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12,神託の報酬

 落とし穴に落としたオークが光となって消え、コボルトたちがオークを倒したのだとわかる。

 オークが消えた穴からは光が差し込み、そこからは先ほどまでの、どんよりとした曇り空が嘘のように、晴れ上がった空を見上げることができた。


 フーッと一息つき、オークが戦っている場所の、真下に繋がるであろう通路を教えてくれたコボルトと共に地上へと戻り、激闘を終え、疲労困憊になっているであろうコボルトたちを労いに行く。


 彼らのもとに戻ると、案の定、全員がぐったりと地に伏しており、喜びの声を上げる体力が残っているものはいなかった。私の案内をしていたコボルトが、仲間を突っつくなどして起こそうとするが、戦いに疲れたコボルトたちはそれを拒否。今日の所はもう何もする気力がなさそうなので、唯一体力の残っている一匹と共に、コボルトたちを地下の住処に移動させ、ハイオークとの戦いその全てが決着することとなった。



 コボルトに犠牲者無し、神託もクリア。考えうる限りで最高の結果だ。ちょうど落とし穴を掘っている時にオークが落ちてきたのには驚いたけれど。



 戦線を離脱したのち、私はまず槍を失い隠れていたコボルトたちのもとに行っていた。そして、隊長と共に森の探索に来ていた寡黙そうなコボルトを、集落の住処が多くあるところまで先導していくと、コボルトも私の意図を理解したようで、オークたちが戦っている方角に伸びる通路をいくつか教えてくれた。

 力は強くとも、よろよろとふらついていたオークであれば、もう一度落とし穴に落とすことでコボルトたちがしっかり止めを刺してくれると考え、通路に落とし穴を掘っていたのだが、地上のコボルトたちの疲弊具合を見るに、そんなに簡単な話ではなかったらしい。

 私の目の前に落ちてきたオークもじたばたと尋常じゃない暴れ方をしていた。私が見ていない間に、また何かオークに変化があったのかもしれない。が、なんにせよ動きが止まったタイミングでうまく足を潰すことができてよかった。地上から何度か叫び声が上がっていたし、有効打にはなったようだ。


 また、神託をクリアしたことで、いくつかの報酬とハイオークのドロップアイテムを手に入れることができた。

 ハイオークのドロップアイテムは、


 ハイオークの牙×1

 ハイオークの太骨×3

 ハイオークの爪×2

 ハイオークの肉×6


 豚骨棍棒×1


 というラインナップ。

 ハイオーク素材で、肉以外は装備品に使えそうだ。コボルトたちが使うのであれば売りたいが、集落の状況的に買ってもらえるかわからない。肉は料理か?ハイ(・・)オークと付くぐらいだから、通常種の物より高価なのだろう。人間陣営の職業として「料理人」があったはずだが、魔物陣営にもコック職はいるのだろうか。いるのであれば買い取ってくれると思うのだが。オークの肉とハイオークの肉で、おいしさが変わるのであれば自分自身で食べてみたい気もするが、残念ながら、たいていのVRMMOはプレイヤーの知覚できる味覚に制限が加えられている。ゲーム内での食事に満足し、現実世界で飲食しなくなってしまうことを防ぐ処置だが、本ゲームも御多分に漏れず味覚に制限がかかっている。個人的には「極限にうまい!!」という味覚データを作ることができるのであれば体験してみたいが、何となく廃人になりそうな気がしないでもない。とりあえず、この肉もインベントリの肥やしとしておこう。


 そして、今回一番うれしいドロップ品である、「豚骨棍棒」。ハイオークが使用していた、先端に骨が埋め込まれた木製の棍棒だ。

 今まで武器を持った魔物と戦ったことがなかったということもあるが、私にとってこれは初めての武器ドロップだ。確定で武器が落ちることなんてないはずだから、結構運がいいはずだ。

