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【第五章開始】竜人少女と奴隷の少年  作者: 大久 永里子
第二章 少年と竜人
83/239

83. 大好きだから

 竜人の少女が目を上げる。

 少し困ったような表情かおだった。


「母の記憶で、ヤマタの地理なら少しは分かると思ったんだが。」


 その言葉に驚き、少年は少女を改めて見やった。

 ラスタが突然母親の話を始めたのは、この場所を突き止めようとしてくれてのことだったらしい。



  ―――――――――でも自分の母親と父親のことが気にならないなんてこと、

  あるだろうか。



 ナギの意識はまだラスタの両親おやの話から離れられなかったが、竜人少女は小首を傾げると、次の疑問を口にした。

「――――――――――それでわたしはどうして、ナギの所に来たんだ?」



 牛が益々落ち着きのない様子を見せていて、時間に追い立てられていることを意識したが、この質問を通り過ぎることは出来ない。


 ナギは卵だったラスタを拾った日のことを、出来るだけ正確に少女に語った。



 話しながら、ナギは胸が苦しくなるのを感じた。



 ラスタは自分のことを、親だと思っているのかもしれない。



 そう考えたことが小さな竜を、隠しながら育てる大きな理由になっていた。


 それが思い違いだったのなら、自分は、自分とミルと仲間達のために、ラスタをただ犠牲にしたことになる。



「そうか。ならナギが拾ってくれなかったら、わたしはまだ生まれていなかったな。」

 

 話が途切れた時、ラスタはにこにことそう言ってくれたが、ナギの罪悪感は消せなかった。



  自分が拾わなければ、ラスタは家畜小屋こんなところで育つことはなかった。



「ごめん。………こんな所で育てて。」

 微かに俯き少年がそう言うと、竜人の少女はきょとんとしたように目をしばたたかせた。

「不自由なかったぞ。」


 それはラスタが、牛小屋しか知らないからではないかと思う。


「ナギが拾ってくれてよかった。」

 だが少女は笑顔でそう言うと立ち上がり、なぜか誇らしげに胸を張った。




「ナギのことが大好きだからな!」




 光に包まれた少女の満面の笑みを見た時、胸に何かを打ち込まれたかのように、ナギはその場所に強い痛みを感じた。




 その時。




 がちゃり。




 扉の外で、かんぬきがストッパーに当たる音がした。



 はっとしてナギが扉を見やるのと同時に、ラスタはぽんっと、微かな音を立てて消えた。


読んで下さっている方、今日たまたま読んで下さった方、本当にありがとうございます!


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