↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぶっきらぼう魔女は育てたい  作者: 桜乱捕り
4年目

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
32/379

31話、過保護なお守り

 私がサニーの母親となり、幸せにしてあげると決心してから、十日以上経っただろうか。


 約四年の月日を経て、サニーの母になる事を決心した。だが、ここは傍若無人が蔓延(はびこ)る迫害の地。

 最近ゴーレム達が沼地帯に来て、無作為に花を植えて花畑地帯へと変貌させてしまったお陰で、ある程度は秩序が保たれた空間になった。

 が、まだ完全ではない。新参者の来襲や不覚的要素の類(たぐい)で、サニーや私が突然死ぬ事だって充分あり得る。

 なので、その可能性を限りなくゼロに近づけるべく、ピースが生き返った時の為に作ろうと思っていたお守りを、サニーにあげる為に作っている。









「……よし、これで大丈夫だろう」


 十日間に及ぶ精密な作業を終え、手に持っていた丸く削った小石大のマナの結晶体を、天井にぶら下がっている炎が灯ったランプにかざす。

 風魔法で刻んだ呪文を読み上げ、漏れが無い事を確認すれば完成だ。クロフライムを通して水の精霊から貰った水のマナの結晶体が、新たな産声を上げるかの様に妖しく光る。

 形が綺麗に整った結晶体を砕くのは躊躇してしまったが、サニーを守る為だ。ありがたく使わせてもらおう。


 結晶体に刻んだ呪文は、全部で四つ。

 特定の条件下で発動する、強力で堅固な魔法壁。その魔法壁の中に私を召喚する事が出来る、独学で作った呪文。魔法壁の物理、魔法耐性を限界まで強化する呪文。

 魔法壁さえ展開してしまえば、残りの二つは引っ張られる様に発動する呪文も刻んであるので、特定の条件さえ満たしてしまえばいい。

 マナの結晶体は最上級の物で、魔力が枯渇する事は無いから、これだけで一生物だ。無くさなければ、永遠にサニーを守ってくれるだろう。


 そのマナの結晶体を、街に行ってドワーフに特注で作らせた銀色の十字架の首飾りにはめ込めば、これで完璧である。後は、サニーが身に付けるのみ。

 私は鼻から疲れが篭ったため息を漏らし、椅子から立ち上がる。そのまま純白の花が咲き誇る家の外に出て、ヴェルインに見守られつつ絵を描いているサニーの元へ歩んで行った。


「サニー、これを首から下げろ」


「ふぇっ? あっ、なにそれ!? すごくきれいっ!」


 これから守護を務める十字架を見せてみれば、サニーは青色の瞳を宝石の様に輝かせ、両手で大事そうに十字架を受け取った。

 その輝きを保った瞳で十字架を眺めていると、興味を持ったのか、ヴェルインが鼻先を近づけていく。匂いを嗅いでいる様だが、獣の性なのだろうか?


