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【第五章開始】竜人少女と奴隷の少年  作者: 大久 永里子
第二章 少年と竜人
55/239

55. ラスタの成長

「………!」

 あの時と同じだ。

 ラスタが生まれた時と。



  もしかして



 ナギは急いで、わらを這い出した。

 足元で鎖がじゃらりと鳴った。暗がりで、落ち着きを失った牛達が声を上げている。



 夜明け前の灰色の世界に、光が生まれていた。


 金色の淡い光の粒がラスタを包んでいる。


 息を飲み、ナギは光に包まれたラスタに向き合った。


 どこを見ているのだろう。

 宙を見つめ、ラスタは光の中にただじっと佇んでいた。



 やがて。



 ぽんっ。



 微かにそんな音がした。



「えっ………」



 あんぐりと口を開け、ナギはしばらく絶句した。





 ―――――――――――――――小さな竜が、目の前にいた。





 ――――――――――――――― 一回り大きくなって。






 牛小屋に、予想と想像と期待を覆された少年の驚愕の声が響き渡った。






「ええええええええええええええええええええええええええっ?!」





  三カ月、全っ然大きくならなかったのに!!

  まとめて大きくなるの?!

  想像のそと過ぎる!





「ら す た………?」


 おそるおそる、少年は小さな黒竜に声をかけた。



 状況は、脱皮に似ている、とは思った。



 少しだけ大きくなった竜は、自分の手と脚をじっと見つめていた。

 金色の光が少しずつ薄くなっていくが、代わりに夜明けが近付いて、世界はゆっくりと明るくなっていく。




 ラスタが成長した。

 片手に包めるサイズから、両手で包むサイズに。




 喜びと驚きと落胆が、この時、ナギの中ではごちゃ混ぜになっていた。



 空気に吸い込まれるようにして、金色の光はなくなっていった。


 黒い竜が小さく身震いした。

 ラスタは翼を広げた。



「!」



 ばさっ。



 風が起こる。

 風圧が、今までと全く違う。


 たった一度だけ、ラスタは羽ばたいた。

 ナギの顔と体を、風が撫でる。

 小さな竜は、そのたった一度で高く、強く舞い上がった。



 輝くような黒い体の生き物が宙を舞う。


 ばさっ、ばさっ……。


 黒竜はあっと言う間に牛小屋を横切り、大きな弧を描いた。


 ラスタが一度の羽ばたきで進む距離は、段違いに長くなっていた。



 そして。



 ぽんっ。



「えっ……」



 もう一度、ナギが全く想像していなかったことが起きた。



「―――――――――――――――ラスタ?」



 牛達の声しかしない。



 きゅっと心臓が掴まれたような気がして、わら布団の横で、ナギは急いで立ち上がった。




 ――――――――――――――――――――ラスタが消えた。


読んで下さっている方、本当に本当にありがとうございます!


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