 武器に特殊な効果は無く、通常の物理攻撃を与えるのみだが、上位種からドロップした武器ということもあり攻撃力が単純に高い。なんと装備するだけで攻撃力+15、私が装備できれば攻撃力はほぼ倍だ。もちろん、私に装備はできないので意味はないが、正直、現状最強の装備なんじゃないか?と思えるほどの性能だ。確か、掲示板に武器やアイテムの取引を行っているスレがあったはず。魔物プレイヤー同士での取引がうまくいくことは少ないだろうが、私の武器の性能がどの程度の物なのか確かめるためにも、一度覗いてみてもいいかもしれない。


 また、神託をクリアしたことによって2000Gと称号を貰うことができた。

 手に入れた称号は「ジャイアントキリング」。自分よりもレベルの高い相手からの恐怖に対し耐性を得る、と書かれている。称号は具体的にどの程度の効果が発動されているのかわからないので、テキスト以上のことは実際に検証してみないことにははっきりしないが、自分よりも圧倒的に強いハイオークを倒したため、強者との戦いに慣れ、必要以上に恐れなくなったということなのだろう。私はこれで称号を手に入れるのは二度目だが、嚙み合わせがよほど悪くなければ、称号はいくら持っていても良いものだと思う。そのため、称号が手に入ることは大歓迎だ、今後も神託には積極的に関わっていった方が良いかもしれない。実際、神託で得られるものが称号と金銭であることは固定なのかどうなのか気になるので掲示板で調べてみたいが、称号の効果についても少し聞いてみようと思う。


 しばらく、ハイオーク討伐に精を出していたから、掲示板も新情報で潤っているのだろうと少し、ワクワクとした気持ちになる。そして、ワクワクといえばだが、ハイオークを倒したことによって得た利益はこれだけでなく、私のレベルにも影響を与えていた。




 ――――――――――――――――




 種族:ゴーレム Lv14



 HP:46/46 



 MP:10/10





 力 :21



 魔力:3



 防御:40



 魔防:12



 速 :3





 ⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯


 通常スキル


「転がり」:Lv1  「採掘」:Lv2





 種族スキル


「火耐性」:Lv2  「風耐性」:Lv2



「斬撃耐性」:Lv2 「水脆弱」:Lv5





 パッシブスキル


「体重」:Lv1  「飲食不要」



「不思議な瞳」





 称号


「こだわりのPK」



「ジャイアントキリング」


 ――――――――――――――――



 格上相手と戦ったからか、一気に4も上がった。

 ステータスの伸びも相変わらず順調で、いつも通り魔法系の能力は全然上がらない。ゴーレムでも魔法を使う作品はいくらでもあるのだが、本作はそうではないのだろうか。

 種族スキルも相変わらずで、ここはおそらく変化しないのだろうと予想している。検証度合いも、いまだ、魔法を使う敵と交戦したことが無いので芳しくなく、そのうちばったり出会って、即死させられるんじゃないかとひやひやしている。

 と、ここまではいつも通りのレベルアップなのだが、今回はついに通常スキルのレベルが上昇した。求めていた「転がり」ではなく「採掘」だったが、もはや上がらないんじゃないかと思っていたので、上がることが分かっただけ万々歳だ。スキルのレベル上昇にも必要経験値があり、その量はスキルによって違うと想像するが、圧倒的に使う機会の多い「転がり」よりも先に「採掘」のレベルが上がったことから、もはや「転がり」のレベルが上がることはないのかもしれない。いや、だったら種族スキルの方に当てはまるのか?よくわからない。この辺りも掲示板に書いてあるのだろうか。



 まぁ、でも普通に考えて、私が俊敏に動けたら物理系の人らは私に勝てないもんな。バランス考えたら、私の素早さが上がらないのは当然か。



 少し、メタいが、実際現在のステータスからしてそうなのだから致し方ない。

 ただ、今回の戦いでも思ったが、速さが足りないとまず攻撃が当たらない。

 戦いに勝つのであれば、相手のHPを0にしなければいけないので、ダメージを与えることは必須だ。そのダメージを与えるための足がないというのは今後の大きな課題である。

 ハイオーク戦では、たまたまコボルトたちと共闘できたから良かったものの、そんな好都合な展開がずっと続くわけもない。また、神託で容赦なく格上と戦わされることもあると分かった以上、このまま楽観視はできない。何か対策を立てておかなければ。

