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【第五章開始】竜人少女と奴隷の少年  作者: 大久 永里子
第三章 獣人とひと
187/239

187. 仲間達の手掛かり

 ふいに二枚の紙がナギの目の高さに浮かび上がった。


 古く変色した紙から真新しげな白い紙まで、金庫の下の段には色合いも大きさも異なるたくさんの紙があった。数十枚はありそうな紙の層から一番上の二枚が浮き上がり、薄暗いオレンジのの中に、揺らめく影を落とす。


「ナギ!その二枚目だ。」

「えっ」


 少年が咄嗟に反応出来ずにいると、雑に二つ折りにされていた紙が空中で開いた。

 読むことの出来ない異国の文字が、仄朱ほのあかい闇の中で少年に対峙する。


 読めない文字―――――――――――――でも。


 その書式にナギは覚えがあった。


「……!」


 我に返って左手を伸ばす。

 すると待っていたかのようにその紙ははらりと少年の手に落ち、もう一枚の小さな紙は音もなく金庫へと戻った。


 胸の前に手を引き寄せ、読めない文字を少年は見つめた。



 何かの表だった。



 一番上の真ん中に表題のような短い言葉が書かれていて、その下に四行ほどの文字の塊が幾つも並んでいる。


 一定の規則性があるその書式をつい先刻さっき、ナギはさんざん見ている。


 竜人少女がぐいと身を乗り出して隣から少年の手元を覗き込む。

 紙は二つ折りにされていたから、ラスタもしっかりと中身なかが読めていた訳ではないのだろう。



「住所……?」



 呟いた少年を見上げた竜人の青い瞳には、驚きと緊張が宿っていた。



「―――――奴隷商人のリストだ。」




 数瞬、時が止まった気がした。




 見付け出した。




 奴隷商人の住所。




 小さな相棒を見つめる。



 心臓がばくばくと鳴った。



 希望と期待が溢れて胸が苦しい。




 だが。




  ――――――――――――――――――――――『リスト』?




 考えもしなかった事態だった。



 この中のどれがあの奴隷商人なのか分からない。

 いや、この中にあの男が含まれていない可能性だってある。


 でも四年の年月を経て、ナギが初めて手にした仲間達の手掛かりだった。



  どうやって見付ける。この中から。



 あの商人の名前が含まれているのかどうかは、今考えても仕方がない。


 必死に頭を巡らせた。


 あの手紙の束の中にこのリストと一致する差出人がいるだろうか。



 と。



「……ほとんどがゴルチエ領だな。」



 竜人少女の言葉に、少年は目をみはった。

 リストを見直すと、確かに同じ文字の並びが繰り返し書かれている。



  ゴルチエ領――――――――――――――――――

  ハンネスの婚約者の家?



 予想外だったが、不思議なことではないのかもしれない。

 なぜブワイエ家と縁組が行われたのか奇異に思える程、あの領地は巨大だった。奴隷商人に限らず、商人がそこに拠点を構えるのは当然なのかもしれない。



 思わぬ偶然に驚く。



 ハンネスの挙式がもう一月後に迫っていた時だった。


すみません、今回はちょっと短めです……(><;)

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