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【第五章開始】竜人少女と奴隷の少年  作者: 大久 永里子
第三章 獣人とひと
202/239

202. 家畜小屋の密会

 あの日の再現を見るようだったが、あの日より今日の方が暗い。

 灰色の世界に置かれた切り絵のような黒い影を、少年は見つめていた。



 黒い服の女。



 外から中へと、音もなく風が入り込む。



  アメルダは。



 少年が咄嗟に視線を走らせたその時。


 強烈な家畜の臭いの中に、微かに香水の臭いが紛れ込んだ。


 背後の闇の中に立つあるじのために、黒い服の女が道を開ける。いつかと同じ、薄紫のゆったりとしたドレスをまとった花嫁がそこにいた。ただ春の始めだったあの時と違って、もう毛織は羽織っていない。


 黒い服の女が扉を抑え、うやうやしくこうべを垂れる。



 カッ……


「……!」



 コンクリートの床に靴音が響く。桶の一つを左手に提げ、もう一つの桶を右肩に担ぎ上げた姿のまま、少年は身を強張らせ、小屋へと入って来る女を見ていた。


 ブワイエ家の人間が牛小屋に入って来ることなど、年に何度もなかったというのに。


 見知らぬ訪問者に、牛達が少しだけ落ち着きを失う。


 青銅ブロンズの瞳がさっと動いて、高い位置にある窓の上で一瞬だけ視線を止めた。



「閉めて頂戴。」



 その言葉に心臓が凍り付く。



  こんな所を誰かに見られたら、今度こそハンネスに殺されるんじゃないか。



 ハンネスの怒り様はやや異常な程にも思えたが、奴隷の自分に対するアメルダの態度が、その怒りの原因であることは理解出来る。

 タイミングが微妙で、先刻さっきの鍵当番が二人の姿を見たのかは分からない。



 ギィ……



 主人とその夫の関係をどう考えているのか、黒い服の女が無表情に扉を閉めた。


 色がようやく分かるようになってきたくらいの時間だったのに、扉が閉められると闇が二段も三段も深くなる。


 再び落ちた闇の中で、少年は立ち尽くしていた。



 花嫁と視線が合う。



  何が起きようとしている?





多忙のため、今回物凄く短くなってしまいました……m(_ _;)m

もし出来ましたら明日もう一度更新します。スミマセン……

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