 簡単な方法で言えば、魔物間で常にパーティ等を組むのが良いのだろうが、個人的にそれは受け入れられない。せっかく人間と違う見た目、違う種族にしているのにやってることが人間では、あまり意味がない。今回のようにNPCの魔物と偶然、一期一会で組むのなら、なんだか面白そうと感じることができるのだが、プレイヤーと組むのはちょっと違和感がある。

 また、今回コボルトたちと一緒にハイオークを倒したのだが、それも実はちょっと悔しかった。



 だって、どう考えても一番目立ってたの隊長でしょうよ、あれ。目立ちたい欲求があるわけじゃないが、私の神託なんだから私が一番活躍して…



 めんどくさいことを言っているようだが、要はソロでも戦える術を見つけたい。

 魔物のみんなで協力して倒すのも、もちろん面白いが、そもそも私はゴーレム。群れない魔物だ。掲示板にNPCと勘違いされて書かれた時にも感じたが、やはりロールプレイは大切で、面白い。ゴーレムとしてプレイすることを決めたのなら、あくまでゴーレムらしくいこうと決意する。


 当初決めたモットーをより大事にしていこうと再度心に決め、心機一転頑張っていこうと気持ちを新たにした私に、コボルトが一匹近づいてくる。何やら私に伝えたいことがあるようで、以前と同じように身振り手振りで色々説明してくる。



 なんだかんだお世話になったけど、私は今回、自分自身の気持ちを整理して、再確認することができたんだ。悪いけれど、コボルトたちに挨拶はせず、ここから出立させてもらうことに………

 えっ、新しい集落から迎えが来る?一緒に来てほしい?また、鉱石をくれる?族長にも挨拶を?





 ・・・っすーーーーー……





 私は、本当に仕方がないので付いていくことに決めたのだった。



 ―――――――――――――――――――――――




『魔物』


「コボルト」

森や荒野で群れを作って生活する、犬の頭を持った人型の魔物。群れの中でヒエラルキーを形成し、強いリーダーシップのもとで組織的な共同体として生活する。シーフ系のスキルを持っており、それを用いた侵略、略奪行為によって、他の種族との対立や争いがおきることがある。


「コボルトリーダー」

コボルトの中で戦闘や指揮に秀でたものが進化する魔物。コボルト時代よりも、さらに群れのことを考えて行動するようになる。現場指揮を行う立場になったことからか、シーフ系のスキルが伸びず、指揮官系スキルが上昇するようになり、集団戦闘の際に真価を発揮する。


「ハイオーク」

オークの上位種。不要な脂肪が消え、短かった牙が成長し、より肉弾戦を得意とするように。器用さがないため、基本的にはその体一つで獲物と戦うが、棍棒やハンマーといった単純な武器であれば振り回して使うことも。肉の品質が向上しているためか、よく他の魔物と戦っている姿が見られる。



『スキル』


「狂乱」

HPを使用することによって、ステータスを向上させるスキル。かなりの攻撃力上昇と敏捷さを手にすることができるが、攻撃対象が、生命の危機>距離が近い>知覚範囲内と限定され、かつ優先度の高いものからしか攻撃ができない。使用者のHPが尽きるまでスキルは継続されるため、使用にはリスクが伴う。



『称号』


「ジャイアントキリング」

弱者が強者を倒したときに得られる称号。自分よりもレベルの高い相手と戦った際に、微量の「恐怖耐性」が付与される。



『インベントリ』

 鉛: ×11

 石炭:×25

 銅鉱石: ×3

 琥珀:×10

 水晶:×2

 水晶の欠片:×1

 ルビー×1


 りんご×6

 木の実×12

 キノコ×3

 木の枝×16


 ハイオークの牙×1

 ハイオークの太骨×3

 ハイオークの爪×2

 ハイオークの肉×6


 豚骨棍棒×1

ブクマ&評価ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 速度、敏捷性もそうですが、手が欲しいですね。 それだけでもかなり変わってくるが…。
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