表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第五章開始】竜人少女と奴隷の少年  作者: 大久 永里子
第一章 少年と竜
20/239

20. 命懸けの勝負

 牛小屋にはそろそろ人の出入りがある。


 牛乳の売買が行われるのだ。


 牛乳は毎日館で消費しきれない程採れるので、余剰分が領地の乳加工業者に払い下げられている。一日二回、朝夕に荷車を引いた業者が牛小屋まで来て、ナギが牛乳を詰めたかめを引き取り、館の使用人がその場で代金を徴収しているのだ。



 竜が見つかる恐れが一番高いのは、この売買の時だと思った。



 物音や人の声を聞いた竜が、納屋の扉をくちばしで叩かない保証はなかった。

 その時はいっそ見つかった方がいいとは思っているが、納屋の中から人間の赤ちゃんの声がしている可能性だってある。


 木の椀や水を張った桶を置いてきたから、竜が見つかれば、ナギが関わっていることもすぐにばれるだろう。



  もう見つかっているかもしれない。



 今にも人が騒ぎだすのでは。



 耳を澄ませながら、ナギは目の前の少女を見つめた。



 緊張で喉の奥が乾く。



 勝算が少ないことを覚悟の上で始めた命懸けの勝負だが、出来るなら、彼女をここに一人で残したくないと思う。



 互いに知りたいことが沢山あった。


「座っていた方がいい。」

ナギは止めたが、それからミルは少年と一緒に床に屈んだ。


「治療はちゃんとして貰ってる?」

「うん。」

 結局二人はナギの朝食だった物を拾い集めながら、昨日きのうから今日までのことを囁くような小声で報告し合った。


 途切れ途切れに少女と言葉を交わしながら、ナギはパンや野菜のまだ食べられそうな物は、片付けると言うより皿に戻していた。


 ナギが命を賭けて挑んでいる勝負は、負けが決まらぬ限りは誰にも知られてはならなかった。


 だから今日一日をいつも通りに終えるつもりでナギは行動した。



 食べなければ、もう体が持たなかった。日暮れまで休みなく肉体労働が続く。


 

 床に落ちた物を犬のように食べるのは惨めだ。

 ミルの前でそんな姿を、本当は見せたくない。

 だが今食べなければ、自分は多分夕方までに倒れると思った。



 少年が単純に床を綺麗にしようとしている訳ではないことに、少女はすぐに気付いた。

 だが怖くて、ミルは口に出しては尋ねられなかった。



  もしかしてナギはもう、朝食を貰えないの?



 ミルはただナギと同じように、食べられそうな物をそのまま皿に戻して行った。



 代償は大きかったが、ミルに一応の治療や食事が与えられていると知り、ナギは少しだけほっとしてもいた。



 が―――――――――――――――



 「ナギの部屋はどこなの?」



 ミルにそう訊かれた時、ナギは言葉に詰まった。

済みません、短か目の滑り込み更新です!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