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【第五章開始】竜人少女と奴隷の少年  作者: 大久 永里子
第二章 少年と竜人
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48. 少年と少女と竜

 薄っすらと明るい空間は、ひんやりとして静まり返っていた。

 大きく広い納屋には干し草とその匂いが満ちていて、屋根に雨粒が落ちる音だけがぱらぱらと聞こえていた。


 ラスタの姿は見えなかった。


 ナギはそっと、手にした桶を地面に置いた。餌やりだけ先に済ませて来たので、桶はもう空だ。



「―――――――――――――――ラスタ。」


 少しだけ強張った声で、ナギは呼びかけた。


 羽音がしない。



  眠っているんだろうか。



 干し草の山に近付き、ナギは隠してある水と雑穀を覗き込んだ。


 そこにも、ラスタの姿はなかった。


 ナギが夕方に戻って来た時は、ラスタはいつも文字通り「飛び寄って」来るのに。

 積み上げられた草の山を見上げて、ナギはもう一度小さな竜の名を呼んだ。


「―――――――――――――――ラスタ。」



 「ラスタ」と繰り返しているナギは何かに呼びかけているように見え、戸惑いながら、ミルは干し草の山を見上げた。



  ここに何かいるのだろうか。

  でも物音ひとつしない。



 ラスタがこんなに完全に気配を消すことを知って、ナギは少々驚いていた。


 まるで最初の日の、あの夜のようだ。

 でもラスタがナギから隠れたのは、あの一度きりだった。



 小さな竜がこれまで見つからずにいてくれたのは、昼間はこうして過ごしているから?

 それともまさか、昼間は納屋を抜け出している?



 幾つかの考えがナギの心をよぎったが、ラスタが気配を消しているのだとしたら、一番可能性が高い理由はやっぱり、ミルが一緒にいるからだと思った。


「ラスタ。隠れなくていいよ。この子は僕の仲間の、ヤナ人なんだ。出て来て。」


 もう一度静かに、少年は相棒に向かって呼びかけた。




 そして。




 ぱた。ぱたた………




 わずかな音がして、少女は干し草を見やり、少年は両手を宙に差し伸ばした。



 壁や屋根の隙間から降り注ぐ微かな光の中で、小さな生き物は、少年を目指して飛んでいた。



  小鳥―――――――――――――――?でも、何か違う。



 ミルの目の前で、その小さな生き物は少年の手の中に降りた。


 何も言わずに、ナギは自分の両手を差し出すようにして、をミルに対面させてくれた。



 きらめいている青い瞳。尖った口と耳。細く長い指と、鋭い鉤爪を持つ手足。長い尾。輝くような漆黒の小さな体には、体毛はなかった。




「えっ………」




 そう言ったきり、ミルは絶句した。


済みません、短めの滑り込み更新です………。

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