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【第五章開始】竜人少女と奴隷の少年  作者: 大久 永里子
第一章 少年と竜
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17. 少年と少女の闘い

 自分の失敗をナギに押し付けようとしている。


 すぐに意図は理解出来て、ナギは目をみはって、ジェイコブを見つめ返した。


 ヴァルーダ語を解さないミルには、卵を落とした料理人がなぜ突然ナギを怒鳴りだしたのか、分からなかった。

 ただ何かよくないことが起こったのは理解出来て、料理人の男と自分との間に立つナギの背中を、案じるように彼女は見上げた。



 ほかに目撃者が二人もいるのに、まるで大声で主張すれば事実が書き換わるとでも思っているかのように、ジェイコブは更に怒鳴り続けた。



「また卵を割りやがって、この野郎!!」



 ナギの唇が微かに動いた。


 さすがに言い返してやろうかと思い、これまでに積もり積もったものが、喉元まで出かかっていた。


 だが奴隷の反抗的なを見て、ジェイコブは激昂した。

 そして男は、実力行使でナギの言葉を封じた。


「奴隷のくせに、文句あんのか!!」


 そう叫びながら大股でナギとの距離を詰めたジェイコブは、太い腕を振り上げると、いきなりナギを殴り飛ばした。


 ナギがまだ、盆を手に提げているのにも拘わらず。



「ナギ!!」


 ミルが悲鳴を上げる。


 料理はぶちまけられ、ナギはミルの足元に倒れ込んだ。



 かなりの衝撃だった。


 突然過ぎて身構える間もなかったナギの体は、すぐには動き出せなかった。



「大事な卵を割りやがって!!」


 ジェイコブは念を入れるように、まだ自分の罪をなすりつける言葉を叫びながら、もう一度ナギに殴り掛かろうとしていた。



 その時、ミルが両手を広げてジェイコブの前に立ち塞がった。



「ミル…………!!」


 体が動かず、ナギは視界の隅でその様子を捉えた。

 やめろと言いたかったが声がまともに出なくて、ナギは呻くように少女の名を呼んだ。


 振り上げられた太い腕はもう止められる勢いではなくて、止めるつもりもないことが、見て分かった。


 ミルはずっと、足を引き摺るようにして歩いている。

 そんな体で殴られたら、取り返しのつかないことが起きかねない。



 まだ衝撃から回復出来ない体で、ナギは咄嗟に後ろからミルに飛び付くと、彼女ごと自分の体を回転させた。



 ミルの体はナギの左によけられ、ジェイコブの拳は結局ナギの右頬に突き立った。



「ナギ!!」



 ナギに抱えられながら一緒に床に崩れ落ちたミルはすぐに起き上がり、倒れたナギに覆い被さるようにして少年の名を呼んだ。


 抑制を失った小太りの男はミルのすぐ後ろにいて、まだ気持ちが収まらない表情かおをしていた。



 離れて。


 ミルにそう伝えたいのに言葉が出ない。



 ジェイコブの顔は、憤怒に歪んでいた。


読んで頂きありがとうございます。


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