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【第五章開始】竜人少女と奴隷の少年  作者: 大久 永里子
第一章 少年と竜
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42. ナギと竜(2)

 鶏小屋の掃除と餌やりまでを、昨日きのうと同じ要領で大急ぎで終わらせた。


  赤ちゃん竜は、どこまで分かっているんだろう。


 まだ一日一緒に過ごしただけだけれど、やっぱり、竜の赤ちゃんは物凄く賢い気がした。


 小さな竜は昨日きのうと同じように外を移動する時はナギの胸許に入り、牛小屋に戻った時は機嫌よく飛び回った――――――――――――まるでルールを、一日で覚えたかのように。



 賢くて、愛らしい。



 昨日きのうは納屋でずっと飛ぶ練習をしてたんだろうかと思う程、黒竜はたった一日で、飛ぶのも凄く上手になっていた。

 一緒にいると、自然と笑顔がこぼれた。



 毎朝のたった一人の過酷な時間が、今は竜と一緒に過ごせる、幸せな時間になっていた。

 早朝の、わずか二時間で終わってしまう時間だけれど。



 やはり昨日きのうと同じように一度牛小屋に戻ると、ナギは手の上の竜をじっと見つめた。



  ――――――――――今のところ、まだ一度も人間になっていない。



  そして排泄するところを、一度も見ていない。



 昨日きのう陽が落ちる寸前の納屋の中で、少しだけ排泄の跡を探したけれど、見付けられなかった。

 始末せずに放置しているといつか問題になりそうだから、排泄物の形状とか量とか、ちゃんと把握しておきたいのだが。



 今日も時間切れだ。



 やっぱり赤ちゃん竜を連れて行くことは出来ないし、そうなると竜を隠しておける場所はやはり煉瓦の納屋か、干し草の納屋のどちらかしかない。


「もう行かないと。」


 青い瞳を見つめてそう言うと、小さな竜は、少しだけ固い表情かおをした。



 雑穀と水を持ち、竜を連れ、ナギは干し草の納屋へと移動した。



 ナギが干し草の間に桶と木の椀を隠している間、黒竜はナギの胸でじっとしていた。


  もしかしたら嫌がって、言うことをきいてくれないかもしれない。


 ナギは内心恐れていたが、首許に右手を近付けると、竜はナギの手には掴まらず自分から外に這い出して翼を広げ、ぱたぱたと干し草の上に舞い降りた。



  分かってくれているのだろうか。

  それとも、捕まるまいとしているのだろうか。



 固唾を呑んで、ナギは小さな竜に尋ねた。



「ここで待っててくれる?」


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