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【第五章開始】竜人少女と奴隷の少年  作者: 大久 永里子
第一章 少年と竜
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12. 竜の時、ひとの時

 干し草が仕舞われている巨大な木造の小屋の前で、ナギは自分の左手を見てたたずんでいた。


 その手の上で、先程から竜は楽しそうに体を揺らしている。


「……………。」


 一緒に遊んでやりたいが、そういう訳にも行かない。

 ナギに残されている時間は、あとわずかだった。

 自分がまだ気付いてもいない問題もあるのだろうけれど、気付いていることすら解決出来ていない。



 その中でも大きな疑問―――――――――――――――――


 ――――――――――まだずっと竜のままだけど、獣人はすぐには人にならないのだろうか?


 これも考えてみたこともないことだった。

 だがこれは大問題だと思う。



  竜の時と、人間ひとの時―――――――――――――



 必要な世話は違うのだろうか―――――――――――違うとすれば、どれくらい?

 

 ナギはまじまじと竜を見つめた。



 竜がもし人間の赤ちゃんの姿になったとしたら。

 その時、人間と同じ世話を必要としたら。

 ナギにはもう、対応しきれない。



 ―――――――――――人間ひとになった場合のことは、今は考えるのを止めよう。


 そう結論を出す。

 どんなに考えたところで、どうすることも出来ない。



 ナギに育てられる可能性があるとすれば、「竜の姿の小さな赤ちゃん」だけだった。




 そして改めて考える。



  ―――――――――――――――竜のおトイレ……………。




 鳥のように飛び回りながらあちこちにされても、鼠と間違われるようなあとを残されても、割と困る気がする。

 出来れば心の備えと、物理的な備えを、なるべく早目に整えたいと思うのだが。



 じっと竜を見つめる。



 半分人間だと思うと、何か躊躇ためらいを感じてしまう。


「……ごめんね。」


 そう言って、ナギは黒竜の羽の付け根辺りを右手の親指と中指で摘まむと、そっと竜を仰向けにした。


 この姿勢はあまり好きではないのか、竜がもがくようにぱたぱたと手足を動かす。


「――――――――――――――――――――――」


 小さ過ぎる上に、体が黒いせいなのか、何も見えない。


 それらしい器官が、一切見えない。

 雄か雌かも分からない。


 必要な時以外は皮膚の下に仕舞われている、「格納型」なのだろうか。


 抗議するように手足を動かしている竜に申し訳なく思いながら、ナギは竜の尾の付け根辺りを微かに押してみた。


 ―――――――――――――――やはり何も見えない。


  手掛かりなしか――――――――――――――――。


「ごめんね。」


 もう一度謝ってから、ナギは左手の上で竜の体を起こした。


「痛たたたたたた…………ごめんて。」


 掌をつつかれた。

 怒っているのだろうか。


 その時竜が、ナギを見返しながら、羽を目一杯に拡げて見せた。



  ――――――――――――――――――威嚇???



 威嚇、なのかもしれないけれど。



  ………………申し訳ないけど、可愛い。



「ごめんね。」


 感想は胸に留めて、取り敢えずもう一度そう言ってみると、竜は掌の上で胸を反らしながら、ぷいっと横を向いた。

 羽は閉じたが、やっぱり何か怒っているようだ。


 申し訳なく思ったが、だが分かることを少しでも増やしておきたかった。許してほしい。



 もうすぐ時間切れだ。



 それと承知の上で乗った命懸けの船だが、運命の船は最大の難所に差し掛かろうとしている。


読んで下さった方、本当に本当にありがとうございます!


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