「ほ~ん、前から寝ずに作ってたやつか。確かに綺麗だな。で、ここまで時間が掛かったんだ。何か仕掛けでもあんだろ?」


 察しがいい。ヴェルインが意味のある質問を投げ掛けてくれれば、サニーも好奇心が芽生えて効果を知りたがるだろう。

 その証拠に、今まで十字架に向けていたサニーの顔が、私に向いていた。


「これを付けたら、なにかあるの?」


「ああ、それを今から説明する。だから首から下げてくれ」


「わかった!」


 私の言う事を素直に聞き、十字架の首飾りを頭に通していくサニー。首まで下ろし、金色の髪の毛をかき上げれば、これで準備は万端だ。


「下げたよ!」


「似合ってるぞ。それじゃあ、十字架の効果がちゃんと全て発動するか確認したいから……。ヴェルイン、サニーに攻撃をするフリをしてくれ。なるべく敵意を込めてな」


 唐突に攻撃をしろと命令したせいか、ヴェルインが驚いた右目を私に移す。


「なんで!? フリでも嫌だよ! 効果を口で説明すりゃあいいじゃねえか!」


「発動するか確認しないと意味がないだろ? 安心しろ。ちゃんと発動すれば、この地でサニーに攻撃が届く者は居なくなる」


 首飾りの効果を一部分明かすも、半信半疑でいるのか、ヴェルインの細まった右目に疑心が宿っていく。


「本当かよ? アルビスの攻撃や魔法すら効かなくなるってか? 流石に信じられねえぜ」


 実際、アルビスの攻撃を目にした者であれば、到底信じられないだろう。適当に腕を振れば大地が裂け。

 口から吐く猛火は、国だろうが山脈だろうが、海だろうが瞬時に蒸発する。が、私が作り上げた首飾りは、計算上全てに耐えうる強固さ誇る、はず。


「それを今から証明するんだ。最悪、攻撃をする意思を見せるだけでもいい。サニーの身に危機が迫れば発動するようになってる」


「最初からそれを言えよ。なら、爪を出すだけでいいな」


「ダメだ。効果の発動条件は、物理、魔法攻撃、敵意、殺意を対象にしてる。攻撃手段を出すだけじゃ発動しない」


「おい、それなら敵意か殺意を飛ばすだけでいいじゃねえか」


「む、そうか」


 久々に十日間も寝ずに作業をしてしまったせいか、頭がまるで回っていない。呆れているヴェルインに指摘されるまで、それにすら気が付かなかった。

 薬の副作用が薄れてからというものの、あまり無理が出来なくなっている。これからは夜が更けたら、サニーと同じ時間に寝るとしよう。


「お前って、たまに抜けてる所があるよな」


「今回は何も言い返せないな。私の事はいいから、早く試してくれ」


 不満が篭った右目で睨みつけてから、サニーに顔を向けるヴェルイン。そのまま尻尾を左右に揺らし続けていると、鼻から息を漏らしながら肩を落とした。


「しゃーねえ、やるか。……ぶふおっ!?」


 ヴェルインが僅かながらの敵意を出した途端。サニーの首から下げていた十字架にはめ込んだマナの結晶体が、淡く光り出す。

 同時に、透明色の魔法壁がサニーの体を覆い、急激に広がっていくとヴェルインがそれに巻き込まれ、弧を描きながら後方へ吹っ飛んでいった。

 その様を目で追っていると、足元が眩く輝き始めたので、顔を地面に移す。そこには幾何学模様の魔法陣が現れていて、視界がグニャリと歪み、突然目の前が暗くなった。

 一瞬だけ胃がふわりと浮いた感覚に襲われ、視界が急に晴れたかと思えば、いつの間にか私はサニーを守っている魔法壁内に立っていた。


「……成功したのか?」


「あれっ!? ママの声が聞こえる! どこにいるの!? 暗くてわかんないよおっ!」


「む?」


 真下からサニーの叫んでいる声が聞こえてきたので、地面に顔をやるも、そこにはサニーの姿がどこにも見当たらない。

 前を向いてみるも、地面に突っ伏しているヴェルインが居るだけ。右側は、花の手入れをしているクロフライム。

 左側には、扉が開きっぱなしになっている私の家。背後には、元気に生い茂っている木々と、柔らかな風に吹かれている純白の花々のみ。

 おかしい、サニーがどこにも居ない。しかし、声は聞こえる。一体どうなっているんだ?


「サニー、どこに居るんだ?」


「わかんない! ママこそどこに居るの!?」


 やはり真下からサニーの声が聞こえてくる。それも、私の体の真下からだ。……もしかして、私が着ているローブの中に居るのか?

 あまり当たってほしくない予想を立てつつ、ローブを下から捲ってみる。すると中には、ちょこんと座っているサニーの姿があった。


「あっ、いたっ! どこに行ってたの!?」


「……改良の余地ありだな」


 今の召喚で下手したら、サニーを踏んづけていた可能性がある。私の召喚場所をサニーの上ではなく、横になるよう調整しておかねば。

 私が急に居なくなって不安になってしまったのか、目に薄っすらと涙を滲ませているサニーが、ローブの中から這い出てくる。

 立ち上がると私に向かって両手を伸ばしてきたので、そのままサニーを抱っこし、安心させる為に頭を撫でてやった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。