分って、世知辛い…。
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